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虹の花婿  作者: ドライフラワー
第2章 明暗
98/134

不吉な恋の行方

無念を抱えたまま、闇に飲まれるかと思いきや、光が差した。


「目が覚めたか?波乱万丈王子」


目を覚ましたナイトに感情の薄い男の声が降りかかった。

聞いたことのある声で、その主を探すと、紺碧の髪の男が見下ろしていた。


「・・・サクマの兄貴・・・」


水の国の忍びで、ナイトを陰から守ってくれたていた。


「嫁さんも無事だぞ」


サクマは抱えていたネティアをナイトに渡した。


「ありがとう、兄貴!!」


ナイトは命の恩人に心から感謝した。


「それにしても、変わった国だな・・・」


サクマが呟く。


「お前恋しさかしらんが、女王の妹が女王を背負って、城壁をよじ登って会いに行く国なんて初めてだぞ」


ことの経緯を思い出して、ナイトは絶句する。

サクマはナイトを護衛するため、水の国からはるばるやってきたところだった。

虹の国の忍び衆は異国から来たばかりのサクマを案内していたらしい。

ナイトに顔を見せに向かおうとしたところ、




『女王が首をつっているぞ』




とサクマが見つけて、駆けつけてくれたらしい。


「ネティア様、良くぞご無事でえええええ!!」


息を吹き返したネティアにグレイ、レッド、ブルー、グリーン、イエローが泣きついて喜んでいた。

国主である女王が死んだら、一族郎党の命だけでは償えない。

国が滅んでしまう。


「サクマさん、ありがとう。なんてお礼を言っていいやら・・・」


ライガも心から感謝の気持ちを述べている。


「それにしても、不甲斐ない下僕だな・・・主の命も守れないとは・・・」


サクマがジロッと見つめる先にはナイトの従者フロントと次期親衛隊長フローレスが並んでうつ向いていた。

2人の頭にはおそろいのたん瘤ができていた。

サクマに拳骨をもらったようだ。


「面目ない・・・」


事実を素直に受け止め、フロントが小さく呟く。

フローレスも、泣きながら、『ごめんなさい』、と謝っていた。


「まあ、無事で何よりだ。今日はお前と女王に顔を見せに来た。クソ王の命令でまたお前のお守りだ」


サクマは口は悪いが、ちゃんとナイトの危機には助けに来てくれた。

手厳しいが、頼もしい兄貴なのだ。


「兄貴が見守ってくれるなら、頼もしいよ」


ナイトは喜んだ。


「そこにお前の大好きな兄貴がいるだろう。そっちに守ってもらえ。俺を呼ぶのはなんか用事ある時だけにしろ」

「え、兄貴、俺の傍にいてくれないの?」

「こんだけ忍びがいれば、俺の役目はない。だから、俺はレイガル王につく」

「義父上に?」


頭の上はてなマークが回る。

翌日、その意味をナイト達は知った。

サクマは漁師姿になっていた。


「じゃな、俺はレイガル王と漁に行ってくる」

「行くぞ、新入り!」

「うっす!頑張れよ、波乱万丈王子!」


サクマはいそいそと船に乗り込んでいく。

