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R18  作者: 高沢 湖大
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 ブレーキをかけながらのろのろとニュータウンの坂を下っていく。左手には丘に張り付くようにしてせりあがっていく建築物の壁。左手には、時折家々の隙間からふもとの工業地帯の風景が垣間見える。別段珍しいわけでもない見慣れた通学路だ。僕は溶けかけの雪をパシャパシャと轢きながら自転車を進めていく。真冬のしばれた空気が地肌に張り付く。日差しはあってもこの冷気はどうしようもなくて……。

 冬の空が高い。太陽から僕らが見放されていくような、そんな錯覚を覚えてしまうほどに。

 ――はて、どうしたんだろうか。今日はなぜだか不思議な感覚が胸に渦巻いている。いつもはこんなセンチメンタルな気持ちには浸らないのに。


 そんな心境のせいか、坂を下りきると随分と遠くまで来てしまったような気分になっていた。ゆっくりと降りてきたからかなと、自分自身の説得を試みる。しかし、一人旅の寂しさというか、郷愁というか、そんな感情を払拭することは出来なかった。今更ホームシックにもなるまいし、今日の調子はどうもギクシャクする。心の配線がうまくいってないみたいな感じ。こう、カチッとスイッチが入ってくれないもどかしさとでも言おうか。要するにスッキリしないのだ。何かを忘れてしまっているような気がしてならない。

 ガスは使ってない。エアコンは切った。カギもしめた。ケータイも持っている。

 いつも通りの今日である。はずだ。


 晴れ切らない心持のままペダルをこいでいく。除雪車のおかげで歩道が雪で押し潰されているところは、中途半端な雪国特有の現象だろう。おかげで僕らは車道の脇を進む羽目になる。そこのところ、行政はもっとしっかり考えてほしいんですど。とかって愚痴ったことは数知れない。そんなことを言えば、

 ――そもそも自転車は車道の脇走るもんですけど?

 なんて、毎回僕は突っ込まれてたっけか。

 ふっと、ペダルを踏む足が止まった。

 そうだ。確か僕は、こうしていたんじゃなかったっけか。

 自転車から降りて、ハンドルを押す。ゆっくりと押して歩く。

 ああ、そうだ。この感じ。近い。

 こうやって進みながら、僕は談笑していた気がする。友達か誰かと。

 うん、なんで忘れていたんだろうか。自分自身の歩き方を。どおりでしっくりこないわけである。

 ようやっと違和感の正体に答えを出して、僕はてくてくと大学へと歩を進めた。無料で一日を過ごそうと思えば、キャンパスというのは一人暮らしの身分にとっては本当に都合がいい。

 外気が冷たい。速やかに暖房の恩恵にあずかるべく、僕は自転車を押す速度を上げた。

 当然ながら、依然として空は高いままだ。ふもとに降り立おかげか、太陽がさらに遠くに離れてしまったように見えた。


はい。今週もお疲れ様でございます。雪、皆様の地域は降りますでしょうか?

私の地方は本当に中途半端に積もります。昔はもっと積もったのになあ、なんて思う最近です。

温暖化と叫ばれて久しいですが、夏の日差しよりも冬の積雪量にそれを感じますね。

もう地元でカマクラ作れるほどの降雪はないんだろうなと思うと切ない気がします。

長くなりました。それでは、また来週です。

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