ジゴク
揺るがない絶対正義の中で、自分の弱さに死にたくなっていると馬車が向かってきた。
僕は、正面に飛び出て馬車をたたき切った。
馬から赤いしずくが飛び散り顔にかかる。
何だろうこの感覚は・・・楽しくて?笑みがこぼれた。
ふふふ・・・・・・
奇妙な声を上げた僕は突然後ろから切られた。
倒れる瞬間大きな体が見えた。
奴に切られたのか。
背部に走る激痛に対してゆがむはずの顔は瞼を閉じ薄ら笑いを浮かべていた。
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おかしい、もう死んだはずなのに熱い。
燃えるように背中が熱い。
背中が焼けているようだ。
死後でも感覚は残るものなのか?
消えゆく意識の中で確かに自分が死んでいくのを確信した。
そもそもあの国で生きているはずがない。
弱者をあの国は助けない。
医者に連れて行ったりしない。
弱者=悪と言う簡単な図式の素で動いているものしかいない。
基本構造が普通の国とは違うのだ。
傷ついた人がいてもかわいそうだとか同情するやつは誰もいない汚いものを見たかのような嫌な顔をするだけ、ただそれだけ。
だから僕は死んだんだ。
間違いなく。
重い瞼を開けると、一面赤い景色が埋め尽くしていた。
火山と言う言葉が相応に似合うほど一面が真っ赤に染まっていてとがった岩肌が露出している。
骨だけの人間とも言えないようなものが歩き回り、黒い体に羽の生えた生き物、目だけの虫様々な生物が目前にしている。
ここが死後の世界でないというのならおそらく自分は夢を見ているのだろう。
一勝冷めない夢だと今は感じているが。
切られた傷は治ってはいない――しかし、血は黒くなりサビの香りが鼻に刺さる。
上半身の服はいつの間にかなくなっていた。