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第二十章 歴史の方程式

「あまり恐い目で睨まないでほしいなぁ〜。」


こいつの喋り方は千年経っても好きになれない。


「まさかあのシュミハザがこんな可愛いお嬢ちゃんになって復活するとはね〜。」


シュミハザ……景子は普段から感情を表に出さない。ポーカーフェイスと言えば聞こえはいいが、ようはしかめっつらなのである。

だからいつも怒っているのではと周りに気を使わせる。でも今日だけは本気でいらついていた。


「うるさい奴なのです。」


とにかくアラエルの口調がカンに障るらしい。


「おやおや、君はもうちょっとスマートな性格してたはずだけど……ベースが変われば性格も変わるみたいだねぇ。」


「余計なお世話なのです。」


さっさと済ませたいのだが、そうは問屋が下ろさない。

対峙してるのはアラエル。しかしシュミハザとアラエルの周りを下級天使がざっと五十人はいる。

必殺技ならこの程度の数は問題ない。ただ必殺技は多くの魔力、精神力、体力を使う。残ったアラエルに殺られてしまうのは目に見えている。


「このままじゃあラチが開かないしお前等、シュミハザを殺ってしまえ。」


アラエルが痺れを切らして部下に攻撃を指示した。

勇ましく銀の鎧を纏った天使達が一斉に攻撃を開始する。


「ふん……」


鼻を鳴らし向かってくる天使達にロストソウルを仕掛ける。

円を描きながら宙を駆け抜ける。デスティニーチェーンが右へ左へ軌道を変えながら天使達を打ち落とす。


「いい武器だねぇ………ふふ、君達悪魔の持つロストソウルは実に多種多様で感心するよ。そういえばベルフェゴールの青い刃のロストソウルも美しくてよかったよ。もっとも具現化されないと奪いようがないから諦めたけど。」


「まさか………お前が千明さんを……?」


「千明?そうか人としての名前は千明というんだ…。綺麗な肌してるよね、彼女。人質として使おうと思ったんだけど……あんまり意味なかったね。殺しておけばよかったよ。」


見下すようにシュミハザを見ている。

シュミハザの怒りは限界に来ていた。それはアラエルのシュミハザを見下す態度ではなく、大切な仲間をさらい、侮辱された事に限界が来た。


「………?どうしたんだい?震えて?」


「そう……お前が………口先だけの馬鹿天使が生意気なのです。」


「なに……?!」


俯いていた視線をアラエルに向ける。

力強い瞳が赤く光る。


「………!!!」


アラエルの背中を冷たい汗が流れる。

千年前もシュミハザと戦った時、この瞳に臆した。それを思い出した。


「お前達天使はどいつもこいつも馬鹿ばっかなのです。ミカエルにいいように使われて何も知らずに従ってるだけなのです。」


「……………?」


「ミカエルは大天使長になるためにお前達天使と神までも欺いた大馬鹿野郎なのです。呆れ返ってしまうのです。」


「な、何の事だ?」


「……聖書なんてものを人間に書かせてまで事実を隠すなんて……大したタマなのです。」


アラエルは困惑していた。シュミハザが何を言ってるのかわからない。

恐れを抱きながらも聴き入ってしまう。


「ミカエル様が僕達を……神さえ欺いているだと…?!」


「そうなのです。でも死んでいくお前には関係ないのです。」


そう言うとシュミハザがデスティニーチェーンを構えた。

下級天使達はシュミハザの言葉にざわついている。

アラエルもシュミハザの話に衝撃を隠せない。

これを好機と捉え、一気に下級天使を畳み掛ける。

まるで生きているように複雑な動きさえものともせず下級天使達を撃墜していく。


「ア、アラエル様っ!!!」


援護を求める部下の声も虚しくロストソウルに消されてしまう。


もはやこれまでと残りの下級天使達が逃走していく。


「お、おいっ!お前達!!どこにいくんだ!!」


我に還り部下を叱咤するが、若干十四歳の少女への恐怖が勝り部下達は一目散に逃げて行った。


「……情けないのです。お前は降参しても無駄だから諦めなのです。総帥から確実に仕留めてくるよう言われてるのです。」


「くっ…………小娘がっ……!!」


小娘と言えど悪魔。どんなにかわいらしい姿をしていても持っている力は悪魔のそれだ。


「終わりにするのです。」


「こしゃくなっ!!」


シュミハザに恐怖をしながらもイグジストで攻撃を開始する。


「デッドエンドネメシス!!」


シュミハザの必殺技がアラエルを傷つけていく。


「おおおおっ!!!!」


肉体が悲鳴をあげているがシュミハザに向かってイグジストで攻撃する。


「甘いのですっ!!」


イグジストがデッドエンドネメシスの衝撃に耐え切れず粉々になっていく。


「ば………馬鹿な………」


イグジストが塵になる事に対する言葉ではない。自らの力が遠く及ばない事に対する言葉だった。


「ぐはあっ………!!!」


円錐の柱に叩きつけられる。柱に亀裂が入る。


「こんな……こんな小娘に…………消されて……しまうのか……」


つかつかとシュミハザが歩いて来る。



「おのれ……シュミハザ…………」


はいつくばりながら上に目をやればシュミハザが見下ろしている。


「お前達は自惚れが強すぎなのす。」


「……………くそっ………。」


「さっさと死ぬといいのです。アラエル……」


デスティニーチェーンがシュミハザの言葉に反応する。


「ま、待て………。教えてくれないか……ミカエル様は一体何を隠しているんだ……?」


今だ心に引っ掛かる疑問の解をシュミハザに求める。


「…………冥土にすら行けないあんたの為に教えてあげるのです。ルシファー様が神に反乱を企てたとされた事実は本当は嘘なのです。」


「な………何……?」


聖書によれば、天使ルシフェルは自らの傲慢から神に取って代わろうと反乱を起こしたとされている。もちろんその結果は天界を追放され堕天使となり、名をルシフェルからルシファーに変え魔王となったという。

しかし、シュミハザはそれは事実ではないと言う。


「開いた口が塞がらないみたいですね。」


「だ、だとしたらルシファーは何故戦いを挑んだんだ………?彼は……神になろうとしたんじゃないのか?」


「残念だけどお喋りはここまででなのです。歴史の方程式は生まれ変わってから解いて下さい。」


デスティニーチェーンがアラエルの身体に絡みつき、持ち上げる。


「ロストソウルで消滅した魂は生まれ変われないのです。」


デスティニーチェーンがアラエルを貫く。


「!!!!!」


アラエルが何かを叫んだが、声にならずそのまま消えていった。


「バーカ。」


アラエルの存在が消えた事を確認し、シュミハザは休息を取る間もなく仲間の元へと向かった。



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