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第二十七章 戦え!若き戦士達!

 サマエルとの戦いを終え、羽竜達は戦う決意をしていた。

トランスミグレーションの能力を解放し、自身の成長を感じ取った羽竜。

エアナイトという能力を秘めていた事がわかったあかね。

そして魔導はまだ使いこなせていないものの、簡単な魔法なら使える蕾斗。

三人を導くレジェンダ。

四人は当初の約束を暗黙で反古にする。

今、この戦いに勝ち生き残る事が出来なければ、いずれ天使か悪魔にやられてしまう。その想いが戦士としての責任を果たそうとしていた。


「それにしても吉澤までエアナイトなんて能力持ってたなんて驚いたな。」


後からその事を聞いた羽竜は興味津々になっている。


「わ、私知らないよ!レジェンダが勝手に言ってるだけでしょ!?」


強く否定するがあまり効果はないようだ。


「吉澤さん無理だよ、認めなよ。」


軽く言う蕾斗がちょっと憎たらしい。

羽竜も蕾斗もその辺は男の子なのだ。『強さ』というものに関心がある。まして常人にはない能力なら尚更。


「でも、エアナイトって空気とか音とか使うんだろ?どうやって使うんだ?」


「知るわけないじゃない!」


あかねのキレっぷりに羽竜が慌てる。


「今すぐ使えと言っても無理だろう。それでも空気の流れから少し先の未来を見るのだから十分戦力になる。」


「なんだよレジェンダ、戦う事に反対だったじゃないか。」


足を止めて羽竜がレジェンダを皮肉る。


「…………………。」


「あ〜まただんまりする〜。」


自分の話題を反らさせようとあかねが羽竜に乗っかる。


「まあまあお二人さん、レジェンダにも何か思うところがあってのことだろうし、いいんじゃない?」


ニコニコと羽竜とあかねを蕾斗がたしなめる。


「羽竜、蕾斗、あかね、お前達が持つ能力は何の為に存在し何故お前達に宿るのかはわからん。だが戦いを続けていけば必ず答えは出るだろう。お前達がそれを望むならな。」


重い言葉に三人が互いの顔を見て意志を確認する。

黙って頷く。


「俺達の目的は世界を守るって事でいいよな?魔導書は誰にも渡さない。そのためにはフラグメントを全部回収する。それでいいよな?」


羽竜が蕾斗とあかねに戦う理由を説明する。


「いいよ。僕はまだ簡単な魔法しか使えないけど、きっと魔導も使いこなしてみせる。異論はないよ。」


蕾斗は羽竜の意見に賛成する。


「ん〜〜正直私は自分の能力なんてよくわからないけど、羽竜君と蕾斗君のお手伝いが出来るのなら精一杯努力する。私も異論はないよ。」


「そうと決まれば誓いも新たにチーム羽竜の結成だ!」


意気揚々と羽竜が声をあげる。


「なんでチーム『羽竜』なのさ!そんなネーミングは嫌だよ〜。」


「うるさい!蕾斗、お前は一番年下なんだから黙ってろ!」


「ぜ〜〜〜〜ったいやだ!」


羽竜と蕾斗がいつもの調子で漫才(?)を始めた。


−この状況で………たいした奴等だ……−


きっとレジェンダには頼もしく感じたに違いなかった。


「随分と余裕ですね。」


目の前に延びる階段の上から天使が一人降りてくる。


「サキエル………」


「久しいですね、レジェンダ。オノリウスの忘れ形見。もっともあの頃はまだ肉体もありましたけど。」


「皮肉を言えるようになったのでは少しは成長したか。」


「フ……魔導を使う者……」


階段を降りて来て蕾斗の前に立つ。


「エアナイト………」


そのままあかねを見る。


「そしてトランスミグレーションの使い手。」


流れる目が羽竜で止まる。


「実に魅力ある能力を身につけている。僕の研究に是非欲しいね。」


「研究……?」


蕾斗が不快な顔をする。あんまり褒められるような研究でない事が容易に想像出来たからだ。


「まあね。あんまり大きな声じゃ言えないけれど、神を越える研究をずっとしてるんだ。」


「神を………越える……?」


あかねもサキエルに嫌悪感を示す。彼の言う事にどこか含みを覚える。


「そう。君達が知らない魔法とか能力とか色々研究してるんだ。」


羽竜達に何か嫌な予感が走る。

そしてそれは的中してしまう。


「この前、人間の女の子に犠牲の柩って魔法をかけたんだ。」


「犠牲の……柩だって?」


羽竜が反応をする。

その反応の真意をサキエルは知らず使い続ける。


「本来は都合いいようにかけた者を操る魔法なんだよ。ところが中々上手くかからない魔法でね、そこでかけられた者が持つ欲を利用しようと考えられたんだけど結局失敗に終わった魔法。それをかけられた者は死ぬ事でしか助からない。ま、ほっといても数日で死んでしまうけど。その魔法をなんとか使いこなしてみたくて実験したんだけど………やっぱり失敗に終わったんだよね。」


