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虹の花婿  作者: ドライフラワー
第1章 前世からの約束
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第3の選択

ネティアを無事保護したナイト(ルーク)は一風呂浴びて、部屋から窓の外を見ていた。

今はネティアとミナが風呂に入って、雨に濡れた体を温めている。


「姫様、第3の選択肢を選んでしまったんですね」


アダムの暗い呟きにナイトは頷いた。


「全く、1人で闇の騎士のところに行ったって返り討ちに合って、王都に連れ戻だれるだけなのにな…」


ナイトは溜息を吐いて、ソファにドカっと腰を下ろし、天井を見上げる。

思うは、知らせてくれたあの闇の騎士のことだ。

あの闇の騎士が知らせてくれなかったら、ネティアは正規軍、ランド軍のどちらかに捕まっていたことだろう。

自分の意志とは関係なく、捕まえた者の意向によって王都ないし、ランドに連れていかれたことだろう。

その先に待っているのは、『強制』。

レイガル王が娘であるネティアを思うがままにすることはないとだろうが、心は開いてくれないだろう。

もし、ジャミルの方だったならば、ネティアは諦めて従うだろう。

もともとそう決めていたのだろうから。

どちらだったにせよ、禍根は残る。

必要なのはネティアの絶対的な意志だ。

その意思があれば、対立するレイガル王もジャミルも従わざる得ない。

つまり、ネティアが決断さえ下せば、将来的にはわからないが、すくなくとも今は争いは起こらないのだ。


『何を迷っているんだ…?』


決定権はネティアにある。

もどかしさを感じながら、ナイトはネティアが来るのを待った。


トントン…


遠慮がちなノックが聞こえてきた。

待ちに待った待ち人がやっと来たのだ。


「開いてるぞ」


ナイトは天井を見上げるのをやめ、ドアを見据える。

『失礼します』と言って、まず入ってきたのはミナだった。

その後で、促されるようにネティアが俯き加減で入ってきた。

アダムがドアの鍵を閉める。

部屋にはナイト、ネティア、アダム、ミナの4人だけになる。

アダムとミナに残ってもらったのは、ナイトの意向だ。

2人だけだと、気まずくなってしまうからだ。


「ネティア姫、心は決まったのか?」


ネティアが正面に座ると、ナイトは質問を開始した。


「……………いいえ………」


長い沈黙の後、ネティアは小さな声で答え、


「何も決められなくて…だから、あなたに何も言えずに…外へ出てしまいました…」


理由を述べた。


「1人で闇の騎士を探しにか?」


ネティアは小さく頷く。


「俺も姫の意向で闇の騎士を探していた。なぜ、1人で行こうと思った?」

「…………これ以上、あなたに迷惑はかけられないと思って…」

「迷惑な…俺もう十分迷惑被ってるんだけどな…」


ナイトは金髪に染めた髪をいじる。

空のような青々とした自慢の髪だったのだ。

ふざけているように見られたのか、ネティアが急に身を乗り出してきた。


「髪は生え変わるではないですか!わたくしはあなたの命の心配をしているのです!」

「俺も姫の身を心配してるんだけど」


言い返すと、ネティアは黙り込んで、乗り出した身を引いた。


「いくら姫が稀代の術者でも相手は歴戦の魔法騎士だぞ。1人で乗り込んでいったところで、王都に強制送還間違いなしだ。でも、その前にあいつら姫の前には絶対出てこないぞ」

「何故です?」

「正体がバレるのを滅茶苦茶恐れているところを見ると、闇の騎士は姫の身近な人物で間違いない」


ナイトが推理で闇の騎士の正体を限定すると、思い当たる節があるのか、ネティアは目を伏せた。


「思い当たる節があるみたいだな。闇の騎士と直接話がしたいなら王都に戻った方がいいと思うぞ。あっちも姫に言いきれなかったことがあるはずだ。でなきゃ、こんな大掛かりなことできないぞ」