ナイトとフロントは呆然とその姿を見送る。

漁に出るレイガル王を見て、水の民の血が疼いたようだ。





本題に戻る。

ようやく花火大会の日取りが決まった。


「ようやく決まりましたね」

「うん、ここからだけどな・・・」


ナイトとネティアはため息を着いた。

フロントとフローレスの仲直り作戦を決行した時、2人は死にかけた。

あの2人に関わると、何かと不幸が押し寄せてくるような気がした。


「ナイト!!ネティア!!」


廊下でネティアとつかの間の会話を楽しんでいるとフローレスが見慣れない服装で走ってくる。

前の白を基調にした服に似ているが、今度の服は、上着が黒を基調とした大きな襟と胸元に真紅のリボンが特徴。

ミニスカートは黒白のチェックで少し丈が長くなっている。

靴は黒のロングブーツで、肌の露出を出来る限り抑えていた。


「フロントが親衛隊の入隊祝いに新しい異世界の少女戦士の服作ってくれたのよ。どう?」


子供のようにくるっと回って新しい服のお披露目をする。


「黒か、なんか気品が出てて、親衛隊の隊長にピッタリだな」

「でしょう!」


ナイトの誉め言葉にフローレスは得意げだ。


「良く似合ってるわ。なんだか、わたくしも着てみたくなったわ」

「でしょう!」

「え!?」


ネティアの思わぬ発言にナイトは声を上げる。

フロントではないが、愛する者が、人前で短いスカートというのは、やはり、抵抗がある。

フローレスがニヤニヤしながらナイトに近づいてくる。


「部屋ならいいでしょう?」

「・・・・・部屋か・・・」

「ナイトも見たいでしょう?ネティアがこの服着たところ?」

「・・・み、見なくてもわかる。絶対に似合う。だって、双子のお前が似合ってるんだから」

「本物がいいでしょう?」


と男心をくすぶる物言いをしてくるフローレスにナイトは閉口する。


『俺の男心がわかるなら、兄ちゃんの男心をわかってくれよ!』


フロントがどれだけフローレスの服装で悩んでいるか、自分のことはよく見えないようだ。

ともあれ、フロントとフローレスは仲直りした。


「ゴホン!それより、『例の計画』、ちゃんと準備してるんだろうな?」


ナイトが話を切り出すと、フローレスはすぐさま真剣な表情になった。

親衛隊になったフローレスにとって初の大仕事だ。

花火大会の縁日にナイトとネティアがお忍びデートする時の護衛をフロントとするのだ。

しかし、これはカモフラージュ。

フロントが普通にデートに誘ったところでフローレスは乗らない。

なので、護衛の任務を口実にダブルデートに持ち込む。

そして、花火大会の最後にフロントがフローレスにプロポーズするというロマンチックなサプライズなのだ。

この計画はナイトとネティアが少ない2人だけの時間を活用して考え出したものだった。

前世の悲劇を繰り返さないために、何としてもこの2人を結びつけると誓ったナイトとネティアの執念の大成。

2人がくっつけば、ハッピーエンド。

そして、ナイトとネティアも花火大会でのデートを楽しめて2重にハッピー!