あかねが震え出す。

蕾斗も普段のユルさが消え失せその表情に怒りを見せる。


「実験?それじゃその女はお前にとって玩具でしかなかったって言うのか?」


トランスミグレーションを握る手に力が入る。


「玩具?いやいや、モルモットにすらならなかったよ。」


淡々と口にするサキエル。

それを聞いて羽竜がサキエルに飛び掛かっていく。


「テメェだけは…………テメェだけは絶対許さねーッ!!」


トランスミグレーションでサキエルに切り掛かるがかわされてしまう。


「おっと、危ない危ない。」


「サキエルとか言ったな!テメェが犠牲の柩をかけた女はな、俺達の友人だ!」


「知ってたとも。」


「何!?」


「知ってたからこそフラグメントを奪うように命令出来たんですよ。まあ、ヴァルゼ・アーク達が出て来て街の被害を最小限に抑えたのは予定外でしたが。」


「見てたのか………?」


「彼女は恋人が欲しいと強く望んでいたんですよ、君達くらいの年齢の人間ならみんな思う事ですが。犠牲の柩はそういった心、即ち欲望を解放して従順な手下にするのですが………上手くいかないんですよね。」


羽竜の話よりも自分の研究論を語る事に夢中になっている。


「貴方の研究になんて興味ないわ!!」


怒りを抑えきれずあかねが叫ぶ。そして蕾斗も、


「人の心に付け込む魔法なんて、絶対許せない!!」


「吉澤………蕾斗………」


「ふふん。これはこれは友情とやらですか?いいでしょう、いつまでも話に興じてるわけにはいきませんしね。」


サキエルが降りて来た階段を途中まで昇り振り向く。


「君達をこのまま生かしておくわけにはいきません。」


そう言って両手を前に出す。


「おい……何か出てくるぞ……」


サキエルの手の平から黒い塊が現れ人型を成していく。

羽竜が警戒を促し戦闘体勢をとる。

現れた黒い塊はただ黒いだけの目も口もない人形のようだ。


「フフ……見せてもらいますよ、君達の実力。行け!アヌビス!ネフュテュス!」


アヌビスとネフュテュスは無言で襲い掛かってくる。


「羽竜君!あれは僕が相手するから羽竜君はサキエルを!」


「蕾斗………大丈夫なのか?」


「僕だってやれば出来るんだ!」


蕾斗が魔法を放ちアヌビスとネフュテュスに攻撃を開始する。


「早く!!」


「わかった!任せたぞ!」


アヌビスとネフュテュスを蕾斗に任せサキエルへ向かっていく。


「あかね!お前も戦うんだ!」


「え、ええ!?レジェンダ何言って……」


「私の言う通りにすればいい!」


「言う通りって……」


「今の蕾斗に使い魔二人はキツすぎる!それともこのまま見殺しにするか?」


あかねを挑発………というよりは脅しである。


「見殺しって…………わかりました!私もやります!」


半分自棄になって身をレジェンダに任す。


「よく言った。それでこそエアナイト。」


「んもう!!で、どうしたらいいの?」


「拳を握りイメージするのだ。」


「イメージ?」


「なんでもいい、攻撃できる何かをイメージしろ。早く!」


向こう側では蕾斗が悪戦苦闘している。戸惑いが抜けきれずにいたが、さっき戦うと三人で誓った。

その事が頭を過ぎりあかねを奮い立たせる。


「イメージ………………」


目を閉じて攻撃出来るような何かをぼんやりと浮かべる。

すると、握った拳が光り始める。


「わぁ…………レジェンダ、これ………」


「どんな攻撃かはやってみなければわからないか………」


どこか楽しんでる気がするのは気のせいだろうか?

あかねに何かを期待しているようにも思える。


「もうどうにでもなって!」


ぎこちないフォームでパンチを真似る。

光球があかねのフォームからは想像出来ないスピードで飛んでいく。

楕円にまで変形するほど勢いをつけ、それは見事ネフュテュスに命中する。


「!!!」


避ける事もままならなずそのまま壁に叩きつけられる。


「よ……吉澤……さん……?」


一瞬の出来事にア然としてしまったが光球が飛んで来た法を見てあかねの仕業だと気付く。


「す……………すごい………」


自ら放った攻撃の威力にただただ驚くばかり。


「こいつは想像以上だな………」


どうやらレジェンダにも意外だったらしく言葉を失う。


「吉澤…………」


サキエルと死闘を繰り広げる羽竜もそれを目にして攻撃を止める。


「エアナイト………まあ魔法使いみたいなものですけどね。空気と音に限定される魔法使い………興味をそそります。」


サキエルがエアナイトのあかねに興味を抱く。


「興味をそそるだって?テメーなんかに吉澤を渡すわけねーだろ!」


「ハハハ……それは嫉妬かい?」


「嫉妬!?な……何言ってんだ!バカじゃねーのか!」


わかりやすい反応を示す羽竜にサキエルが苦笑する。


「若いっていいねぇ………特に人間は…。」


「お前だって若いじゃねーか。くだらねー事言ってんじゃねーよ!」


「フフ。僕達天使は寿命が長いからね、見た目は君達と変わらなくても年齢は三千歳はいってるよ。」


「ほう……三千歳になるまで研究してきても神様を超えられないんじゃあ才能ないんだな、お前。」


「言ったな!!」


皮肉の一つでも言ってやる気を失せさせるつもりが逆鱗に触れたらしく表情一変鬼の如く魔法を放ってくる。


「おわっ!!あぶねーだろ!!」


羽竜の頭を魔法がかすめる。


「才能が無いだと!!!!!お前に言われる筋合いはない!!!!」


「なんだよ、アイツ………」


豹変したサキエルに少し驚いたものの気を取り直して羽竜独特の頭の脇にトランスミグレーションを構える。

 今、羽竜、蕾斗、あかねの三人が戦士として戦いに目覚めた。


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