ナイトの言葉を聞いて、ネティアは伏せていた目を上げたが、踏み切れないのか、しばらく考え込む。


「…もし、わたくしが王都に帰ったとして、闇の騎士は正体を明かすでしょうか?」

「そんな危険なことはしないだろうな…自分はともかく、仲間のことを考えたら死んでも口は割らないだろう。姫はそんなに闇の騎士の正体が知りたいのか?」

「ええ、もちろん」


ネティアは断言した。


「王都に帰っても正体が明かせないとなると、今、闇の騎士の正体を暴かなくてはなりません」


ネティアの強い意志に今度はナイトが口を噤んだ。

話が血生臭い方向に行きそうで思わず唾を飲み込む。


「…正体がわかったらどうする?…罰するのか?」

「当然です」


事も無げに答えたネティアからは怒りを感じる。


「…100人はいたぞ。しかも、正規軍の兵かもしれないんだぞ?」


もし、全員正規軍の兵だった場合、レイガル王の失墜は免れない。


「わかっています…ですが、罪は罪です。『返答』次第では償ってもらいます」

「…返答?」


ナイトは目を丸くして、ネティアを見る。


「何か、闇の騎士に聞きたいことでもあるのか?」

「それは…あなたの知るところではありません!」


ネティアは急に怒鳴って、そっぽを向いてしまった。

ナイトは何かまずいことを聞いたのかわからず、同席を頼んだ2人も困惑していた。


「ということですので、ルーク。あなたとの雇用契約はここまでで打ち切ります!」

「はあ!?」


突然、傭兵を首になったナイトは飛びあがった。


「1人でどうするんだ?」

「ジャミルを頼ります」


父王の元に戻りたくないネティアはジャミルを選んだようだ。


「血が流れるぞ」

「向こうがその気なら、それもいたしかたありません」


ネティアがジャミルの下へ行けば、決起した闇の騎士の追い詰められて何をするかわからない。

父親であるレイガル王は立場がない。

ナイトの苦労も報われない。

ついに、最終兵器を使う時がきた。


「どうやって自分がネティア姫だと証明するんだ?」


部屋を後にしようとするネティアにナイトはやけくそで質問する。

正規軍の兵ならネティアの顔を知っている者は多少はいる。

だが、ランド軍となるとそうはいかない。

上官でも一部の者しかネティアの顔を知らない。


「御心配無用です。ちゃんと証明できるものはありますから」


ネティアはそう言って、大切に閉まっておいた木箱を取り出して、中を開けた。


「え!?」


木箱を開けたネティアの顔が驚愕に歪む。

中に入っていたのは手のひら大の石だった。


「探し物をこれかな?」


ナイトは意地悪くネティアの首飾りを懐から出して見せつける。


「あ、それは、わたくしの!!?」


慌てふためくネティアを他所にナイトはしげしげと首飾りを鑑定する。


「さすが代々の世継ぎ姫に受け継がれてきただけあって年季が入ってるな。売れば結構な値段になりそうだ。退職金代わりにこれは貰っとくぜ。じゃあな!」


ナイトはネティアの首飾りを懐に入れて、にこやかに手を振る。


「『じゃあな』じゃ、ありませええええええん!!!!」


ネティアが叫ぶも、


「え、俺、首だろう?」

「それは返してください!」

「嫌だ。退職金だもん」

「他の物を上げますから!」

「じゃ、今くれ」


ナイトはネティアに手を出した。

ネティアは差し出された手を見て固まる。

よくよく考えると、金など何も持っていない。

金目のものと言えば、ナイトに取られた首飾りぐらいだと気づいたのだ。

後は、ほとんどナイトに買ってもらったものか、ミナが好意で貸してくれているものだった。


「どうした?早くくれよ」


それを知っていながら、ナイトは意地悪くネティアに迫る。


「…今はありません…後で必ずお渡ししますから、その首飾りだけは返してください!」

「そんな言葉信じられないな。すべてが終わった後にのこのこ報酬をなんか取りに行ったら取っ捕まってひどい目に合うに決まっている」

「そんなことしません!」

「姫はそういうがな、仕えている奴らは違うの。世の中はそう言う風にできてるんだ」

「でしたら、直接、わたくしに会いに来てください。必ず報酬をお渡ししますから」

「ダメだ。今くれないんだったらこれは俺が預かる。そして、傭兵は続けさせてもらうからな」

