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短編置場  作者: NANJAA
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05 カピバラのワキバラ

「凄い発見ですよ!先生!」


「うむ。長年の…わしの人生を(ささ)げた研究の成果じゃ」


 何十年も取り続けた膨大なデータより、驚くべき結果が導き出された。


【カピバラのマッサージと寿命の因果関係~マッサージ実施部位による寿命変化の集計およびα(アルファ)派と免疫細胞の数値変化に見る寿命との因果関係~】


 研究初期から、カピバラのマッサージにより寿命が延びるということについては、十分可能性が有ることは(わか)っていた。だが、十分なサンプルは揃っておらず、根拠に乏しい話しであった。


 1965年に日本で最初にカピバラの飼育が始まったとされるが、その五年程前から教授は世界中を飛び回り研究を始めていた。

 それからずっと、六十年以上に(わた)って膨大なデータを取り続けた。

 寿命との因果関係を調べる以上、データの数と同じ数の命を追いかけ、そして見送ってきた事になる。

 その六十年の想い、努力が、ついに形になるのだ。私が(たずさ)わらせてもらってからは十五年余り、先生についてきて本当に良かった。


 研究成果を要約すると、


・カピバラをマッサージすると、しない場合に比べ寿命が延びる。


 ここからが驚くべき結果で、マッサージ部位によって、その寿命変化に有意(ゆうい)な差が有ることが(わか)ったのだ。


・首筋…平均5ヶ月

(ほほ)…平均6ヶ月

・尻…平均8ヶ月

脇腹(わきばら)…平均3年2ヶ月


 脇腹をマッサージしたケースだけ、突出して効果が高い。

 これは、本当に大変な大発見だ。


ーーー


 今日は私の両親、兄妹(きょうだい)とその子供達、一族みんなで動物園に来ている。子供だけでも七人、総勢十五人の大所帯(おおじょたい)だ。

 いつも明るく元気な母は家族の中心で、孫たちもいつもお婆ちゃんとの時間を楽しみにしている。


 今日は、研究にご協力いただいている動物園の(はか)らいで、みんなでカピバラに触れ合える時間をたっぷり取っていただいた。

 もちろん、みんなでマッサージもたっぷりと、脇腹を中心に。


ーーー


 この旅行を決める前、決行すべきか否か、兄妹で何度も話し合った。

 その際、実家のカレンダーの余白に母の字で書いてあった。


【孫たちの制服姿見たいなぁ。それまでは頑張らなくちゃ】


 二年前、母の(がん)が見つかった。その時点でステージ4、余命は半年と言われていた。

 色んな治療を試み、医師たちも驚くほどの元気な姿を見せたが、今は肺にも転移し、もう年を越せるかどうか…という状態。旅行の相談をしたら医師の許可は得られたものの【最後の思い出に】との計らいであることは明らかだった。


 来年、一番上の孫二人が中学生になる。


 本当はもっとずっと、一番下の孫が結婚するまでも、その先もずっと元気でいて欲しい。でもせめて、上の子達だけでも…


ーーー


 先生の研究成果が発表されたら、こんな風にカピバラに触れることは難しくなるだろう。


 本当に、本当に、この研究に携われて良かった。


 まさか、カピバラの脇腹をマッサージするだけで、人間の寿命が三年も延びるなんて。


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