・・・・・・・・になる予定・・・・・・




「受けないに私の全財産の半分を賭けましょう」


シュウの賭け額に驚きの声を上げる。

賭けなどでちまちま貯めたらしい100万ゴールド。

何の賭けかというと、むろん、フローレスがフロントのプロポーズを受けるか、受けないか。

フロントとフローレスの恋の行方はいつも賭けの対象になっていた。

フロントがプロポーズすると聞いたシュウがいつもの賭けメンバーに召集をかけたのだ。

ちなみに、場所はナイトの部屋。


「はあ、ちょっと、待て!お前ら失敗すると思ってんの!?」


ナイトが声を張り上げる。


「今までの勝率から考えても、勝算はないですね」


ブルーの言葉にレッドが頷き、シュウに追随して、大金を賭けてきた。

2人合わせて50万ゴールド。


「おいおい、今度はフロントが本気なんだぞ。しかも、2人は婚約者なんだぞ。今回は絶対、成功する!」


ライガも負けじと、今月の給料全額を賭けた。

いつも負けているので手持ちがないのだ。

ライガの給料は忍び衆を束ねているので、なかなか良くて15万ゴールド。

もちろん、ナイトもプロポーズを受けるに賭ける。

今回は、ネティアと共に入念に計画を立てたのだ。

失敗はあり得ない!・・・・・・・・・・・はず。


「ナイト様はいくら賭けます?」


シュウの催促が嫌らしい。

賭け事になると主を主と思わず、鴨と見なしている。


「よし、俺の本気を見せてやる!水の国から虹の国に持ってきた有り金全部賭ける!」

「ほう、それはおいくらでしょうか?」

「ざっと、500万ゴールドだ!」


過去最高額の掛け金にどよめきが起きる。


「何、遊んでだ!?」


メンバー以外の突然の声にナイト達は驚いて振り向く。


「アインとカイン!?それにライアス!?」


賭け事に夢中になっていたので3人の侵入に気付かなかった。

ここは時期虹の王の部屋だ。

部下が主の許可なしに無断で入るなどあり得ない。


「こら、お前らここは俺の部屋だぞ!何勝手に入ってきてんだ!?」

「一応、ノックしたが反応がなかった。だから、ライアスに立ち会ってもらって入ってきた」


カインが正当な手続を踏んだことを告げる。

ライアスはナイトの部屋の合鍵を持っていた。

一応、一番の家来だから。


「早くに戻ってきていらしたのに、王子が出てこないと聞いたので、どこかお加減が割るのかと思い入りました」


ライアスが複雑な表情で釈明する。

本当にナイトの体を心配して入ってきたのだろう。

最近オーバーワーク気味だったから。

賭け事をしてるナイトはバツの悪い顔で聞く。


「それで、お前ら何しに来たんだ?」

「決まってんだろう。聞いたぞ、女王陛下とお前のお忍びの件だ!」


アインが怒鳴る。


「女王陛下の護衛は俺達の仕事だ。その俺達が差し置かれたのだ。抗議をするのは当然だろう」


カインがサラっと


「確かに正論だ。だが、お前らが全員ついてきたらお忍びにならないだろう?」

「そこは配慮してやる。女王陛下の貴重な娯楽だからな」


案外、聞き分けがいい。


「俺達は、フローレス様がプロポーズを受けないに100万賭ける!」


時が止まった。


「はあ、お前らも賭けに加わるのか?普通、怒るだろう!?」

「女王陛下の事柄以外は俺達の知ったことではないが、『我らが親衛隊長』の進退とあっては首を突っ込まないわけにはいかない」

「おう、とも!こんな面白いこと加わらない手はない!もし、賭けに勝てば、ぼろ儲けだし、フローレス姫はフリー!ゼインが喜ぶ!」


親衛隊はフローレスをもう親衛隊長として容認しているようだ。

アイン達の言葉遣いから、ナイトが認められていないのはよくわかる。

だが、女王の夫で実質王なのに、あまりにも軽んじられている。

それにこの賭け、ではなく計画は崇高な儀式だ。

部外者を入れたくない。

ナイトは自分のプライドもかけて抵抗を試みる。


「ちょっと、待て、ただでこの賭けに参加できると思うなよ!」

「何!?」

「参加料として、俺をネティアの部屋に通せ!」

「それとこれとは別だ!俺達は『ネティア女王派』だ!」

「それ、夫の前で言うか!?」

「女王陛下はみんなのものだ!お前なんか認めてないし、お前死んだら、俺達の誰かがお前に成り代わって王になるかもしれなし」

「そこに愛はあるのか?」

「ない。ただの慣例だ。俺達はだた国のためにいる。愛はその後に生まれる、かもしれないだけだ」


アインとの舌戦の最後にカインに親衛隊の存在理由を表明したため、ナイトは口を噤んだ。


「この賭けの主催者は誰だ?主催者がいいと言えばいいだろう?」