「え…?」


必死になっていたネティアの顔が急に呆ける。


「忘れているようだから言わせてもらうけどな、俺の本当の依頼主はフローレス姫だからな。だから、ネティア姫の首の宣告は無効だ」

「あ……」


ネティアは思い出したように口を噤んだ。


「…そうでしたね…フローレスに許可を得ずにあなたを解雇したら怒られてしまいます。先ほどの言葉は取り消します」


勝負はあっさりついた。

双子の妹を出されると弱いネティア。


「それで、やっぱり闇の騎士に会いに行くのか?」


ナイトは今後の方針を聞くと、


「もちろんです。何もせずには戻れません」


ネティアの意思は固い。


「でもな…骨が折れると思うぜ…」


ナイトは雨が降りしきる窓の外に目をやる。

正規軍、ランド軍の騎士達が総動員でたった1人の闇の騎士を追っていた。

ネティアを連れ帰ってから4時間ほど経ったと思うが、今ただに捕まっていないようだ。

これだけ時間が経っても捕まっていないところを見ると、もう逃げおおせていると思われる。


「レイガル王も、闇の騎士も出てきた。もうあまり時間はないぞ」

「それでも、探すだけ探します!」

「…当てはあるのか?」

「あります!」


思わぬ返答にナイトは思わず耳を疑った。


「ルーク、明日、出かけますよ」


どんな当てがあるのかわからないが、自信満々に言い切るネティアにもう付き合うしかない。




***




「リュック、服置いとくぞ」

『ありがとう!』


シリウスは風呂場にいるリュックに呼びかけて、服を置いた。






つい先ほど、外が騒がしいことに気づいてシリウスは目覚めた。

丁度その時、出掛けていた年下2人組が帰ってきのだった。

外は雨で、長身のルビは足元が濡れているぐらいだった。

だが、リュックは何故か全身びしょ濡れだった。


「リュック…川に流されたか?」

「そんなわけないでしょう!」


予想通りのツッコミが返ってきたが、シリウスは真面目だった。

ルビは口元を抑えて蹲る。


「…しかしだな…その濡れ方は半端ないぞ?」

「だからって、川で流されるわけないでしょ!いくら身長が低いからって、それに、泥がついてるでしょう!こら、ルビ、笑うな!」


リュックは怒って、笑いを堪えているルビに蹴りを入れ、


「もう!僕はシャワー浴びてくるから!」


叫んで備え付けの浴室に入っていく。


「…外で何があったのだ?」

「ははは、ぶつかられて盛大に水たまりにダイブしたんだよ。しかも、続けざまに2回も…」


ルビは堪えきれずに笑い出していた。


「ぶつかられたのが俺だったらあんなに盛大に倒れたりしなかったのに…」

「…そうか…可哀そうにな…」


シリウスは怒って浴室に消えたリュックに憐みの視線を送る。

5人の中で一番華奢で育ちもよく、騎士と言うよりはどちらかと言うと官僚向きのリュックをちょっぴり気にかけていた。


「でも、リュックのお蔭で収穫があったぜ」

「収穫?」


ルビはそう言うと、懐から封筒2つと、使い込まれた財布をシリウスに手渡してきた。


「話はみんな揃ってからにしよう。俺も着替えてくる」


ルビも別室に着替えに行く。

1人残されたシリウスはリュックに着替えを用意してやると何もすることがなくなり、封筒を見る。

1つは立派な封筒で『アルート』『シリーウス』とあて名が書いてある。

恐らくアルトが自分達の名前をいじって、ペンネームにしたものだと推測される。

そのことからこの絵は絵画の報酬だとわかる。

薄っぺらいことから小切手が入っているのだろう。

現金でくれなかったところを見ると、アルトが言った通りかなりの高額で売れたのかもしれない。

だが、絵がいくらで売れたかなどにシリウスは興味がなかったので、その封筒は無視し、アルトのために残した。

2つ目の封筒は手紙のようだった。

あて名はない。

その封筒を開ける前に、ルビが着替えて戻ってきた。


「あ、その財布、2回目にリュックにぶつかった奴がお詫びにって置いていったんだ」


使い込まれた財布を手に取り、ニヤリと笑う。

その財布を見てシリウスが呟く。


「恐喝でもしたのか?」

「…俺、一般人に弱い者いじめなんかしないぜ…相手は虹の国の騎士だったから、か弱いリュックを突き飛ばした落とし前をつけてもらうために腕鳴らしたら、置いてった」


