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第三十一章 神への挑戦

正直、神様なんてものに会ってどうするのかなんて考えていない。

傷も完璧に癒えてはいないがレジェンダと蕾斗の魔力を注がれなんとか動ける。

そんな状態で会ったところで殺られてしまうのがオチだろう。

でも何故か行かなければならない気がしていた。

神殿を抜けると一本道があり、その先に幅も高さもかなり大きい階段がある。そして階段を昇った先にはとんでもなく大きい扉がある。

周りに壁があるわけでもないがただそこに扉が存在する。


「なんだよこれ………」


羽竜が驚くのも無理は無い。


「レジェンダ、これって……何?」


あかねも気になってしょうがないようだ。


「神界へ続く扉だ。」


答えたのはレジェンダではなかった。


「「ヴァルゼ・アーク!!!」」


羽竜、蕾斗、あかねが同時に声を上げる。


「待たせやがって。途中でくたばったかと思ったじゃないか。」


「なんだとっ!!けっ!次はあんたが相手してくれるのか!?こっちにはエアナイトもいるんだからな!」


「ちょ……羽竜君!」


あかねがあたふたあたふたとする。


「ほう。エアナイトとは。懐かしいではないか、なあレジェンダよ。」


ヴァルゼ・アークが何を言ってるのか三人にはわからない。

何が懐かしいのか?


「ヴァルゼ・アーク、余計な詮索はしないでもらいたい。」


何かを隠したいのか口止めをする。


「フフ……まあいいだろう。懐かしいついでにレジェンダ、お前にプレゼントだ。」


そう言って扉の脇の大きな柱の影から紐を引っ張りそのままレジェンダの足元に何かを投げる。


「ぎょえっ!!!」


足元に転がる何かが奇妙な声を出す。


「!!!!…………お前………リスティか!!?」


大分歳はとっているが見覚えがあった。

忘れるわけもない。レジェンダと共にオノリウスの元で修行していた男だ。

最後にはトランスミグレーションを奪おうと目論み崖から落ちて死んだと思っていた。


「はっ!久しぶりだな、ジョルジュ!貴様の事は聞いてはいたが、肉体を失ってまでオノリウスの言い付けを守っているとは!めでたい奴だ!」


す巻き状態の格好でレジェンダを罵る。


「ジョルジュ?それって………」


「………私の本当の名だ。とうに捨てた名だが。」


あかねの質問にぎこちなく答える。


「うろちょろと目障りだから捕まえてやったんだが……うるさくて敵わん。昔からこんなんだったのか?」


ほとほと疲れた顔でやれやれといった仕種をする。


「こんなジジイがオノリウスの?でもそしたらこいつ……千年は生きてる事になるのか?」


「ジジイとはなんだ!!このクソガキ!!」


羽竜に言われてムキになるところがリスティの性格を表している。


「天界にいる限りは歳をとるのも地上から比べれば遅いだろうし、ミカエル辺りに怪しげな魔法でもかけられたんだろう。」


ヴァルゼ・アークが淡々と説明する。


「どうする?レジェンダ………友達なんでしょ?」


「友達なんかではない。裏切り者め……生き恥を晒すか!」


「あっ!」


蕾斗に言われて腹が立ったわけではない。ただ怒りを隠せないレジェンダは羽竜の手からトランスミグレーションを取り上げ、リスティにその刃を向ける。


「ひっ……ひいぃぃ……!」


脅えるリスティに一気にトランスミグレーションを突き刺す。


キイィィィン!!


