ぷろろーぐ
お疲れ様です。お仕事すっかり忙しくなりまして、いろいろほっぽらかして馬車馬のように働いておりました。趣味を取り戻すべくリハビリ始めますので、心優しい方々にお付き合い頂ければ幸いです。
――ここに来れば、会えるような気がするんです。
道路脇のフェンスを乗り越えて、芝の生えそろった空き地に降り立つと、眼下には月光を受けて輝く街の夜景が広がっていた。丘の上に築かれたニュータウンから見下ろす世界の色は、宝石を散りばめたような美しさを放っている。昼間の相貌を隠して綺麗な部分だけを映し出す街並みを眺めながら、彼女が真剣な声でそんなことを言うものだから、僕はただ、その後姿に向かって「誰に?」と問う事しかできなかった。
銀のイヤリングが揺れた。
通り過ぎた北風の為か、彼女が何らかの所作を示したためか、右側だけにあしらわれた耳飾りがちらちらと瞬く。
――分かりません。
――私自身、誰に会える気がしているのか、誰に会いたくてここに来てしまうのか。
――何を探しているのか。
冬の空気が凛と透き通っているせいで、針で撫でられたかのように耳が痺れる。彼女の言葉がなんとなく悲壮な色を帯びて聞こえたのは、僕の鼓膜に冷気が張り付いていたからかもしれない。煌びやかな夜景に佇む彼女は、一人世界から弾かれたみたいに鮮明な孤独を醸し出していて、まるで、別の世界の住人がこの世界に紛れ込んでしまっているような、不可思議な存在感があった。
――あなたはご存じありませんか?
彼女が振り返った。短い黒髪がくるりとゆれて、彼女の眼差しがはっきりと僕を捕らえる。月影を背にした彼女の顔を、
――私が何を求めているのか。
僕は思い出すことができなかった。
はい。分量短いですがキリがいいのでこの辺で。
週一回は必ず更新します。仕事的に無理が出始めたら必ず報告します。をスローガンに今後も書いていきますので一つよろしくお願いしまっす。仕事上前後はありますが、基本的に毎週水曜日に更新いたします。
それでは。