男に婚約者(♂)を盗られた残念令嬢ですが、なにか?〜慰謝料も違約金もいりません!私の願いはたった一つです!〜
⚠主人公が腐女子です!苦手な方は戻ってください!!
勢いで書いたコメディです!
全力で悪ふざけしてる投げっぱなしジャーマンです!
「この場を借りて宣言させてもらおう!僕――ウケリス・ビエールは、真実の愛に目覚めてしまった!!」
(おっ、聞いたことあるやつ〜!最近流行ってる婚約破棄じゃん?)
なんとなく耳を傾けつつも、私の意識はお皿に乗ったローストビーフに完全に持っていかれている。
薄く切られた肉をそっと口に含む。
はぁ……外は香ばしいのに中は血も滴るような生感。それでいてじっくりと予熱で火が通っているから、生とは違った歯切れの良さ。
いいとこ取りの塩梅だわ。
その肉の濃厚な旨味を香り豊かなソースがさらに引き立てて。まさにマリアージュという言葉に相応しい逸品ね。
今まで食べていたローストビーフなんて、もう食べられなくなりそう。
父に甘え、従兄弟に強請り、五従兄弟のツテまで駆使してゲットした、超絶グルメで有名なウメーモン伯爵家で開催される夜会の招待状。
他人の惚れた腫れたなんて眺めてる暇はない。
まだまだ、味わってない至高のグルメが並んでいるのだから。
(端から端まで食べ尽くしちゃうわよ〜!)
私は腕まくり(袖はないけどね!)をして次の料理に突撃する。
「今日限りで君との婚約は破棄させてもらう!!」
海老のゼリー寄せ。
キラキラとシャンデリアの光を浴びて輝く黄金のゼリーに散りばめられた飾り切りの野菜と、くるんと丸まった海老の愛らしいフォルムがたまらない!
(やっぱり婚約破棄かぁ。誰だか知らないけど、適齢期で捨てられると面倒だよねぇ。がんばれ〜)
海老のはじけるような食感と独特の滋味をコンソメゼリーがねっとりと包み込む。
鼻を抜けるディルの爽やかな香りは、ともすれば重たくなりがちな後味を心地よく締める名脇役。
……うっとり。おもわず恍惚する。
「……おい!!おい!アリーシャ・ヌスマレーナ!!君だ!君のことなんだ!頼む聞いてくれ!!」
(アリーシャさんかぁ〜。偶然、私と同じ名前……って私の名前だ!?)
現実にかえって、声の主を見る。
あっ、叫んでるの私の婚約者だわ!今日も顔だけはいい!最高!
キラキラの金髪と大きなアメジストの瞳が愛らしいわ!紅の燕尾服もよくお似合いよ!性格は最悪だけど!
――じゃなくて。
えっ?私婚約破棄されるの!?
まって。多分、今、私の口にはローストビーフのソースがついている。
恥ずかしい。
とりあえず扇で顔を隠してこっそり拭った。
(どうしよう。顔以外に一切未練はないけど、18歳で傷物は本気で困る)
というか、今この瞬間、食事を邪魔されるのが一番困る。
3か月間ゴネ倒した努力が水の泡じゃない!
――けど。まって?
(よく考えたら……これ、いいネタじゃない?)
テッパン中のテッパン、婚約破棄。
そこからの圧倒的溺愛とざまぁ展開。
そんなハッピーな小説が世にじゃんじゃん出回っているけど、私はまだ手を出していないシチュエーションだわ。
(これは、売れっ子恋愛小説家として体当たり取材せざるを得ないわね!)
とはいっても、私の分野は『恋愛(男色専用)』なわけだけど。
うーん。そうね、とりあえず振られ役を主人公に当てはめてみよう。
主人公が愛した女性は、見知らぬ男と恋仲だった。
「それが、君の幸せなら……」涙をのんで身を引く受け君とそれを手籠めに、じゃない身体を使って慰めたい親友達。
陰で男たちが恋の鞘当を繰り広げる無意識ハーレムが繰り広げられる。
……ってところかしら?
無難だけど、手堅い内容ね。後は攻め様のスペックを――
「ニヤニヤするな!気味が悪い!」
ギク。
「おほほほ……なんのことですの?」
「どうせまた悪趣味な絵空事でも考えていたんだろう。これだから学のない奴は嫌いなんだ」
鼻で笑って肩をすくめるウケリス。
(あー、やっぱ顔以外は無理だわ。この男)
ドSは本の中だから楽しめるの。現実ではノーサンキューだわ!
私は頑張って溜め息を押し殺した。
――ああ、さようなら、フォアグラのテリーヌ。それから鹿肉のパイ包み焼き、野鴨のコンフィ、フォンダン・ショコラに塔のようなフルーツパルフェ。
扇をパチンと閉じて、テーブルに避難させていたゼリー寄せの残りを食べて切り替える。
さ、体当たり取材開始よ!モトを取らなきゃやってらんない。
私は、定番のピンク頭の甘ったるい美少女を探す。
さっさと私を階段から突き落としたり、ワインを引っ掛けたりしてちょうだい!
