お空のカニさん
ある森に、一匹のカニがいました。
そのカニはククナといいます。
ククナは一週間前から、ご飯を食べる時と寝るとき以外ずっと空を見上げるようになりました。
そんなククナを心配したお兄ちゃんは、空を見上げるククナにこう聞きました。
「ククナ、ククナはどうしてずっと空を見ているの?」
するとククナは答えました。
「お空には、カニさんがいるの。
ククナはそのカニさんとお話がしたいの」
その話を聞いたお兄ちゃんは、友達のカモメに、空にいるというカニの話を聞きました。
「確かに空にはカニがいるよ。
でもそのカニは、星のカニといって、夜にしか現れない不思議なカニなんだ。
話しかけても答えない奴だよ」
カモメはパタパタと羽を動かして答えました。
「何度も何度もあいつに近づこうとしたさ。
でもどんなに飛んでもあいつは俺から逃げるんだ。
こまったやつだよ。
そいつと話がしたいだなんて、ククナちゃんは変わってるな」
それを聞いたお兄ちゃんは、仲間のカニに、空のカニのことを聞きました。
「ああ知っているよ。
やつはもう何十年も生きているすごいやつなんだ。
でもどこに住んでいるか、そういうことは一切わからないんだよ」
仲間のカニはそう言って、お兄ちゃんの肩を叩きました。
家に帰ると、ククナはやっぱり空を見ていました。
じっと、じーっと見ていました。
朝、お兄ちゃんは、なんとしてもククナを星のカニに会わせてあげたくて、カモメにあることを頼みました。
カモメは難しい顔をしましたが、お兄ちゃんの話を聞いて、すぐに頷きました。
その日の夜。
星を見ているククナに、不思議な声が聞こえました。
「おーい、おーい、ククナちゃーん」
空の向こうから、遠い遠い向こうから、声が聞こえるのです。
ククナは周りを見回しますが、誰もいません。
見えるのは、あの空のカニでした。
「お空のカニさん、お空のカニさん、ククナです。
ククナの声、聞こえますか?」
「ああ、よく聞こえるよ。
いつもいつも私を探していたんだってね。
ありがとう」
その声を聞いて、ククナはピョンピョン飛んで喜んでいました。
「お空のカニさん、また、会えませんか?」
「きっと、きっとまた会えるよ」
それを聞いたククナは、嬉しそうに家に帰りました。
「よかった、ククナ、喜んでた」
お兄ちゃんは樹木の上でニコニコしていました。
隣にはカモメがいました。
そう、あの声はお兄ちゃんだったのです。
「ありがとう、カモメさん」
カモメさんもニコニコしていました。
「お前たちが喜ぶなら、俺はいつだって力になるからな」
そして、互いにニコニコしていると、不思議な声が聞こえました。
「ククナのお兄さん、カモメさん、わたしのかわりに
ククナちゃんとお話してくれてありがとう」
二人がキョロキョロと周りを見回すと、星のカニが真上に浮かんでいました。
驚いていると、空のカニはこう言いました。
「ククナちゃんが、いつもわたしを探しているのを見ていました。
でもククナちゃんとわたしはあまりにも離れていて、
お話するのが難しかったんです。
お兄ちゃん、わたしの言いたいことを言ってくれてありがとう。
また会う日まで、さようなら」
そう言うと、空のカニの声は聞こえなくなりました。
お兄ちゃんとカモメは互いに顔を見合わせると、
ニコリと笑って家に帰りました。