ルビはニヤニヤしながら財布を開ける。

他国の騎士の手持ちがいくらか気になっていたようだ。

中を覗いたルビの顔が引きつる。

その顔につられて、シリウスも中を覗く。


「1000ゴールドか…しけてんな…これじゃ、リュックが浮かばれないな…」

「それでも虹の国の騎士の平均給与1万ゴールドの1割だぞ。」

「俺達の100分の1じゃないか!こんなもんもらえね!」

「…虹の国は貧しいからな。私も海賊時代はよく見逃したものだ」


豊かなことで知られる水の国の騎士の平均給与は10万ゴールド。

更に、その水の国の第一王子に仕えているルビは高給取りだ。

ルビは虹の騎士から脅し取ったことを後悔して、『あとで返そう』と呟いて財布を置いた。


「ルビ、リュックは2度ぶつかれたと言ったな?と言ういことは1人目は虹の騎士に追われていたことになるが?」

「ふふふ、さすが、核心を突くな。そう追われたのは『ネティア姫』だ」


シリウスの目が見開かれる。


「王子は!?」

「遠くからだけど確認したぜ。背格好のよく似た2人の男女とネティア姫を連れて帰っていった」

「どこに!?」


シリウスは身を乗り出す。


「居場所までは確認してないよ、リュックが風邪ひきそうだったし…」

「それでも確認するのがお前たちの役目だろう!?」


興奮して迫りまくってくるシリウスをルビは必死で突き返す。


「だあ!最後まで話聞けよ!画商のところに行ったら、アルトの絵を買った宝石商のサムって男から手紙を預かった。アルトの知り合いって言ってたから、たぶん王子だぜ」

「手紙!もう一つの方か!?」


シリウスは手紙に飛びつこうとした。

その寸前で、別の誰かに手紙を取られた。


「アルト!貴様、起きてたのか!?」

「ああ、騒がしかったのでな…」

「何の騒ぎだ…?」


パジャマ姿のアルトの後ろからライアスも欠伸をしながら起きてきた。


「ああ、さっぱりした」

「ああ、助かった…」


丁度、風呂から上がってきたリュックにルビは駆け寄る。


「何、もう話したの?」

「だって、シリウスがしつこいからさ…それに早く言いたかったんだよ」


ルビは怯えながらリュックに話して、シリウスに線を移す。


王子の事となると周りが見えなくなるシリウスはアルトから手紙を奪おうとしていた。


「アルト!手紙をよこせ!」

「断る!これは私のものだ」


すごい剣幕のシリウスをアルトは冷静に突っぱねる。


「あて名は書いてないぞ!」

「そのようだな…だが、これは私宛で間違いない」

「なぜ、断言できる!?」

「それは、王子が見た絵が私の絵だからだ!」

「な、何!?」


衝撃を受け、後ずさるシリウス。


「ルビ、確か、私の絵を買った客から手紙を預かってきたのだろう?」

「ああ、アルトの知り合いって言ってた…」


ナイト王子の右腕と自負が崩れ、シリウスは失意に沈む。


「なぜ…私ではなく、アルトなのですか…王子?」

「王子は関係ないだろう?だって、アルトの絵を好んで買った客の家にたまたま王子が厄介になってただけだし…」


ルビが指摘するが、失意のシリウスの耳には届かない。

アルトがシリウスの肩に手を置く。


「精進するのだな…」


アルトの言葉にシリウスは項垂れて頷く。


「そこ間違ってない!?」

「俺ら騎士だよな?絵の道極めてどうすんだよ?」


真っ当な年下2人組の言葉も絵の道に一歩足を踏み入れたアルトとシリウスには届かない。


「では、王子の手紙を開封するとしよう」


何事もなかったかのように本題に戻すアルト。

封を切って、素早く2枚の手紙を一読する。


「ふむふむ、やはり、王子は名画コレクターである宝石商のサムと言う者のところにネティア姫と共に身を潜めておいでだ」


予想通り主の居場所ががわかり、リュックとルビはハイタッチを交わす。


「ネティア姫はこのままランドに行くか、虹の王都に戻るかで悩まれていて、王子はその決断を待っていたようだ」


ルビが首を傾げる。


「でも、今日、ネティア姫だけが正規軍、ランド軍の騎士に追われてたぜ」

「となると、姫はどちらも選ばなかったのだろうな…」

「どっちも選ばなかったって…まさか、世継ぎ姫がとんずら!」


ドカ!


