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ボクは押し通されて、

 何を言っているんだろう。分からない。訳が分からない。分からないのに、どうしてボクは正しいことを言われたのだと思っているのだろう。分からない。

 この人がお母さんを演じてくれていたから? 何の反論もできないぐらいに正論だから?

 違う。間違っている。間違っているはずなのに。どうして、どうして――

 お母さんがお姉ちゃんになる。そうなれば蓮斗と同じ立場になる。それどころか本当の姉弟じゃない分、ボクの方の方が立場が下になる。ボクが一番じゃなくなる。

 そうなるはずなのに、どうしてボクは、蓮斗とボクを同じだけ特別扱いしてくれると確信しているのだろう。

 分からない。この人の真意も、ボクがそう思う理由も、何も何も分からない。分からないけど、どうして、どうして――。

 どうして――こんなにも暖かいのだろう。

「……っ」

 お母さんともう二度と会えないことも知ってる。この人がお母さんじゃないことも知ってる。だけど、それを全部認めたら、本当のお母さんはボクを裏切ったことになる。ボクはそれが嫌だった。

 多分、最初はそんな理由で、ボクは糸を絡めていったのだ。そうして絡まって、絡まって、解けなくなって。

 それをこの人は――お姉ちゃんは、あっさりと解いてくれた。

 絡まった部分だけを切り取って、糸をより合わせて、強く太い一本の糸に作り直した。

 お母さんは裏切ってなんかいなかった。お母さんは誰も分からない場所で、静かに優しく、そして多分とても穏やかにボクを見守ってくれていた。そしてお母さんは、ボクを守ってくれる新しい家族を、お姉ちゃんとお兄ちゃんをくれた。

 一瞬。ほんの一瞬だけ、お姉ちゃんから、本当のお母さんの匂いがした。

「……お姉、ちゃん」

 呼んでみる。お母さんだった人を、そう呼んでみる。まるで最初からボクはそう呼んでいたかのように、言いやすかった。

「お姉ちゃん」

「……何、有紀? 私の可愛い弟」

「ごめ、ん、なさい」

自然とそんな言葉が出ていた。

「……ごめんなさい。……ごめんなさい。………ごめんなさい」

 何度も、何度もボクは、そう言った。それをお姉ちゃんは、黙って聞いてくれていた。

 ごめんなさい。お母さん。ボクはやっぱり悪い子だったよ。

 お母さん。こんな悪い子でも、天国でちゃんと見守っててください。きっと、きっと、いい子になるから。だから天国で、ゆっくりのんびりと、見守っててください。

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