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捨てられるべしもの以外、入るべからず  作者: 宮ノ上鬼人


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最後の夜

連載再開

東富士演習場、【時空の裂け目】前の監視基地内

202X年7月某日


小島を含む153人の元ニートたちが超法規的措置【赤紙】の第一陣で強制徴収されたが、そのうち2名は見せしめのために粛清。恐怖を植え付けられた残った151人は基地の宿舎へ移動した。


男女関係なく、2列に並ぶ二段ベッドは無造作に割り当たられた後、手錠と足枷が外された。


「はい、ろくでなしニートども、前に注目!!!」


まだ実感がわかない元ニートたちを煽るように女性の声が頭に響いた。


全員は宿舎の入り口辺りに視線を向けた。


「あたし、お前たちろくでなしのゴミニートどもを鍛える任務を任されたウエダ臨時2等陸曹だ!!元死刑囚、容赦しないので死ぬ気でがんばってもらわないと・・・あたしが殺すッ!!」


宿舎入口の前に立っていたのは以前どこかで見たよう顔をした筋肉質のアラフォー女性で、左手に手袋をはめていた。


一人の50代で100キロ超えの肥満体の男性ニートが彼女に突進した。


「帰らせろ!!!ゲームが残ってんだ!!!」


ウエダ2等陸曹がニコッと笑い、突進してきたニートを真正面から左手でその顔を掴んだ。


「元気がいいのは大変よろしいッ!!」


「あああ・・・痛ええ・・・やめろ・・・」


「お前はあたしに突進してきたわ・・・死ぬ覚悟ができているのだろうなッ」


「やめろ・・・このアマ・・・ああああああああ!」


ニートの顔が握力につぶされて、目玉が飛び出た。

男は床に崩れ落ち、体が痙攣していた。


ウエダ2等陸曹は最新型の拳銃で男の胸を撃ち、とどめを刺した。


「抵抗するろくでなしはまだいる?」


全員はとっさに頭を横振った。


「あたしの左手は義手だよ・・・最新科学の結晶と言っていいわ、元々人間相手ではなく、異世界の化け物、特に対オークやオーガ専用だわ」


ニート全員は彼女を恐怖の目で見つめていた。


「今夜はこの世とお別れと思ってていいわ・・・明日の05:00に点呼だわ、自分たちの二段ベッドの前に気をづけのままで立ちなさい・・・わかったかッ!!」


「はい!!!」


全員が恐怖に蝕まれながら同時期に返答した。


「制服と靴は備え付けのキャビネットにあるわ、サイズは気にしないで、自動的にお前たちろくでなしの体にフィットするように作られているわ」


全員は頷いた。


「返事は?」


「はい!!!!」


「やはりお前たちはろくでなしだわ・・・はい!!じゃないわ・・・はい、臨時2等陸曹殿だッ!!」


「はい!!臨時2等陸曹殿!!」


「あたしはこれから1か月、お前たちろくでなしを毛の生えた程度のゴミに育て上げる親であり、尊敬すると同時、恐怖の存在になる・・・あたしの言うことだけ聞いて、訓練を生き延びろ・・・くじけそうになったら、死ね、ダメだと思ったら、死ね、逃げようと考えたら、死ね、逃げ出そうなんて無駄だ、死ねッ!!」


「はい!!臨時2等陸曹殿!!」


「最後で唯一の選別だ・・・今夜だけはこの厳重に監視されている宿舎内で自由行動が許されるわ・・・怖いと思った臆病者は自殺しろ!!、セックスしたい奴はセックスしろ!!、喧嘩した奴が喧嘩しろ!!・・・明日の朝、生き残ったろくでなしだけ・・・地獄へ入門するわッ・・・わかったかッ!!」


「はい!!臨時2等陸曹殿!!」


「それでは解散!!!ッ」


ウエダ臨時2等陸曹を含む自衛隊員は宿舎から出た。


小島はまだ信じられないという気持ちだった。あまりにも突拍子過ぎて、あまりにも非現実的過ぎて、実感が湧かなかった。有り得ないようなシチュエーション、核反対で平和憲法を持っている民主主義国家が絶対とってはいけな選択肢に思えた。


「ねえ・・・君」


突然、後ろから声をかけられ、小島は一瞬怯んだ。


「ああ・・はい」


同年代のガリガリといっていいほどの細身の茶髪女性が立っていた。


「こんなの有り得ないよね・・・」


「ああ・・確かに有り得ない」


「これはなんかのドッキリなのかな?」


「違うと思うな・・・殺された連中は嘘に見えなかった」


「そうだよね・・・ゲームっぽいね」


「確かに」


「あたし、村上マリエ、会社になじめず、5年引きこもりニートでピチピチの27歳」


「小島純一、同じく社会不適合者、28歳」


「小島君・・・セックスしない?」


小島は唐突に言われて、頷くことしかできなかった。


「同じ二段ベッドが割り当てられてるみたいだし・・よろしくね!!」


小島は二段ベッドの前にあったキャビネットを見た、確かにローマ字で【KOJIMA・J/MURAKAMI・M】と貼ってあった。


マリエが小島の前にしゃがみ込み、彼の性器をしゃぶり始めた。


宿舎であえぎ声、怒鳴り声、鳴き声に埋め尽くされ、最後の自由時間が過ぎていった。













続く・・・

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