辛い、
ボクは心の底からうんざりした。
「あーあ、つまんないの」
盗み聞きをしていたけれど、とっても残念だ。
「出来たと思ったのに」
あの二人の仲が悪くなるかなと思ったのに。
色々と考えてやったけれど、お母さんはそれを全て解決してしまった。
流石はお母さんだ。
嘘吐きでも、悪い子でも、お母さんは許してくれる。全部、いい方向へ解決してしまう。
「蓮斗、まだ嘘を吐いているような気がする」
嘘の臭いが蓮斗からはまだ臭う。でも、少し違う気もする。お母さんと同じ匂いだ。
優しくて、落ち着けて、だけどとっても冷たくて。
よく分からない匂いだ。
「何の嘘を吐いているんだろう?」
少しだけ考えてみるけど、何も思いつかなかった。別に、それでいい。
まだまだ、ボクには色々なことが出来る。色々な、悪いことが出来る。
だって、ボクは悪い子だから。
お父さんも言っていた。ボクは悪い子で、だからボクには悪いことしか起こらない。
だけどそんなの嘘だ。お母さんが死んだなんていう大嘘を吐いたお父さんの、同じくらいに酷い大嘘だ。だってボクは今こんなに幸せで、こんなにもいいことばかり起きているんだから。
お母さんに出会えて、とても優しくしてくれた。今までに貰えるはずだった優しさを全部、ボクは貰った。
蓮斗とも出会えた。お母さんに嘘を吐くのはちょっと嫌だけど、それでも蓮斗はとっても優しくて、色々なことをしてくれた。ボクの目のことも気にしないで、普通に接してくれた。
お母さんを除けば、生まれて初めてボクを普通に接してくれる人と出会えた。
とっても優しい二人の中で、ボクはとても落ち着けて、安心できる家族になれた。
「……あれ?」
何だろう。何かがおかしいような気がする。ボクは、何かを間違えている気がする。
ボクは悪い子で、悪いことしか起こらなくて、けれどそれは全部お父さんの嘘で、だから、ボクはいい子で、良いことしか起こらなくて。だけど、ボクの思ったとおりには行かなかった。
何かが間違っていて、何かに気付いている。だけど、どちらの何かもボクは何も分からない。
「……っ」
胸が締め付けられるような気持ちになる。痛い。とてつもなく思い。
気付いているのに、それが分からない。分からないままでいようと、ボクがしている。
気分が悪くなって、力が抜けていく。
「……たす、けて、お母さん」
この変な気持ちから、ボクを助けて。




