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虹の花婿  作者: ドライフラワー
第2章 明暗
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待ちに待った瞬間

『兄ちゃん、こっちこっち!』


小さな青髪の男の子が手招きをして元気いっぱいに草原を駆けていく。

フロントは微笑を零して、男の子を追いかける。

もうすぐで男の子に手が届くというところで、目が覚めた。



小鳥のさえずりが聞こえる。

伸ばした手は天井に伸びていた。




「夢か…」




そう呟くと、空しさが込み上げてきた。

フロントが幾たびも見てきた人生で一番幸せだった時の夢。

夢の中に戻りたくて再び目を閉じようとして、飛び起きる。





「夢じゃない!」




フロントは布団を蹴り飛ばし、ベッドから飛び降りた。

夢の中でしか会えなかった可愛い弟。

しかし、今、成長した姿でこの虹の国にいる。


「いたた…」


寝間着を脱ごうとして、フロントは蹲った。

体はボロボロだった。

ネティア姫とジャミルの結婚をぶち壊すという秘密の計画を実行するため、フロントは自らの肉体を犠牲にしていた。

魔力も空っぽで、未だに戻らない。

もう少し休んでから行くべきなのだろうが、逸る気持ちを抑えられなかった。

フロントは身なりを整えるとすぐ部屋を飛び出した。


『ナイト!』


突然の別れから12年。

一度も忘れたことがなかった存在。

世継ぎ姫ネティアとの秘密裏の見合いに来てくれた。

その時に使われたナイトの偽名は、昔、フロントが読み聞かせていた絵本の主人公の名前だ。

自分への合図だとすぐに気付いて、嬉しさが込み上げた。

ナイトもフロントと同じ気持ちだったのだ。

早く名乗り出たくてうずうずしながら、ナイトとネティアを結び付けるために悪役を演じだ。

バレてしまったが…


『ちょっと、怒ってるかな?』


フロントは少し不安になった。

だが、それでも会いたくて駆け足でナイトがいる場所を探しに出掛けた。




***




虹の王レイガルは政務を終えて部屋を出るところだった。

隔離しているナイトに会いに行くのだ。

それが心配で宰相のカリウスがついてくる。

レイガル王は腕を回し、鼻歌を歌い出しそうな雰囲気を醸し出している。

フロントや正規軍の将軍ロン、ウィルと言ったレイガル王の運動相手がこぞって戦闘不能、不在だっため体がうずうずしているのだ。

娘のネティア姫の結婚問題から端を発した、フロントの暴走や虹の王宮の破壊。

その後の闇の騎士団による双子姫の失踪などでストレスが溜まっているのもある。

そこに念願だった水の王ウォーレス王の息子ナイト王子がやってきた。

体よく、ナイト王子で運動不足を解消しようというのが見え見えだ。


「恐れながら、陛下…ナイト王子はまだ駄目ですよ」


先手を打ってカリウスが釘を刺すが、


「いいではないか、ちょっとぐらい。ネティアの婿になる男だ。力量をこの目で見たいのだ」


レイガル王はやる気満々だ。


「そのお気持ちはわかります。ですが、女王陛下の許可が下りるまではお控えになった方がよろしいかと思います」

「大丈夫だ、手加減する。それにナイトはもうネティアの力を得ていると聞いている。だから、少しくらい大丈夫だろう」

「…そうですが、万が一、やり過ぎたら大変なことになります」


レイガル王の並々ならぬ強さを恐れてカリウスは進言した。

過去に、ウォーレス王と大喧嘩をして瀕死の重傷を負わせてしまった前科がある。

そのせいで、水の国と戦争になりかけたのだ。


「心配性だな、カリウス。ナイトは我々の悲願だった。その悲願が叶ったのに、それを傷つけるようなことを私がすると思うか?」

「…そうは思いませんが…」

「なら、少しくらい目を瞑ってくれないか?もう体がなまり過ぎて動きたくて溜まらんのだ。ナイトも閉じ込められて体がなまってそうだからちょうどいいだろう?」


カリウスは疑いの目でレイガル王を見る。


「本当にちょっとだけだ。後は、フロントに仕置きをせんといかんからな」