リュックの蹴りが思いっきりルビの腰に入る。


「次期女王がそんことするわけないだろう!?」

「で、でもさ、責任の重圧に耐えきれなくなって、思わずとかさ…」

「リュックの言う通り、それはないだろう。生まれながなにして国の運命を背負っているのが王族だからな。その運命からは逃れられんことは、国王陛下親子を見ていればわかるだろう?」


アルトが主親子を例に出した。

駆け落ちしたウォーレス王は兄王が早逝したため、止む無く王位を継いだ。

その子ナイトも、父の運命に引きずられて普通の少年から、突如、水の国の王子へと人生が一変したのだった。


「ならば、ネティア姫はたったお1人で闇の騎士を探しに行くという選択をされたと言うことにならないか?」


ライアスがチンプンカンプンで口を挟む。


「そう考えれば辻褄が合うが、なぜ、王子と一緒ではないのだ?王子はまだお若いとは言え、騎士としては最高位の実力の持ち主だぞ」


シリウスもわからない顔をする。

ネティア姫はナイト王子を傭兵として雇っているのだ。

連れて行かないのはおかしい。

アルトが答えを推察する。


「恐らく、ネティア姫は王子の身を案じてくださったのだろう。王子をただの傭兵だと思っていらっしゃるからな。今の現状では王子は正規軍、ランド軍のどちらにに捕まっても罪に問われるだろうからな…」


アルトの推察に、全員が納得したところで、疑問が湧く。


「ネティア姫が正規軍とランド軍に追いかけられていたのはわかった。しかし、もう、王子が連れて行かれたのだろう?それなのにこの騒ぎは何だ?」


シリウスが雨が降りしきる窓を指し示す。

正規軍、ランド軍が道と言う道を駆け巡っている。


「外の騒ぎは、闇の騎士を追いかけているんだよ」

「闇の騎士だと!?」


ランド軍が総力を挙げて探しているというのに何の手掛かりも見つけ出せなかった闇の騎士が突如出てきたのだ。

外の騒ぎの理由がわかった。


「このタイミングで出てきたとなると…たぶん、ネティア姫が捕まらないように邪魔しに出てきたんだと思うよ」

「妙じゃないか?闇の騎士の目的はネティア姫を王都に帰らせることだろう?正規軍に追われていたのであれば、正規軍にネティア姫を捕まえさせれば良かったんじゃないか?そうすれば、奴らの目的は達成された」

「そうだな、ライアス、だが、少し違う。ネティア姫を王都に帰らせるので駄目なのだ。ネティア姫がご自分で王都に帰る選択をしなければダメなのだ」

「…どう違う?」


ライアスとルビは首を傾げる。


「もし、正規軍がネティア姫を有無を言わせず捕まえたとしよう。そこにランドの騎士が来たら、ネティア姫はランドの騎士に助けを求めるだろう。大義名分を得たランドの騎士は迷わず剣を抜くだろう」


アルトの説明に、ライアスとルビは納得した。

ネティア姫が自分の意志で帰ると言わなければ、血が流れると言うことを2人は理解した。


「なるほど、闇の騎士はそこまで計算して、自らをおとりにしてネティア姫を逃したということか…」

「推測の域だが、たぶん、間違いないだろう」


シリウスとアルトは闇の騎士の的確な判断に感服した。


「で、王子は何て言ってきたんだ?」


ルビが先を促す。

ネティア姫、闇の騎士が姿を現したとなると、正規軍もランド軍も活発に活動するだろう。

争いが起きやすくなる。

アルトは口では言わず、1枚目の手紙を全員に見せる。

4人は食い入るように主の手紙を見て、半分がニヤリ、半分が微妙な顔をする。


「こんな作戦で大丈夫かな?」

「正規軍とランド軍双方とも気が立っているしな…」


微妙な顔をしたのはリュックとライアス。

示された作戦に不安を抱いた。


「王子の作戦に間違いはない」

「そうそう、というか、この作戦、面白そうじゃねぇ?」


笑ったのは、主を絶対視するシリウスと楽天的なルビだった。

アルトはどちらの表情も見せなかった。

ただ、主の示した作戦を遂行するのみ。


「王子の命だ、全員で手を分けして協力者を探すぞ!」


アルトの号令で、各自、宿を飛び出して行く。

外は闇の騎士を捜索する騎士達で溢れていたが、結局その日は捕まえることができなかった。

ネティア姫を捕まえられてなかった正規軍、闇の騎士を取り逃がしたランド軍は疲労はピークに達しようとしていた。

















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