ヤンチャな太陽・・・後編
放課後の教室は夕陽に染まっていた。窓際に座る陽翔は、いつものように机に足をかけて笑っていたが、その横顔はどこか悲しさを映しているように見えた。
「陽翔、今日もにぎやかで、元気だったな」
そう声をかけたのは、クラスの友人圭介だった。陽翔は笑って肩をすぼめた。
「だって、静かだと、落ち着かないんだ、太陽は沈んでいられないんだ」
けれど、圭介はその笑顔の奥に微かな影を見ていた。
あの陽翔が時々ぽつんと黙り込む瞬間があることを知っていた。
その夜陽翔は里親の縁側に座っていた。
秋の風と空気が冷たく庭先の虫の声がなだらかに響く。
「喧嘩でもしたんかい?」
温かい声が背後から届いた。
里親の母美佐子だった。陽翔は首を振り、少し笑った。
「喧嘩なんてしてないさ、ちょっと考えごと」
美佐子は隣に座って空を見上げた。
「あなたのお父さんも、よくこんな風に空を見ていたわ」
陽翔の瞳が微かにうるんだ。それ以上何も聞けなかった。
続けて美佐子は言った。
「あなたを守るために本当に最後まで抱きしめていたのよ」
言葉は風のように静かに空気を染めた。
陽翔は目を逸らし、指先で縁側の木目をなぞった。
「知ってるよ・・・」
「あなたのせいじゃない、あなたがいたから、お父さんは最後まで笑えたのよ」
陽翔は何も言わなかった。頬をかすめる風に吹かれ微笑んだ。
「そっか、太陽は沈んでも、また昇る、だから僕は沈んでばかりいられないんだ、父さんが笑っていたみたいに、僕も笑っていたい・・・」
陽翔の肩に手を、美佐子は置いた。
その瞬間いつものヤンチャな少年ではなくまだ成長途中の一人の少年の姿だった。
翌日陽翔は、学校の校庭でサッカーボールを追いかけながら、大声で笑っていた。
「おっ、いっつも元気だな! 」
陽翔は空を指さし、
「うん、太陽はみんなを元気にするんだ」
その笑顔の奥に昨日縁側で見せたくもった表情はもう、すっかりなかった。
けれど圭介はほんの少しだけその陰影を重ねていた。だからこそ陽翔の笑い声は、大事な存在でいつもより、温かく感じた。
空は雲一つなく澄んでいて、父がそばで、笑顔を見守り、陽翔の背中を押しているようだった。