カインが賭けの主査者を探すと、自然とシュウに視線が集まった。


「大歓迎です!」


シュウの目は金貨の輝きに満ちていた。

ナイトのプライドをかけた抵抗むなしく、アインとカインも賭けに参加することになった。




***




花火大会当日。

夕方、王宮から花火大会が開かれる港まで、ネティア女王夫妻を筆頭にロイヤルファミリりーがパレードした。

ナイトはネティアと共に馬車から手を振る。

フロント、シュウ、ライアス、サラも馬車に同乗。

フローレスは親衛隊の一員として、騎乗。

凛々しい女騎士の姿に、民衆が熱狂している。

特上の観覧席に座し、主催者の挨拶を受け、後は花火が上がるのを待つばかりになった。

ここで、サラがネティアに成りすます。

ナイトの身代わりは、ライアスだった。


「ちょっと、ゴツイけど民衆からは遠目だし、暗くなったらわからないだろう」


という理由だった。

ライアスは不服そうだったが、サラは上機嫌だった。

親衛隊から護衛はアインとカインの2人だけだ。

残りは身代わりの護衛を務める。

後は、忍び衆とサクマが群衆に紛れこみ護衛することになっていた。


「兄ちゃん、準備はいい?」

「あ、ああ・・・!!」


祭りを楽しむために、ナイトは赤いキャップと黒のシャツーとジーンズでラフな格好に変装していた。

フロントはフードのついたクリーム色のチュニックと白のズボン。

懐には、フローレスに贈るハートの指輪がしまわれている。


「お待たせ!」


元気なフローレスの声にフロントは反射的に直立不動の姿勢になった。

色違いの白地にバラ柄のワンピースを着たフローレスとネティアがやってきた。

ネティアは水色、フローレスはピンクのバラ色だ。


「お2人ともよく似合ってます・・・」


フロントが変装した2人を褒めたが、ちょっと、ガッカリしている。

もうすでにプロポーズ作戦は始まっていた。

初戦はすでに敗退していた。

それは2人の服装。

花火大会なのだから、浴衣を着てほしかったのだが、フローレスに速攻で却下された。

護衛するのに浴衣は動きずらい、との理由だ。

女王である姉の護衛が目的であると、信じているのだから仕方がなかった。

2人は顔を隠すため、大き目の白い帽子を被る。


「それじゃ、行くか?」


ナイトはネティアと腕を組んで、人気のない観覧席の裏から人込みに出る。

フローレスとフロントもそれに倣って、付いてきた。

フードの下から見えるフロントの顔には締まりがない。


「最初はどこに行こうか?」

「何か、食べたいです」


ネティアと何気ない会話して、作戦を誘導していく。

しかし、何を食べるかは決まっていなかった。

歩いていると、たこ焼きのいい匂いが漂ってきた。


「いい匂いだな、たこ焼きでも食べるか?」

「はい」


4人は、たこ焼きを買いに立ち止まった。


「いらっしゃい!」

「あ、兄貴!?」


売っていたのはねじり鉢巻きをしたサクマだった。


「おう、ナイトか」

「おう、ナイトか、じゃないだろう!?何してんの!?」

「見れば、わかるだろう?昨日、レイガル王が大王ダコを釣り上げた。ちょうどいいから、屋台で売ることになった。レイガル王もお忍びで食べに来てくれることになっている」

「・・・父上もお忍び・・・」


ナイト達は言葉をなくした。

「護衛は他の奴らがするだろう」

とサクマは言って、4人分のたこ焼きをサービスしてくれた。


「フロント、腑抜けてるぞ」

「お前に言われたくない!」


サクマの揶揄にフロントが反発した。

2人は仲が悪いようだ。

何か、悶々としたものは抱えらながら、4人はたこ焼き屋を後にした。

カリふわの生地に大きなタコとたっぷりのソースでたこ焼きはおいしかったが。


「ちょっと、足が疲れました。どこかで休みたいです」


たこ焼きを食べ終わったネティアが、予定通りの言葉を発する。

フローレスが来て、ネティアの足を見る。

履きなれないヒールの高い靴で靴擦れしたようだ。

透かさず、フロントが反応した。


「それなら、とっておきの、いいお店があります!」


と、言って先導する。

屋台街を少し出るとすぐに商店街があり、その一画のお洒落な店に入る。

カップルが多い。


「4名様ですか。すみません、大変混雑しておりますので、2名席しかないので別々の席でよろしいですか?」

「え!?」

「問題ないです!!」


フローレスが抗議の声を上げようとしたので、ナイトが遮った。

フローレスは不満そうだったが、残り2人は胸をなで下ろしていた。

