夜に迫る影
俺はルナ父――名前はバズと言うらしい――に連れられて村から少し離れたところにある小屋に連れて行かされた。
少しぼろかったがまぁ他の家はあの様だから止まらせてくれるだけ御の字だろう。
と言ってもハッキリ言って何もないし外に出ようにも、バズさんがまぁまぁいいからいいからと外に出してくれない。
何がいいのか、全く説明もしてくれない。
流石に暇が過ぎるので色々と"変態"して遊んでいた。
そこで1つ発見があった。
鷲の際に殺して昨日の晩飯に食べたあの鳥?に"変態"することは出来なかった。
もしかして俺がなれるのは、前世にいた動物だけなのか?
うんうん考えているといつの間にか夜になっていたようでルナが晩飯を持ってきてくれた。
「トーヤ、大丈夫?」
「すっごい暇なんだが。」
「そう、ごめんなさい。私もここに行こうと思ってたんだけど父さんが駄目だって。」
あぁ、そうかそうか。
やっぱりバズさん何か考えてるな?
ま、色々フラグも建ってるし分かるんだけどさぁ
ルナはどうにかバズさんと交渉して晩飯を持ってくる役を得ることができたらしい。
知った顔が持ってきてくれるなら有難いな。
しかし、その料理ははっきり言って美味しくない。
パンに生の野菜に水だ。
昨日食べた名も知らぬ鳥の方が何倍も美味しかった。
しかし一応は出されたものだ。
嫌な顔をせず、全部食べることにした。
嫌な顔はしないが無表情ではあるのだが。
「トーヤ、これ。」
ルナがそれを見かねてか、カバンからリンゴっぽい果物を出してくれた。
名もそのままリンゴらしい。
味もリンゴそのもので、凄い安心した。
「そう言えばルナのそのかばんって色んなものが入ってるな。」
「うん、このかばんはマジックアイテムの"収納カバン"って言って収納スキルが無い人は重宝するの。」
ほう、そんなものがあるのか。
スキルではなく魔法で"収納"を再現しているのか。
俺には無用の長物かもしれないな、上位互換の"大収納"があるし。
「じゃあ私はこれで……父さんに長居するなって言われてるの。」
「あぁ、おやすみ。」
ルナも挨拶を返してくれて小屋を去った。
いやぁ、ルナは本当にいい子だなぁ。
あのバズさんの子供とは思えないし思いたくないね。
夜も深まって様々な生物が眠りにつき始める
もちろん俺も……寝ているわけない。
眠たい気持ちを堪え起きている。
だって眠れるわけもないからだ。
音が聞こえる。
がさがさと草をかき分ける音。メキメキズドンと言う木をが倒れる音。
明らかに何かいますよね。
でっかい何かいますよね。
俺は見えない何かに警戒しながら待機していた。
これから巻き込まれるであろう何かに。
音がやんだと思ったら小屋の壁の1つからシュランという音が聞こえた
あーこの音聞いたことあるぞ。
刀で何かを斬った時に聞こえるよね。
軽く現実逃避していると音のした壁が何かに切り刻まれたようにボロボロと崩れる。
これはもしかしなくてもさっきの話に聞いた奴だろう。
ギシガシと音を立てながら黒い影が小屋に入ってくる。
俺の体よりもでかいその影は
足の先が刃になった巨大な蜘蛛だった。