カタラ
「で、何の用だよ。」
もうこいつに敬語で話す必要ないだろ、鬱陶しい。
「いやぁ、ちぃよっと忠告したくてねぇえ?」
「忠告?」
男は依然厭らしい笑みを浮かべている。
これにはルナも気持ち悪がり俺の背に隠れる。
忠告とはあれか、こんなにいい女釣れていたら俺見たいなのに手を付けられるぜぇ?ゲヘヘ!とかか、よしそれを言った瞬間ぶん殴ろう
「その嬢ちぃゃん狼人族だろぉ?」
「それがどうした。」
俺はポケットに手を入れ中にある棍棒を掴んでいつでも殴れる様にしておく
だが男が喋ったのは俺の想像の斜め上を行くものだった。
「狼人族は結構そぉの筋から人気だからぃよぉう?嬢ちぃゃん美人だからしっかり守ってやぁれよぉ?たまに人さらいが飛び出してくるからぃよぉう?」
……あれ?
「え、何お前ルナをどうこうしようってんじゃないのか?」
「いぃやいやぁ、そんな事しぃないから安心してくれぇよ。大方俺ぇの顔で警戒したんだろぉ?分ぁかる分かる。」
うんうん、と男は納得したようにうなずく。
話を聞くとこの男はカタラと言う名前で本当に善良な冒険者らしい。
が、顔と話し方のせいでパーティーに組んでもらえず基本的にソロで活動しており本人もそれで納得しているらしい
「その話し方を変えたり顔弄ったりしないの?」
「話し方は染みつぃいちゃったし、親からもらったこの顔は変える気ねぇえよぉお。」
その2つさえ克服すれば引っ張りだこだと思うのだが、まぁ本人がいいならそれ以上言うのも失礼か。
実際俺もカタラとパーティー組むことになるのは抵抗がある。
俺も聖人じゃないからパーティー組みたい組みたくないはあるのだ。
「と言うか俺とルナは主従契約結んでるから奴隷にはならないんじゃないのか?」
「確かにぃ主従契約結んでるならいぃよう、奴隷にはならねぇけどぉ。そりゃあお前が生きているぁ間だけだぁぃよう。」
「つまり俺が死んだら……」
「契約はぁ切れて、変態共ぉに狙われるってことだぁぃ。」
それは嫌だなぁ、善良な人がいるならいいが、都合よくいい人ばかりじゃないのも道理だ。
もしも俺が死んだらゲルにルナを乗せて全力で逃げてもらうしかないか
『殿、自分が死んだらとか思っていませぬか?』
「トーヤ、死んだら私も死ぬから。」
頭の上と背後から重い声が聞こえた。
まさか考えてることを見抜かれるとは……うん、死ぬことは出来る限り考えないようにしとこう。
カタラからは「愛さぁれてるねぇ。」と笑われた。
まぁ愛される分には問題ないが、俺が死んだら死ぬなんてあまり嬉しくないなぁ。
「ああぁそうだったぁ受付にぃようがあるんだぁってねぇ、引き留めちぃやってすまないねぇ。」
「いや、こっちこそ気にかけてもらってありがとうな。」
俺はカタラに軽く手を振り受付へと向かった。