つけは、忠臣であり、謀反の首謀者であり、ナイト王子の兄であるフロントが払う様になっている。

いつものことだが、レイガル王の憂さ晴らしにされるフロントに憐みを感じる。


「ちょっと、だけですよ…」

「ははは、ありがとう」


レイガル王は機嫌よく先を歩く。

カリウスは一抹の不安を覚えながらその後に付き従った。




***




フロントは、虹の王宮を探し回り、やっとナイトの幽閉されている場所を探し当てた。


「フロント、目が覚めたのか?」


警備に当たっていた国王直属の正規軍の騎士が話しかけてきた。

フロントは平静を装いながら近づく。


「ああ、ネティア様とフローレス様の恩人がここにいると聞いてきたのだが…会えるか?」


警備の騎士達は顔を見合わせて、


「国王陛下か女王陛下の許可が必要だが、お前ならいいだろう。ちょうど、フローレス様もお見えになっているからな」

「そうか、それは好都合だな…」


フロントは検問をパスして、ホッと胸を撫でおろす。

フローレス姫がナイトのところに来ていたのが結構大きい。


『だいぶ、懐いているな…』


気難しいフローレス姫は人嫌いではないかと思われるくらい人を寄せ付けなかった。

だが、ナイトには異常に早く懐いた。

ナイトの人徳かもしれない。

小さいころからナイトの周りには自然と人が集まってきていた。

人を引き付ける魅力は今も変わらないようだ。

水の国でも、領地でも父王を凌ぐ絶大な人気を誇っている。

その人気は自国にとどまらず、世界中から注目を集めていた。


『私とはえらい違いだな…』


フロントはこの12年間を振り返って自嘲気味に笑った。

一度は超名門の貴族の養子となるはずだった。

だが、それが原因で罪人になってしまった。

今は這い上がって何とか双子姫の護衛に成りあがってはいるが、一階の騎士に他ならない。

ナイトがやけに遠い存在に感じてしまい、寂しさを覚える。

扉の前にやっとたどり着いたのに、立ち尽くしてしまった。

ナイトは水の国の第一王子という高貴な身分になっていた。

方やフロントは、虹の双子姫の護衛の騎士。

どう話していいものか迷ってしまう。

昔の兄弟のような接し方ではいけない。


『とりあえず、反応を見るか…』


フロントは思い切ってナイトが幽閉されている扉のドアを開けた。

フローレス姫とナイトの談笑が漏れ出てきた。

楽しそうに笑っているナイトの後ろ姿が目に飛び込んできた。

自分もその話の輪の中に入りたい衝動に駆られる。


「あ、フロント!」


扉側を向いて座っていたフローレス姫がフロントに気づいた。

ナイトが振り返った。

フロントの心臓は早鐘を打つ。


「兄ちゃん…!?」


ナイトの第一声でフロントの緊張した顔が思わず綻ぶ。

昔と変わらず、兄と呼んでくれたのだ。


「ナイト…!」


フロントは呼び返した。


「兄ちゃん!」


ナイトはソファから立ち上がりフロントの方に駆けてくる。

今朝見た夢、子供の頃と同じ光景だ。


「ナイト!!」


フロントは手を広げてナイトを抱き留める体勢を取った。




シャキン!





銀色の光が目の前に突き付けられた。

フロントは目を瞬かせた。


「…………え………?」

「ふふふふ、この瞬間を待ってたぜ!!」



フロントに剣を突きつけたまま、ナイトは懐から何かを取り出し、見せつける。





『果たし状』





それはフロントが嫉妬に狂ってナイトに送り付けた手紙だった。


『しまった!?』


その存在をフロントは忘れていた。



「さあ、あの時の続きを始めようぜ!」


ナイトは目をギラつかせながらフロントに迫る。

フロントが闇の騎士として戦った洞窟での続きを言っているようだ。

当然だが、ナイトは怒っていた。

それもものすごく。

だが、フロントはまだ怪我が癒えていない。

とてもじゃないが今の状態では袋叩きにあってしまう。


「待て、ナイト…兄ちゃん、まだ怪我が治ってないんだ。別の日にしてくれないか…」

「そりゃ、弄りがいがあるな…」


不気味な笑みを零すナイト。


「よくも散々俺に恥かかせてくれたな!何だよ、あの『デートブック』は!?俺、ネティアに変な目で見られたぞ!」


ギク!