トランスミグレーションが宙に舞い羽竜の足元に刺さる。


「ダメよ……友達は大切にしなきゃ。」


羽竜達の後ろから黒い鎧を纏った女達が現れた。


「来たか、ルシファー、シュミハザ。」


「遅くなりました。ヴァルゼ・アーク様。」


「げっ……ですます女!!」


トランスミグレーションを飛ばしたのはシュミハザのロストソウルのようだ。

遅くなった事をルシファーが詫びる。

羽竜といえば苦手なシュミハザが現れたので露骨に嫌な顔をする。


「ですます女?あんたに言われたくないです。単純バカ!」


「た…単純バカ!?テメェ!!言わせておけば!!」


「何よ、やる気?」


「上等だ!ツンデレですます女!!」


「羽竜君、ツンデレってけなす言葉じゃないよ……」


「何?そうなのか?早く言えよ蕾斗!」


蕾斗とコソコソ話していると、肩をちょんちょんとつっつかれた。


「なんだよ………」


「仲いいね!あの娘と……」


振り向いたらあかねが満面の笑みを浮かべているが、かなりひきつっている。


「は、羽竜君…謝ったほうがいいよ……」


「な、なんで俺が…!」


羽竜も蕾斗もあかねから殺気が漂っているのを感じて顔を合わせられない。

二人でなんだかんだとやってる間にあかねがシュミハザに話かける。


「ツンデレさん……一回会ってるわよね?ずっと前に……」


「だから?」


稲妻が二人の間に落ちる………ような雰囲気だ。


「まだ子供じゃない。羽竜君趣味悪いなあ。」


そう言ってシュミハザの胸を見る。

鎧で大きさまではわかるはずないのだが、女の勘だろうか?あかねにはわかってしまう。あまり豊満でない事が。


「な、胸くらいちゃんと人並みにありますです!」


「まだ何も言ってませんけど?」


こんな意地悪なあかねは羽竜も蕾斗も見たことがない。


「目黒羽竜!この女なんとかしなさい!」


「俺に振るなよ!」


もう何がなんだかわからない。


「シュミハザ、総帥の前よ。」


ルシファーに言われて我に返る。


「も…申し訳ありません。ヴァルゼ・アーク様。」


「ハハハ。かまわん。こんな時に痴話喧嘩出来るほど余裕があるなんて、頼もしい限りだ。」


「痴話喧嘩なんかじゃありません!!私はヴァルゼ・アーク様だけです!!」


ヴァルゼ・アーク本人はからかっただけなのだが、シュミハザは至って真剣に答える。


「騒がしいわね、ティアマトでもいるの?」


割って入って来たのはベルゼブブだ。


「あら、はじめまして。目黒羽竜君に藤木蕾斗君、そして吉澤あかねちゃん。噂は色々聞いてるわ。」


「誰だよあんた?」


話を反らすいいタイミングだとばかりに羽竜が初めて会うレリウーリアの一人に問う。


「ごめんなさい、私とした事が自己紹介がまだだったわね。私はベルゼブブの継承者、神藤愛子。社会科教師をしてます。よろしくね!」


とても綺麗な女性にウインクされ顔を赤く染める。

もちろん隣から拳が飛んで来た。


「まあ……!」


ベルゼブブが目を丸くして羽竜を見る。


「任務ご苦労。」


「はっ!勿体ないお言葉……」


ヴァルゼ・アークに敬意を払う。


「遅くなりました!」


また誰か階段を昇って来た。


「司令……無事でしたか。」


ベルゼブブが司令と呼ぶ者。ジャッジメンテスだ。


「ええ。天使ごときにやられる私じゃないわ。」


「レジェンダ、誰?あの人。なんだか他のレリウーリアの人とは違うみたいだけど………」


蕾斗の囁きが聞こえたのかジャッジメンテスが蕾斗の前に来る。


「私はね、悪魔の力をフルに使えるのよ。だからベルゼブブ達とは違って百パーセント悪魔になれるのよ。藤木蕾斗君。」


「その声……!」


羽竜が聞き覚えのある声に気付く。


「そうよ。公園で一度会ってるわね。覚えてる?」


「確か……」


「仲矢由利よ。目黒羽竜君。」


あまりに見慣れない姿に動揺してしまう。


「どうやらエルハザード軍は全滅出来たようだな……」


「はい。これでヴァルゼ・アーク様を邪魔する者は鼠一匹おりません。」


