1500
何百年たっただろうか・・・記憶があいまいになっている。
消えゆくこともできない。
辛くても寝れない。
と言うか眠気が来ない。
疲れもない。
体はおそらく悲鳴を上げているのだろう。
ふくらはぎには血管が浮き出て筋張っている、脂肪のかけらもない。
ボディビルダーのような見せる筋肉ではなく、とことんまでそぎ落とされた肉、異常なほどに隆起した骨、こちらの空気になじんできたせいか、頭にツノがはえてきていた。
「・・・・・・不思議と力が抜けている」
とがった岩の上に指一本で立っているにもかかわらず体幹に一切のブレはなく静止画のようにぴたりと止まっている。
揺るがない。
動かない。
それもまた地獄。
一撃で岩を木っ端みじんにできる拳は手に入れた。
マグマに使っても融けない皮膚になった。
髪の毛は失った。
眼は白くなり、当時の面影と言えば顔かたちがわずかに残っている程度になっていた。
そのシルエットは細いが何をしても壊れないと思えるほどに頑丈になっているように感じた。
ただいま1500年前の自分の抜け殻。
いつだったかマグマに使って寝たら脱皮していた。
セミの抜け殻のように自分の皮がむけていた。
今では体中が黒い。
うっすらでも何でもない。
全てを飲み込む宇宙の黒。
光がないのだ。
しかし、才能はまだ開花していないと閻魔は言う。
この体になってもまだ目覚めない。
随分とねぼすけなのうりょくだこと。
「ふふ、少しはいい体つきになったじゃない」
「ツノ、あんたかなんといったか名前すら覚えていないよ確かに顔は覚えているんだがな」
「当然ね、名乗っていないもの」
「そうか・・・てっきり仲良くなっていたものだったと思っていたが気のせいだったか」
「わつぁいに名前はないわ。あっても意味などないし、呼ぶものもいない。ただツノよばれそれにこたえればいい。」
「悲しいこと言うのな。でも、色っぽいよあんた。」
「そうかしら、あなたは真っ黒で私後の位になったわねただ昔のいきってたあなたも嫌いじゃなかったけど」
「ふっ・・・忘れたよでも君に嫌われなくてよかったのかもしれない、ここ数年誰とも会っていなくてね人に会えないというのがこんなにつらいものだとは、嫌がらせばかりされてきて人など皆滅んでしまえばいいと思っていたんだが」
「ふふ・・・あの人みたいね」
小さな声でつぶやいた彼女の声は聞こえなかった。