「え、何、デートブックって!?」


フローレス姫が興味を持つが、今は構ってる余裕はない。


「しかも、緊急用にって、自分が渡すようライガに言っておいて、『いい度胸してるな』ってどういう意味だよ!」

「あはははは、あれはリサーチ用で本当は別の旅行ガイドを渡す予定だったんだ。すまん、焦ってて間違った!」

「焦ってても間違えるなよ!ただでさえ、ネティアは婚約中で秘密の見合いだったんだぞ!下手したら俺の前世からの壮大な計画がおじゃんになるところだったんだぞ!」

「ごめん、本当にごめん!!」


フロントは必死に謝ったが、ナイトの怒りは収まらない。


「それにだ、俺達を敵中に置き去りにするってどんな神経してんだ!結局助けに来ないし!それに今までほったらかしだと!!!!」

「ご、ごめん、ナイト!」

「ごめんで済むか!!!」

「そうよ、そうよ!」


フローレス姫も一緒になってフロントを責める。


「グリスが来てくれてなかったら、私達ひどい目にあってたかもしれないのよ!」

「す、すいません…」


フロントは謝ったもののそれは計算づくのことで、正規軍が必ずナイト達を保護してくれると信じていたのだ。


「それに!あなたがいなかったからネティアが死にかけたのよ!」

「うっ!!」


ナイト達が正規軍に保護されるところまでは計画通りだった。

だが、予期せぬ誤算が生じた。

ネティア姫が心労のあまり流行り病『風邪フウジャ』にかかり倒れてしまったのだ。

風の民の血を引き、尚且つ世界最高の術者でもあるネティア姫がかかるはずのない病だった。

ところが、そのかかることのない病は一気に進行し、重症化。

風邪フウジャの特徴である体が膨らむ現象を見てしまった

国王と女王はショックのあまり気絶。

ネティア姫は危うく死にかけた。

幸いにも、風邪フウジャの救援要請していた風の国からアルア王子が来ていたために一命は取り留めた。

だが、ナイトの罪状が1つ多くなってしまい、今に至る。


「さあ、やろうぜ、果し合い!」


ナイトは腕を回しながらフロントに迫る。

数日間軟禁されていて体が鈍っていて、動きたくてうずうずしていたようだ。

そこに格好の獲物である自分がやってきたのだから、溜まったストレスと怒りを爆発させてしまったのだ。


『ほとぼりが冷めてから来ればよかった』


後悔先に立たず。

フロントは何とかナイトから逃れる術を探した。


「ナイト、コテンパンにやちゃって!」

「おお、任せとけ!」

「え、え、え!!?」


主であり最愛の女であるフローレス姫はナイトを応援していた。

道中、姉姫ネティアと共にフローレス姫もナイトと固い絆で結ばれたようだ。

双子姫の絶対の信頼を勝ち得ていたフロントだったが、ナイトの出現で脆くも崩れ去る。

いうなれば、日頃の行いの結果だ。


「あ、ナイト様、半殺しでお願いします。若が帰ってきたらプレゼントにするので」

「グレイ、お前もか!」

「わかった、半殺しだな」


ナイトは目をぎらつかせて、剣身をなめた。

まるで盗賊だ。

もはや逃げられない。


「兄ちゃん、覚悟!!!」

「嫌だ!!!!!」


フロントは襲い掛かってくるナイトから鶏のように逃げ回る。

出口は固く閉じられていて逃げ切るのは不可能だった。




***




ナイトがフロントに積年の恨みを晴らそうとしていた頃、ネティアは自室で母女王ティティスの見舞いを受けていた。


「ネティア、体の方はどう?」

「ええ、もうすっかり大丈夫です」


ネティアは母に両手を広げて元気になったことをアピールした。


「それは良かったわ。もうすぐ水の国からウォーレスが来るわ」

「ウォーレス王…ナイト様のお義父様が!?」


