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第二十三章 ある天使の野望

「興味ないよ。」


下級天使の一人がミカエルがエルハザード軍隊長に選ばれた事をルシフェルに報告していた。

テンション高く報告しに来たもののルシフェルの呆気ない返事に一気に冷めてしまう。


「いや……でも…ルシフェル様の兄君ではありませんか……!こんなおめでたい事を………」


「ミカエルはミカエル、俺は俺。あいつは権力思考だから……。」


草むらに寝そべり素っ気ない二度目の返事をする。


「はあ………。」


双子でこうも性格が違うものだろうか?

 権力思考であるという言葉がミカエルの性格を表している。

 逆にルシフェルは自由奔放な性格をしている。何事にも囚われない……一匹狼とでも言ったらいいのだろうか?他人にも関心がない。

しかしながらミカエル、ルシフェルは知力、武術に長けていて天界では二人の右に出る天使はいない。


「今夜、就任パーティーが神殿で催されるみたいですが………」


「行かないよ。」


「ですよね………」


なんとも冷たい態度にどう接したらいいかわからなくなる。


「わかりました。そのように上には伝えておきます。」


ルシフェルの背中に一礼して神殿に引き返す。


「あいつも物好きだな…………軍隊なんぞ規則、規則で窮屈だと思うが………ま、あいつの人生だ俺には関係ないけど。」


穏やかな風が流れルシフェルを眠りへと誘った。













神殿はミカエルのエルハザード軍隊長就任式典でいつもより賑わいを見せていた。

かねてから就任するのはミカエルかルシフェルであろうと噂が流れていたし、周りからすれば就任まで少し期間が長いのではとヤキモキした声もあったほどだ。

聖天使ミカエルと聖天使ルシフェル、天界のスーパースター的存在でありまた、神からの信頼も一際厚い。

 ミカエルは厳格な性格で曲がった事が大嫌い。何事にも研究熱心な姿勢は、彼を神に変わる存在と言われるまでにした。

ルシフェルはというと、分け隔てなく優しさを与える事が出来た。故に他人の失敗を無条件で許せる器量を持っている。

しかし、この二人の正反対の性格は彼等を慕う天使達に派閥を作るきっかけを与えてしまう。

厳しいだけで他人を褒めもせず、ましてや何か失敗でもしようものなら容赦なく罰するミカエル。そんな彼の性格を上に立つ者には必要な厳しさだと軍的な考えの天使達は指示した。そしていずれは神になれる存在だとまで囁かれていた。

自由を愛し規則に縛られる事を極端に嫌うルシフェルを軽蔑する者もいたが、曲がった事はやはり大嫌いで、位を問わず公平に接する姿勢にこちらも神になるに相応しい存在だと囁かれていた。

ルシフェル自身は周りの噂等興味を持つ対象にはならない。

ただ、双子というだけで嫌でも比べられてしまう。

ルシフェルは気に留めなくともミカエルはそうはいかなかった。


「ミカエル様?」


声をかけられ後ろを向くと綺麗なドレスを着た女性がいた。


「これは失礼しました、アルヒエー様。少し考え事をしていたもので。」


「あら、このようなおめでたい席でどのような考え事を?」


「いえいえ、たいした事ではありません。さあ、それより一杯頂きましょう。」


儀礼的な挨拶を済ませ、人間界でいうところのウェイターからお酒の入ったグラスを二つ取りアルヒエーに渡してグラスを合わせる。


「そういえばルシフェル様はいらしてませんの?」


「ええ。あいつ……彼はこういった場を嫌いますので…」


「ご兄弟で全く正反対の性格ですのね。」


軽く微笑む笑顔がミカエルの心を捕える。


「ははは。よく言われます。」


この手の話題は正直飽き飽きしていた。

自分より位が上のアルヒエーだから話に乗ってはいるもののそうでなければ適当にあしらうところだ。


「知ってます?」


「はい?」


いきなり知ってるかと聞かれて知ってますと答える者はいない。頭のいいミカエルとてそれだけで何を言いたいのかなどわかるわけがない。


「ルシフェル様………の評判。」


「え…ええ、知ってますとも。自由奔放を気取ってはいますが、周囲の者は天界の規則を無視するルシフェルに苛立ちを感じているとか。」


「ええ。でもそれはあくまで表向きの評判ですのよ。」


「……と言いますと?」


「あの何者にも屈しない姿を指示する者達もいますの。それもかなり……。今回エルハザード軍隊長にミカエル様が就任されましたけど、神々の間では大天使長にルシフェル様を推薦する声もあるとか…………まあ噂話に過ぎませんけど。」


「ルシフェルが………大天使長……?」


嫌な汗が流れる。ゆくゆく神の位を手に入れたいミカエルにとって大天使長の座は誰にも譲れない。それがよりによってルシフェルが神々の間で推薦されているという。

認めたくない。それだけが頭の中をよぎる。


「どうなされました?顔色が優れませんけど?」


「いや……大丈夫です。ところでアルヒエー様、その話……どこでお聞きに?」


あまりに真剣なミカエルの顔に少々脅えてしまう。


「あ………いえ、この前メタトロン様のところにご用があって……その時に近衛兵が話してるのを聞いてしまいまして……。それが何か?」


アルヒエーは悪気があったわけでも、ミカエルのルシフェルに対する気持ちを知っていたわけでもない。

だからミカエルが何対してここまで真剣になっているのか理解出来ない。


「ルシフェルを…………大天使長に………?」


「ミカエル様?」


明らかに様子がおかしいミカエルに不安が募る。


「アルヒエー様、すいませんが気分が優れませんので失礼します。」


そう言い残し神殿を出ていく。


「ミカエル様!!!」


追い掛けようとするが神殿をひしめく天使達に邪魔をされミカエルを見失う。

消えていくミカエルの背中にアルヒエーは悪魔を見ていた……。


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