娘さんは頂きますね
ほー綺麗な銀色の指輪だ。
俺の右親指、ルナの右小指に装着されたのは何か意味があるのだろうか。
「これで契約?が完了したのか?」
「そう。これでトーヤ、貴方は私のご主人様。いや、マスターの方がいい?旦那様?主?」
顎に手を当て考え始めるルナ。
表情は変わらないがどこか楽しそうな雰囲気を醸し出していた。
「ルナァ!貴様何故人間如きに与する!狼人族の誇りを忘れたかぁ!」
土で出来た格子を掴み吠えるように喋るバズ。
ルナは先ほどまでの雰囲気を消し去り、バズに視線を移すが、それは実の父に向けるにはあまりにも酷な、汚い虫を見ているようだった。
バズはその目に恐れのようなものを抱いたようで押し黙った。
「父さん、今私は感謝している。攻撃魔法を覚えていない私に……もし、使えていたのなら父さんを再起不能にしているところだった。」
いや、本当によかったです。
流石にルナがバズを攻撃するところなんて見たくはなかった。
閉じ込めている時点で手遅れ感もあるが目を瞑ろう。
「それにその程度の誇りならば私は踏みにじる。……じゃあまた会う日が来ればいいけど、さようならお父さん」
そう言うとルナは俺の手を引き、村から出ようとする。
俺もそれに反対することはなく、ルナに引っ張られるまま村を後にしようとするが
「あ、ルナちょい待って。俺もあの人に一言言っておきたい。」
「そう?」
ルナは仕方なしと言った風に手を放す。
あの親父に近付いてほしくないのか、その目は何かを語っていた。
というかルナは父親に対する扱いが一気に急落したな……それほど幻滅したのだろう。
俺は土の檻に閉じ込められているバズに近付いた。
バズは四つん這いになっており、俺はそれに目線を合わせるように屈む。
それに気づいたのか、バズは俺を殺してしまいそうなほど睨む。
まぁ憎いだろうけどそりゃあんた、
「自業自得だ。」
おっと口に出てしまった。
まぁいいやこのまま続けよう。
「もちっと優しくして罠にはめなきゃ別の未来があったのになぁ。」
「別の未来だと……!?元々は貴様が来なければ!」
「それだとルナは人さらいにつかまって奴隷となる。アンタ等は鎌蜘蛛に惨殺。それでも良かったのか?」
何も言えずに歯を食いしばりながら睨み続けるバズ。
そんな彼に、俺はとどめの一言をくれてやる
「娘さんは頂きますね。」
流石にお義父さんと言うのは止めておいた。
従者ってだけで嫁にもらったわけじゃないし、もっというとバズをお義父さんなどと認めたくない。
そうして俺たちは村から出た。
そう言えば村の名前知らなかったと思ったらルナが教えてくれた
ビレッジ村らしい
なんじゃそら




