11 入社試験(640文字)
こちらも前作に引き続き、5秒後~に応募してた作品。
「おはよう! おめかしして七五三かい?」
「そうそう千歳飴もらいに! って、就職試験だよ! 行ってきまーす!」
八百屋のおばちゃんにからかわれた後も、威勢のいい魚屋のおっちゃん、ゆったりした時間が流れるタバコ屋の婆ちゃん、いつも犬のマロンと散歩してるマロンのおばちゃん、おまけにコロッケをくれる肉屋のおばちゃん、いつもの面々と挨拶を交わし駅前に向かう。
急に緊張が高まり一瞬立ち止まると、後ろから来た人にぶつかられた。
「ちっ、急に止まるなよ!」
「あ、すみません」
男は、結婚式かテレビでしか見たことないような、真っ白なスーツで、足早に先を歩いていった。
すると、少し先でまた男が誰かにぶつかった。
ぶつかられた老人は歩道脇の植え込みに尻餅をつくように倒れ込んだが、男は構わず行ってしまった。
◆◆◆
起き上がれない様子のお爺さん。
すぐに駆け寄り助け起こすと何度もお礼を言われた。
当然のことをしただけで、あの白い奴がおかしい。
筆記試験が行われる部屋に入って驚いた。
あの白い奴が席に着いているではないか。
『あんな奴には負けたくないな。いや、それより一緒に働く事になったら最悪だな』
そう思いながら筆記試験を終え、最後は面接。
あまり大きな会社では無いので、五人全員まとめて面接となり、奴の隣となった。
驚いたことに、奴の受け答えは素晴らしかった。
実は誠実な好青年かと騙されそうになるほどに。
そして、少し遅れていた社長が到着。
社長の顔を見て思わず声が出てしまった。
「マロンのおばちゃん?!」