ネティアは顔を赤らめて慌てふためく。

そんな娘を見て、母はコロコロと笑う。


「そんなに畏まらなくてもいいでしょう?ウォーレスにはよく遊んで貰ってたでしょう?」

「…そうですけど…」


ネティアは気恥ずかしさで俯く。

よく遊んでもらっていたおじさんが義理の父親になるのは何とも言えない感覚だった。


「ネティア、ウォーレスが来る前にあなたに1つ言っておきたいことがあるの」


打って変わった母の真剣な声にネティアは顔を上げた。

母はネティアの目を真っすぐ覗き込む。


「すぐにはナイトを信用しないで」

「え?」


ネティアは目を見開く。

ナイトは前世で一緒にこの国を築いてくれた最愛の人だ。

その人を母は信用してはいけないという。


「ナイトの前世がこの国を築いた王だというのは知っているわ」

「それならば…」

「でも、今世ではナイトは水の国の王子よ、その立場を頭の中に入れておかなければならないわ」


母は近づいてきて、ネティアの肩に手を置く。


「あなたとナイトの結婚はただ虹の国と水の国だけを繋ぐものではないということよ」

「どういうことですか?」

「虹の国を除くすべての王国は光の王家とつながりを持っているの。つまり、水の国だけでなく光の国とのつながりもできてしまうわ」

「光の国…」


前世の最愛の人と再び結ばれて有頂天になっていたが、その言葉で喜びが半減した。

ネティアは前世の惨劇を思い出し、身を竦めた。

世界を災厄から守るため、前世の妹は結界の生贄にされた。

その命令を下した古から生き残った国。

かつて、世界は1つの王国だった。

しかし、光の王国は災厄を退けたのち一度崩壊した。

そして、数多くの国が生まれた。

その古の大国の名残が今も残るのが光の国だ。

その権力は今なお続いている。

ナイトが光の国のスパイになるはずがないのはわかっているが、周りはありとあらゆる手段を使って利用するだろう。


「…わかりました…」


ネティアは暗い顔で母の意見を聞入れた。


「愛する人を疑うのは辛いことでしょう。ですが、『フローレス』の為です」


フローレスの名前が出てきてネティアは勢い良く顔を上げ、母の目を直視する。

母は静かにネティアを見返してくる。


「…知っているのですか?」


ネティアが恐る恐る訪ねると、母は微笑んで


「当たり前です。わたくしはあなた達の母なのですから」


お腹に手を当てて見せた。

その手が震えているネティアの手を包み込む。

前世にはなかった温もり。

自然とネティアの目から涙が溢れて来る。


「わたくし達はあなたの味方よ。あなたがどんな決断を下そうとも守ってみせるわ」

「母上…」


ネティアは母の胸に顔を埋めて泣き出した。

温かい腕が包み込んでくれる。

前世は、生まれながらの力のせいで双子の妹と2人だけで生きてきた。

温もりは双子の妹にしか感じていなかった。

死ぬ前に、前世のナイトとどんな来世がいいか話していた。

ネティアは欲張りなぐらいたくさん願った。

その中の1つに両親のことがあった。

強くて格好いい父親と頼りになる優しい母親が欲しいと。

その願いは叶っていた。

嬉しさと幸せを噛みしめて、ネティアは母に甘えられるだけ甘えた。




***




「勘弁して!!!」

「あはははは!!!」


フロントは剣を振り回し狂喜しているナイトから未だ逃げ回っていた。


「そんなにやめて欲しいんだったら、ナイトに斬られてあげなさいよ」

「そんなことしたら死んじゃいますよ!」


フローレス姫のアドバイスは受け入れがたいものだったが、観戦に降りてきた忍び衆達は頷いていた。


『どいつもこいつも…』


ナイトの怒りを鎮めるにはやはり、斬られるしかないのか?

