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私と弟と。

 ――どうしてこんなことになったのだろう。

 私はきっと最後まで、そんなことを思うのだろう。

 私、白井蓮香はいつもそうだ。

 軽薄な判断で、最終的には私が苦しむ。

 今回でいうならば、我がすばらしき双子の賢弟、白井蓮斗との口喧嘩。

 ほんの少し、私が感情的になって起きてしまった、今となってはしょうもない、そんな口喧嘩。――その果てに断固とした拒絶の一言を貰った。

 正直なところ、大ダメージ。攻撃ならぬ口撃。凹みに凹んで、そのせいで一週間ほど眠れていない。

 大袈裟のように聞こえるが、私にとって蓮斗に嫌われてしまうということは、様々な意味で終わりを意味している。

 現在のニート生活や、ゴミクズ認定されている叔父からの金銭面の援助。そして、私を守ってくれる人間との関係。

 それら全てが終わってしまう。

 学校だなんて死んでも行きたくない私にとっては、致命的な終わりである。

 だから私は今、蓮斗と仲直りをする方法を必死で考えている。

 年齢的には高校一年生の私は、至極真面目に仲直りをしようとしている。

 仲直りという言葉に年齢制限があるわけではないが、それでも普通、小学校と共に卒業していくような、そんな陳腐な言葉と行動だ。

 何せ中学校へと進み、人間関係が複雑化すれば、仲直りなどという言葉を使っていられなくなるのだから。

 まぁ、私は小学校をまともに卒業していない上に中学校には通ったことがない為、分かったような振りをして、そんなことをドヤ顔で言うつもりはない。どちらかと言うと悟ったように笑いたい派だ。

 それはともかく。

 私は、社会の先輩達が黙々と積み上げてきた偉大なるレールから外れてしまった人間であり、平たく言えば負け犬だ。

 社会のレールから一度でも外れてしまえば、再びそのレールの上で生きるのは至難の業だ。

 犯罪者がいくら更生したところでそれなりの差別を受けることや、ニートやフリーターという役職の人間は異常者のような目で見られることなど、ありふれたところからそれらは伺える。

 逆に言えば、ありふれているからこそ思考を停止させた人々には分からないのだ。

 自らの愚行が。

 私は蓮斗以外の人間を信頼することはないと思う。信用はしても信頼は絶対にしないと思う。信じて利用することはあっても、信じて頼るようなことは絶対にしないと思う。

 私にも救いの手が差し伸べられる可能性を望んで、思う程度にしている辺り、私は姑息なのだろう。卑怯なのだろう。

 そうだ。私は卑怯だ。

 戦うことから逃げ、あらがうことから逃げ、全てから逃げた。――諦めた。

 私のことは、もうどうでもいいのだ。私自身がどうでもいいと言っているのだから、それで話は終わりなのだ。

 私の話が終わりだとすると、誰の話をするのかと言えば、まぁ、当然の如く私の可愛い弟、蓮斗の話だろう。何せ、私と蓮斗しか、まだこの話には出ていないのだから。

 蓮斗を一言で言い表すならば、素直。正直で、真っ直ぐで、飾り気がない。裏を感じさせず、ただただ純粋。

 蓮斗を前にすると普通の人間は同じように真っ直ぐに向き合おうとする。蓮斗に対して悪意をもって接することが、悪のように思えてしまう。

 蓮斗がそんな、少し特殊な雰囲気を漂わせるようになったのは、奇しくも私がこんな人間になったのと同じ理由である。

 汚れに汚れた私と、ただひたすらに純粋な蓮斗。双子の私達は、何がどうなって、ここまで違ってしまったのだろうか。

 かつての私達は本当にそっくりだった。同じ出来事を経験して、同じことを思って、同じことを考えた。

 そして私達は、それまでと同じく、同じ出来事を経験した。なのに、不可思議なことに、私達はそれを原因として、大きく変わってしまった。

 そしてもっと不可思議なことに、そうして大きく変わってしまった私を、蓮斗は好いてくれている。

 私とずっと一緒にいてくれて、何かと降り掛かってくる――主に私が原因の――災難を蓮斗は振り払おうと必死になってくれる。

 それは純粋に嬉しい。嬉しくて、嬉しくて、だからこそ辛い。

 私が蓮斗の足かせになってしまっているのではないか。そんな風に思ってしまう。

 蓮斗が純粋に、素直に、好意をぶつけて来るほど、私は罪悪感に押し潰されそうになる。

 私なんてさっさと見捨ててくれればいいのに。そんな風に思う一方、まだ見捨てないで欲しい、などとも思っている。

 私は蓮斗のことが大好きで、だけどそれと同じくらいに私自身が大好きなのだ。

ハーメルンにて投稿している《Co-dependence》を書きなおしてみました。

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