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声のする方向へ行ってみるとそこに緑色の肌をした熊に近い姿をした魔獣が5匹ほど一本の背の高い木に群がっていた。

どいつもこいつも木に爪を立てながら上を見ているが、何か獲物でもいるのか?

魔獣の目線に沿って高い木の上を見てみると象がいた。


いや、厳密に言うと象なのだが象ではない。

何せ、俺の知っている象はあんなにちいさくない。

ライオン並みの大きさだし、更に言うと耳が変わっていて、何というか翼みたいな形をしている。


だがその耳で飛ぼうとしない当たり飛べないのかもしれない。

そしてあの象?さっきの鳴き声、あからさまに象だし今も助けを呼んでいるんだが、無性に渋くいい声なのだ。

鳴き声の方はいたって普通の高いパオーンなのだが、人の声に変換されるといい声過ぎるのだ。


良い声に納得できず悶々しているとルナが俺の服の裾を引っ張って現実に戻す。

「トーヤ、あれ助ける?」

「そうだなぁ、何か俺あいつの声分かるみたいだし助けてみるか。」


まぁ最悪助けられなかったら放っておいても構わないだろう。

助けようとしただけで感謝をしてほしい。


とりあえずルナは下がらせて俺だけで救出することにした。

まずはあの魔獣たちだな、まぁ"変態"するんですけど。

俺は助ける対象に倣って象の姿に変身した。


もちろん象そのものになったのでかなりの大きさになった。

魔獣たちは"変態"した際に出たズシンと言う音に反応してこちらを見た。


突然現れた自分たちが狙っていたものより大きな生物が現れたことで一瞬簸るんだが、一気にこちらに駆け出し飛びかかってきた。

『あぁっ、危ない!』

木の上の象が叫ぶような声を出したが安心しろ、別に危険じゃあない。


俺は象になった際に"模倣強化"会得したスキルを試してみることにした。

その名も"鼻砲"《ノーズキャノン》。

まんまな名前だが、使い方は簡単で大きく鼻で息を吸い込み、鼻で空気の弾を放つといういたってシンプルな技だ。


「吹っ飛べオラァ!」


俺の放った空気の弾の威力は強烈で魔獣のうちの一体に強い衝撃を与え吹き飛ばした。

仲間が吹き飛ばされたというのにそれ以外の4匹は意に介せず、足元や背中にかみついてきたが、残念そこは硬いぜ?

元々象の皮膚は厚く硬い。

生半可な力の牙じゃ食い込むことすら敵わないし食い込んだとしてもこちらとしてはそんなに痛くない。


そのため魔獣たちは俺の体に上手く噛みつけず四苦八苦している。

すかさず俺はよく曲がり伸びる鼻で魔獣たちをロックオンし、ことごとく空気の弾で吹き飛ばしていった。


結果、魔獣たちは恐れをなしたのか、最初に狙いを定めていた象を諦めどこかへ去っていった。

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