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R18  作者: 高沢 湖大
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 しんと静まり返った空気に目を覚ました。特有の感覚だ。車がアスファルトを滑っていく音も、鳥のさえずりも、人々の声も――朝の喧噪が全て飲み込まれてしまったかのような静寂。よく知っている。この感じは、雪だ。

 むくりと寝床から起き上がり、携帯を手に取った。7時ジャスト。一人暮らしのマンションの一室はまだ薄暗いままだった。テレビをつけてカーテンを開ければ、そこには一面の雪景色が広がっていた。マンションの目の前を走り抜ける道路にも、家々の屋根にも、駐車してある自動車にも、自転車にも、平らかに覆いかぶさる真白の絨毯。昨晩で積もったのか、ニュータウンを包み込んだその雪は、柔らかそうな表情を覗かせている。追い積もる降雪はない。この調子だと、せっかくの雪化粧も昼の日差しが現れれば夕刻までには溶けていってしまうだろう。跡形も残さずに。いなくなってしまう。

 じっと真雪を見つめていると、なぜだか心臓がじくりと痛んだ。おかしな夢を見たからかもしれない。


 大学生の朝は気怠い。一人暮らしで、しかも冬休みと来れば尚更だ。朝のシャワーを浴びて、食事を済ませ、やることもなくだらだらと過ごしていると、簡単にお昼前まで時間が過ぎていた。

 いかんいかん。ずっと家にこもっていても体が鈍っていくだけだ。

 特に見ていたわけでもないテレビを消して、僕は部屋を出た。

 とはいえ、行く当てもないのだけれど。


 外の世界の雪は日差しに炙られながらゆっくりと溶け始めていた。空を見上げれば一瞬、青空からキラリと太陽がウインクしてきた。眩しい。凛と引き締まった空気を突き抜ける斜陽は、他の季節よりも鋭く尖っているように思う。春は包み込むようで、夏は押し潰すようで、秋はどことなく素っ気無いような、そんな感じ。四季折々の太陽の表情は、気に留めてみるとちょっと面白い――なんて、そんなことを昔誰かが言ってたっけ。偉人やなんかじゃなくて、僕の知り合いの誰かが言っていた科白だ。

 ――あれ? 誰だったっけ?

 セリフの中身は思い出せても、それを宣った本人の記憶が脳裏に霞がかかったように思い出せない。

 思い出のページに一点の欠落。あるいは綻びか、落丁か。

「誰だったっけ……」

 僕はなんとなく気持ちに喪失感を芽生えさせながら、愛用の自転車にまたがった。

 溶けかけの雪道は、人と車に踏み荒らされたのだろう、雪とアスファルトが混然一体となったまま向こうまで続いている。


ぎりぎりの投稿になってしまいました。ちょっと健康診断とやり残した仕事を済ませていたらこんなことに。更新二回目なのに……。

仕事のやり残しはいけませんね。明日やろうはバカヤロー。早め早めに行動していきたいものです。

本日分も読んでくださりありがとうございました!

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