予想外のお礼
出て行けって、やっぱりそう来たか。
「一応理由を聞かせてくれます?」
「理由?旅人殿が人間だから……じゃあ駄目かな?」
何を当たり前のことを聞くんだ、とでも言いたげな目だがもしかしてこいつ等人間を見下しているのか?
結局名乗ったのに名前で呼んでくれないしさ。
ぶっちゃけどうでもいいんだがこの発言に対して俺じゃない者が異を唱えた。
「父さん、何を言っているの。トーヤは鎌蜘蛛を倒して村を救ってくれたじゃない。」
確かに俺はこの村で暴れていただろう、鎌蜘蛛を倒した。
正直"変態"のレベルアップが無ければ死んでいたと思うが。
「ハッハッハ、ルナよ、何を言っている?私達は別に鎌蜘蛛を殺してくれ《・・・・・》とは一言も言ってないぞ?まぁ殺しているとは思わなかったがね。」
そうだな、確かにこいつ等は頼んでいない。
ただ俺にここで寝るように言っただけで鎌蜘蛛の事なんて一言も言っていない。
いやぁ、頭にファンタジーなもの付けておいてやることえげつないなぁ
「ちなみにバズ殿、俺はこうして鎌蜘蛛に襲われたわけだが?」
「それに関してはとても不幸な事故だったな。同情するよ。」
同情するだと?
仕組んどいて?
「ハハハッ、何が同情するよですか。最初から俺がアレに殺されるかアレを俺が殺すか、あわよくば相打ちでも期待してたんだろ?」
おっと、つい口が滑ってしまった。
まぁ言いたいこと言えたから良かったとするかな。
「何を言っているのかさっぱりだな。さぁ、さっさと出て行ってもらおうか。」
話を無理矢理切り上げようとしているなぁ。
まぁ俺はさっさと出て言っても構わないんだが、あの娘はやっぱり納得していないぜ?
「父さん、さっきからその態度は何?トーヤは村の脅威を消し去ってくれた。」
父であるバズの前に立ち異を唱えるルナ。
バズは睨みながら反抗する娘の肩に手を置く
「ルナよ、お前があの人間に何を吹き込まれたかは知らないが、人間と言うものは我々の同族を奴隷にしたりする害獣なんだ。」
おう、耳以外人間が何人間を害獣扱いしているんですかね。
「だからって無下に扱っていいわけじゃない。」
「無下に扱ってないじゃないか、寝るところを用意したし食事も出した」
くっそ質素なもん出してくれましたよね、ありがとうございます。
外から肉の臭いとかしましたけど、ありがとうございます。
流石にこれ以上父娘を口論させるのもなぁ。
あぁそうだった、俺が出ていけばいいんじゃん。
俺は立ち上がり落ちていた鎌蜘蛛の核を拾い上げポケットの中の"大収納"にしまっておいた。
「止めろ、ルナ。俺はさっさと出ていくからさ。」
「是非そうしてくれ。」
バズは俺をあざ笑うような目で見る。
いやん、気持ち悪いわぁ。
「待って、このまま村を助けてくれた恩人に何もしないなんて私はいや。」
「と言ってもなぁお前の親父殿はどうしても俺を追い出したいようだし、こりゃもう村から出た方がいいと思うんだわ。」
このままいても村人にバズと同じような目で見られるに決まっているからな
そんな体験はまっぴらごめんだ。
ルナと別れるのは辛いが仕方ない。
この村は人間である俺を受け入れられないみたいだしなぁ。
「じゃあそう言うことで、じゃあなルナ。今度は人さらいにつかまるなよ。」
俺はそう言いながらルナの横を通り過ぎる。
バズの横を通り過ぎた際鼻で笑われた気もするけど、我慢しておこう。
「待って。」
足が止まる。
自分から止まったわけじゃなく、服が後ろから引っ張られたため止まってしまった
後ろを見るとルナが俺の服を掴んでいた
上目遣いでこちらを見るその目は何かを決意したような目だ。
「お礼は私でいい?」
「は?」
いきなり何を言い出すんだ、ルナは。
思わず気の抜けた声が出てしまった。
「私、ルナーディアはトーヤ、貴方にこの命を捧げるわ。」