ジャッジメンテスもヴァルゼ・アークに敬意を払い、司令官としての役目を果たす。


「まさか……ミカエル様まで……?」


リスティがす巻きにされたまんまで呟くが誰も彼に反応しない。レジェンダさえも。


「ジャッジメンテス、予定通り準備をしておけ。俺も予定通り事を済ませてくる。」


「かしこまりました。レリウーリア一同準備に入ります。」


「ヴァルゼ・アーク様!私も連れていって下さい!総帥お一人では危険です!」


「シュミハザ、お前もここに残りジャッジメンテス達の手伝いをしろ。」


「……………はい。」


本当は駄々をこねたい気持ちだったが、ヴァルゼ・アークの目がいつもと違っていたのでぐっと堪える。


「さて羽竜、お前も来るのだろう?」


「え?来るって………どこに?」


「決まってるじゃないか、神様のところさ。」


もとより神様のところへ行くつもりでいたが、あえて聞かれるとなかなか頷けない。


「ヴァルゼ・アーク、羽竜達にはこれ以上は無理だ。お前が何をしたいのかは知らぬが、行くのなら一人で行け。」


レジェンダが羽竜達を擁護する。


「それでいいのか?羽竜。」


少し考える。好奇心もあった。戦士としての使命感など正直好奇心に比べれば他愛もない。


「………行くよ。」


「羽竜!!」


「羽竜君!!」


レジェンダとあかねは羽竜が神の元へ行くのは反対らしい。


「羽竜君が行くなら僕も行くよ。」


「蕾斗……!」


心強かった。羽竜にもう迷いはなかった。


「………………蕾斗君も行くなら私も……行く。」


あかねが小さく手を上げる。


「お前達わかってるのか?相手は神だぞ?生きては帰れないかもしれんのだぞ?」


「レジェンダ、元はお前が俺達を巻き込んだんじゃないか。そしてトランスミグレーションに選ばれたんだ。ここで死ぬくらいならそれだけだったって事さ。」


力いっぱい拳を握ってレジェンダに突き出す。


「羽竜………」


「心配すんなよ!ヴァルゼ・アークもいるしさ!」


「…………後悔するなよ?蕾斗、あかね、お前達もだ。」


「大丈夫だよ!」


蕾斗が軽くウインクする。


「みんな一緒なら怖くないよ。」


あかねも笑顔でレジェンダに応える。


「決まりだな。で、そいつはどうするんだ?」


ヴァルゼ・アークがリスティを指差す。


「たたたたた頼む!後生だ、殺さんでくれ!!」


レジェンダに懇願する。


「……貴様など殺す価値もない。」


「どっちみち天界ここでしか生きられないんでしょ?だったらその辺に吊しておいたら?」


ルシファーが面白おかしく言う。


「それじゃリスティの始末はルシファー、お前に任せよう。」


「了解です!あっ!それとフラグメントどうしましょう?」


ルシファーの手にミカエルから奪ったフラグメントがある。


「持っていろ。今は必要ない。」


「わかりました。」


「羽竜、蕾斗、あかね、そしてレジェンダ、もちろんお前も来るのだろう?保護者として。」


レジェンダが黙って頷く。


「なら気が変わらぬうちに行こう。神界へ。」


その場にいる全員に緊張が走る。

ヴァルゼ・アークが扉の前に立ち、両手を翳す。

そして聞き慣れない言葉で何か呟いている。

すると、ゆっくりと扉が開く。

同時にまばゆい光が差し込んでくる。


「覚悟はいいな?」


ヴァルゼ・アークが羽竜達に念を押す。

羽竜達は黙って頷く。


「ヴァルゼ・アーク様、お気を付けて。」


ジャッジメンテスが胸に手を当て敬礼する。


「目黒羽竜君、頑張って!」


ベルゼブブが羽竜にエールを贈る。


「藤木蕾斗君も吉澤あかねちゃんも死なないでね!」


ルシファーも笑顔で見送る。


「レジェンダ……ヴァルゼ・アーク様を頼みましたです。」


シュミハザが何故かレジェンダにヴァルゼ・アークの事を頼む。

それを見てヴァルゼ・アークが微笑む。

そして四人に告げる。


「さあ、神への挑戦だ……」


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