ここは第2の作戦場所だった。

この店は1つのドリンクを恋人同士が2人で飲むというカップルドリンクが有名だった。

そのドリンクをフロントとフローレスが飲み、いい雰囲気を作るという作戦だった。

席は少し離れて別々に座る。


「足、大丈夫か?」

「ええ、フローレスに絆創膏を張ってもらいましたから」

「そうか・・・」


ここでいったん、ナイトは言葉を切った。

飲み物を何にするかだ。

むろん、デートなので、カップルドリンクを頼みたいが、

ついたてを隔てて隣の席から妙な視線を感じる。

隣の席にいたのは、私服を来たアインとカインだった。


『まさか、この場を利用して、カップルドリンクを俺達の女王陛下と飲むんじゃねぇだろうな?』

『飲んだら、殺す!』


という呪いの声が聞こえてきそうだった。


「あ、あの、飲み物、何になさいます?」


ネティアが恥じらいながら聞いてきた。

期待しているのは間違いない。

衝立の向こうにいるお目付け役には気づいていないようだ。

このカップルだらけの店に男2人で入った彼らを慮って、ナイトは諦める。


「カップルドリンクは、ちょっと、恥ずかしいな・・・」

「そ、そうですよね・・・このデートは建前でフローレス達のためですものね・・・・」


ネティアはそう言ったものの残念な顔をしている。

ナイトだって飲みたかった。

新婚なのに仕事や周囲が邪魔をして、全然ラブラブできないのだから。

フロントが羨ましいと思っていると、ネティアとナイトの間にカップルドリンクが置かれた。


「あの、頼んでないんですけ」

「あちらの方が、気を利かせてくれたみたいですよ。恥ずかしがって、頼めないんじゃないかって」


見ると、離れた席に座っていたフローレスが手を振っている。

その横で、フロントが机に突っ伏していた。

注文したはいいが、


『フロント、何考えてんのよ!私たちのデートじゃないの!仕事なのよ!!』

『でも、ちょうどいいわ!ネティアのことだから、飲みたくても言い出せないだろうからこれを上げましょう!』


ということになったらしい。

フローレスは仕事に関して超真面目だった。

ナイトにしてみれば棚から牡丹餅。

これを口実に、ネティアとありがたくカップルドリンクをいただくことにする。


「それじゃ・・・ありがたくいただこうかな・・・?」


ナイトが恐る恐る言うと、ネティアは頬を赤らめた。

と同時に、衝立の向こうで、勢い良く立ち上がる音がした。

アインとカインが衝立越しに邪魔をしてくるのは必死だった。


『やっぱり、ダメか…』


ナイトが諦めかけた時、


「何するんだ、お前!」

「それはこっちのセリフだ。邪魔は困る」

「アイン、気をつけろ!」


アインとカインともう1人が何やら争うような声が聞こえた。


「今のはアインとカイン?」


ネティアもようやく気付いた。

ナイトは簡易的に取り付けてあった衝立をどかすと、カメラを構えた青髪の男がいた。

その後方で、赤髪の男がアインとカイン2人を押し出すように店の外に出ていく後姿を見た。


「・・・・何してるんだ、ブルー」

「何って、仕事ですよ。ナイト様」


アインとカインを店の外に連れ出したのは恐らくレッドだ。

彼はちゃんと仕事をしてくれたが、ブルーの仕事とは?


「・・・そのカメラは?」

「記念写真ですよ。デートの想いでにいいでしょう?はい、2人ともストローに口をつけて、こっち見て」


カメラマンになりきっているブルーの支持に従い、ナイトとネティアはカップルドリンクを2人で飲むポーズをとった。

フラッシュがたかれ、写真が1枚出てきた。

出来立ての写真を見せられて、2人は思わず赤面する。


「複写して、後でお渡ししますね。なかなかいい出来だ。ティティス陛下も大喜びです」

「え、母上にも見せるんですか!?」

「はい、ティティス陛下は、こういった浮いたお話が大好きなんです」


ブルーは率直に答えた。


「母上に、そんな趣味があったなんて・・・」


ネティアは母の趣味を知って呆然となっていた。

きっと普段は厳しい母親なのだろう。

ブルーがフロント達を見てため息を吐いている。

スクープの本命はあっちのようだ。


「ああ、フロント、2敗目ですね。ナイト様、『500万』は準備してた方がいいかもしれませんね」

「な・・・」

「それでは、引き続きお楽しみください」


ブルーはにこやかに手を振って、店を出て行った。

ナイトの胸に不吉な予感が押し寄せた。








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