† ✽ † ✽ † ✽ †
ユリウス(仮)から滴り落ちる赤ワイン。それを頬から首元まで、ねっとりと舌で拭うヴォルフ(仮)様。
背筋に走る弱い電流にユリウスの口から声が出てしまい、おもわず白い手で塞ぐ。
男は笑いながらユリウスの手を剥がし、口元をべろりと舐め上げた。
† ✽ † ✽ † ✽ †
――善き哉。
と、キョロキョロしてもウケリスの周りを見てもそれらしき女はいない。
代わりに、奥から銀髪長身のビスク・ドールの様な超絶美形の紅い瞳の男が近づいてきて。
ド攻めのテンプレのような男は、ウケリスの腰に手を回して……んんっ?んんんっ???
「……あの。ウケリス様?婚約破棄の理由を伺っても?」
プリティフェイスな婚約者、ウケリス・ビエール子爵家次男は頬を薔薇色に染め、ちらりと銀髪の男を見上げた。
アッハイ。言わなくても大丈夫です。
すでに私の脳内ではリンゴンリンゴンと祝福の鐘が激しく鳴り響いております。
前言撤回。ウケリス様最高!
リアル男色――その当て馬役になれるなんて光栄だわ!!
攻め(断定)銀髪紅眼の美形が紫の燕尾服!金髪紫眼の美少年(受け・成人男性)に紅の燕尾服!!配色も完璧!わかってるじゃない!!
――はっ!そうだ、取材取材!
私は早速、涙をのみつつも二つ返事で了承しようと口を開き――しかし、鋭い声に言葉はかき消されてしまった。
「貴様!このような場でなにをしているのだ!!」
後頭部でひとつ結びにした黒髪が揺れ、濃紺のイブニングコートを着た、これまた顔の良い男が私の前に立ち塞がる。
(あ、当て馬、キターーーーーーーー!!!!)
俺が先に好きだったのに展開ですねわかります!いいよね!?親友の枠から出られない男!?推せるよね!!
「ウメーモン伯の夜会で無礼だと思わぬか!婚約破棄だけでも非道だと言うのに、淑女にこれ以上の恥をかかせるような輩は同性として許せん!」
同棲?同棲しているの!?
どっちと!?
黒髪の男が振り返り、私にハンカチを差し出した。
「レディ、泣かないでください。踏み躙られた心の傷はすぐには癒えないでしょう。しかし、あの男共の愚行は当人たちにかならず還ってくる」
安心させるように微笑む男。――あれ?
「ヌスマレーナ男爵家のお嬢さんだね。馬車を呼ぼう。家に帰ってゆっくり休むといい」
私の手をそっととり、出口にエスコートしようとする美形。
違う。そうじゃない。
自分の手を抜き取り、真実の愛で結ばれた男たちの前に立つ。
あっ見た目がすでに最高。
一億点。
「ウケリス様、そしてあなたは……」
「セーメリグだ。カゲサン辺境伯として西方ニシリノ地方の国境を司っている」
ギラリと鋭い刃のような瞳に睨まれる。ご褒美です。
辺境伯かぁ。だから体格が良いのね?ウケリスがすっぽりと収まるサイズ感……エロ、じゃなくて。
「私、この度の婚約破棄を承ります」
ざわりと夜会の空気がざわめく。
黒髪の男が苦々しげに眉をゆがめて窘める。
「ヌスマレーナ嬢。無理してはだめだ。貴族の婚約はただの約束にあらず。不当な扱いには毅然と応えねばいけないぞ」
「おっしゃる通りです。ウケリス様は我がヌスマレーナ男爵家に婿として入る予定だった方。当然、相応の違約金や慰謝料が発生します――でも」
私は、会場の中心で彼らの愛を叫ぶ!
「これは真実の愛です!体裁や権力に囚われたこの世界で、愛の種火を大切に守り育てた二人!……きっと、打ち明けるには勇気が必要だったでしょう。私はそのお気持ちに応えたい!」
たった数名、しかし力強い拍手が私達を包む。同志よ!後日、お茶会で語り合いましょう!!
「違約金も慰謝料もいりません!お父様は私が絶対に説得してみせます!だから!!」
「――だから、なんだ」
辺境伯が探るように問う。
私は扇をパサリと開いて恋人たちに向けた!
「蜜月の期間!私を、あなたたちの家の壁にして!!!!」
しょうもないお話にお付き合いいただきありがとうございました!!
続きを読んでくれる方がいたら連載にしても面白いかなぁ?
よろしければ、現在連載中(完結済・毎日投稿中!)もちらりとご覧ください!!
■鉄パイプ令嬢は逃走王子を尻バットする〜処刑直前に王冠を押し付けられたからハッタリだけで国を乗っ取りました〜
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