フロントが諦め掛けた時、固く閉ざされた扉が開いた。

誰か来たのだ。

これでナイトは刃を収めることを余儀なくされることに、



「おおおおおおおお!!!!やっているなああああああ!!!!私も仲間に入れろおおおお!!!」


ならなかった。

雄叫びと共に、ドアが勢いよく開けられた。

ドアが砕け散る。


「レ、レイガル様あああああ!!!!!」


フロントは絶望的な悲鳴を上げた。

現れたのは魔王レイガル。

戦っているフロントとナイトを見て目を輝かせている。

2人して、病院行きは確実だ。


「さあ、2人まとめて相手をしてやろう!!」

「父上…」


フローレス姫は身構えているレイガル王を見て硬直している。。

ナイトも呆気に取られている。

その隙にフロントは近づき休戦と協力を求める。


「ナイト…勝負はお預けだ。一緒に戦ってこの場をとりあえず生き延びよう」


ナイトと共闘すれば怪我の度合いは軽くて済むはずだ。



「ああ、そうだな。でも………背中には気をつけろよ。兄ちゃん」


冷たい声にフロントは身震いした。

レイガル王とナイトに同時に攻撃されたらさすがのフロントも命を落とすかもしれない。


「ナイト…」

「ははは、そちらから来ないのならこちらからいくぞ!」


興奮したレイガル王が突進してきた。

フロントとナイトは一緒に飛び退く。

忍び衆もフローレス姫を抱えて避難する。


ドカン!!


背後のソファが木っ端みじんになっていた。


「ちょっと、待ってくださいよ、レイガル様!!」

「これが待たずにいられるか!お前とナイトの夢のコラボだぞ!」


殴りかかってきたレイガル王を避けながらフロントが抗議するも聞く耳を持たない。

ナイトはレイガル王の攻撃を避けながら、密かにフロントの背後を狙ってくる。

生きた心地がしない。


『何とかしないと、本当に殺される!!』


フロントは助かる方法を探すため辺りを見回す。


「父上!!フロントはいいとしてもナイトはまだダメでしょう!」

「フローレス様の言う通りです!女王陛下に叱られますよ!」


とフローレス姫とカリウスが必死に訴えていたが、戦闘態勢に入ったレイガル王には届かなかった。


『仕方がない、ここは逃げるしかない』


フロントはレイガル王が破壊したドアへ一目散に駆け出した。


「逃さん!!」


レイガル王が追いかけてくる。

だが、ドアは目の前、外へ出れば逃げられる。

ところが、


「逃がすか!」

「ナイト!!?」


なんと、ナイトがドアの前に立ちふさがった。

さすがのフロントも頭に血が回った。


「いい加減にしろ!!!!」


フロントは斬りかかってきたナイトの剣を弾き飛ばし、あろうことか、追いかけてくるレイガル王への方へ押しやった。



ドゴッス!!!!


レイガル王の重い拳が無防備なナイトの腹に直撃、フロントの下へはじき返された。


「ナイト!!しっかりしろ!!」


フロントが呼びかけると、ナイトがうっすら目を開けて


「兄ちゃん…よくも…」


伸ばしてきた手が落ちた。


「ナイトおおおおおおお、ごめん!!!!」


フロントは最大級の後悔を込めて叫んだ。

フローレスと忍び衆も駆け寄ってきた。


「これはまずい!フロント、急いで回復魔法を!」

「だから、まだ魔力が戻ってないんだ!」

「それで、弟を盾に…」


非難の目がフロントに注がれる。

故意ではないが、結果的にそうなってしまったので否定はできない。


「仕方ないだろう!それより、早くティティス様の下へ!」


『その必要はありません!』


「母上!?」


どこからともなく響いてきた女王の声に全員辺りを見回す。

見ると、レイガル王の上に暗雲が立ち込めていた。

レイガル王の顔が恐怖で引きつっている。


「ティティス…ワザとではないんだ…」



『弁解など聞きたくありません!!!!!!』



ピシャピシャピシャピシャピシャピシャピシャ!!!!!!!


レイガル王を光の輪が包み込み、超弩級の雷が無数に降り注いだ。

それは女王の怒りが収まるまで続いた。

雷が止むと、黒焦げのレイガル王がパタリとその場に倒れた。


『…フロント、『それはいいから』、今すぐナイトをわたくしの部屋に連れてきなさい!』

「はい!わかりました!」


フロントは忍び衆に担架を用意させ、ナイトを乗せて急いで女王の部屋に向かった。




***




「大丈夫よ、母がついていますからね…」


ティティスは冷たくなった愛娘ネティアの顔を優しく撫でた。













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