グリフォン
グリフォンとは――鷲の翼と上半身、ライオンの下半身を持った伝説上の生物……だよな、前世の世界では。
いやぁ、すごいなぁ。
俺、今伝説を目の前にしちゃってるよ。
いや怖い!伝説怖いわ!
結構でかくてライオンの体とか持っているくせにその大きさはライオン以上だ。
しかもあいつの口に人の足見えるんだけど?
「兄ちゃん、外の様子はどうだ?」
「グリフォンが何か脱走したらしいですよ、絶賛人喰ってます。」
「グリフォンだぁ……?魔獣商が逃がしたってところか。全く迷惑なこった!兄ちゃん達、逃げるぞ!」
親父さんはそう言うとそそくさと外に出るための準備を始めた。
でも俺はしたいことがあった。
「親父さん、ちょっとルナ預かってくれないですか?」
「え?」
俺の言葉にルナが振り返った。
まぁいきなりだもんな、気持ちは分かる。
「何言ってるんだ、兄ちゃん。」
親父さんも理解不能と言ったような顔だ。
「あのグリフォン、誰かが食い止めなきゃずっと追いかけてきそうじゃないですか。それなら俺が食い止めますよ。」
「馬鹿野郎!そういうのは冒険者ギルドに任せりゃいいんだよ!」
「俺も冒険者ですよ!?……Cランクだけど。」
「じゃあ尚更止めとけ!カタラとかが対処してくれる!」
確かにSRであるカタラならばあのグリフォンも倒せるかもしれない。
「分かってます。でもそれでもここまで来るまで時間がかかるはずです。それまでの時間稼ぎをさせてください。」
親父さんは口を閉じて俺を見据える。
俺もそれに答えるように見返す。
2人の間に静寂が訪れる……訳はない。
今も外でワーギャー人が騒いでいるし、っていうか急がなきゃ一刻の猶予もない。
「ルナはあのグリフォンから守れる自信が無いんです、お願いします!」
俺は親父さんの返答を待たず外へ飛び出した。
ルナが俺の名前を読んだ気がするが、すまないルナ。
店から大通りに出ると、すぐ目の前にグリフォンはいた。
俺を視界に入れると同時に大きく叫んだ。
「GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!」
おおう、声で空気が痺れているような感覚がする。
何て声量だ。
『と言うか殿、私がいること忘れてはいないですか?』
……あ、お前俺の服にいたな、そう言えば。
「すまんゲル、お前も逃げるか?」
『何を言いますやら、私は殿と一緒に参りますぞ。戦えませんがな!』
「期待してないから大丈夫。」
そもそもグリフォンと戦えるくらいならあの魔獣共も戦えるはずだからな。
「でも離れとけよ。激しい動きするんだから。」
『承知しましたぞ。』
ゲルはパタパタと耳を羽ばたかせ、俺の服から飛び出す
グリフォンは涎をだらだら垂らして俺を見る。
餌だと思われてるのなら侵害だ。
近くに人はいなくなったが、まだ遠くで悲鳴が聞こえる。
もしかして何体もいたりするのか?
だが今は目の前のコイツだ。
よし、ちょっとトーヤさん鎌蜘蛛以来の戦闘頑張っちゃうぞ!!