両親からのお祝い
すみません。少し短めです。
香織との幸せな時間を過ごしたあと、俺は自宅に帰ってきた。
「ただいま」
「おかえりなさい。もう少し時間あるから、お風呂入っちゃいなさい」
「わかった」
母さんに促されるまま、お風呂に入ってゆっくりして、しっかり髪を乾かし、スキンケアをして、リビングに戻る。
「おかえり。誕生日おめでとう」
「ありがとう。父さんも、おかえり」
リビングに戻ると、父さんが帰ってきており、一足先にテーブルに着いていた。
「ごはんごはーん」
美咲もテーブルにやってきて、晩御飯となる。
「明日、お出かけでも美味しいもの食べるでしょうから、今年は少し控えめよ。ごめんなさいね」
母さんはそういうものの、いつもより豪華で、俺の好きな海鮮類中心の、手巻き寿司だ。
「そうなのか。美味しそうだし気づかなかった」
「あら、いらないこと言ったかしら」
それぞれいただきますをして、話し始める。
海苔を手に取って、酢飯と具材を乗せて、巻いて食べる。
「うん、美味い」
「よかったわ〜」
海鮮系の他にも、納豆やキムチなども巻いては食べ、巻いては食べて、あっという間に完食した。
食べ終わってからしばらく、ゆったりテレビを見たり、話したりして過ごした後、母さんがケーキを持ってくる。
「今年のケーキはショコラにしたわよ」
「美味しそうだね」
「それじゃあ、せっかくのケーキだからね」
我が家の誕生日恒例の、ハッピーバースデーの曲を3人が声を合わせて歌ってくれる。何度経験しても慣れないというか、照れくさい。
さすがに年齢分ロウソクを刺すと、ケーキが燃えてるようになってしまうので、控えめに数本刺されたロウソクの火を吹き消す。
「「「お誕生日、おめでとう」」」
「こちらこそ、いつもありがとう」
恒例のイベントも終わり、ロウソクを外して、取り分ける。
「うーん、美味しい!」
「やっぱり美咲はご飯よりスイーツの方が反応がいいわね」
「女の子ですから」
わいわいとケーキを食べながら色々な話をする。その中の話題に、香織とのことが出てこないことに安堵しつつ、ケーキを食べ進める。
「紅茶飲みたいな……」
「紅茶?お兄ちゃん紅茶なんてオシャレなもの飲んでたっけ?」
やっべ、香織のことに触れられないなと安心したことで、今日のこと思い出して声に出しちまった。
「後で暖かいもの飲もうと思って、お湯沸かしてるから、用意出来るわよ?」
「あ、それじゃあ、いただきます」
母さんは以外にも深くは聞かず、人数分のマグカップに紅茶を入れて持ってきてくれた。
「いい香りだね」
「ほっとするわよね〜」
ケーキと紅茶を楽しんだところで、美咲が動き始め、何かを持って帰ってきた。
「はい、誕生日プレゼントだよ。お兄ちゃん」
そう言って美咲が俺に手渡したのは、馴染み深いキャラクターがあしらわれた小物入れだ。
「お兄ちゃん、絆創膏とか薬とか、持ち歩いてるけど、入れてる袋がボロボロでしょ?だからこれに変えるといいよ」
「ボロボロとは失礼な。年季が入ってるって言ってくれ」
「意味は同じじゃん」
「まぁな。ありがとう。大切に使わせてもらうよ」
俺は美咲にお礼を言いつつ、頭をぽんぽんと軽く叩いた。
「おぉ、お兄ちゃんがなんか手馴れてる。さては香織お姉ちゃんと練習したな?」
「いや何をだよ」
よく分からないことを言う美咲にツッコミを入れつつ、話していると、両親も席を立った。
「今度は私たちからよ」
「改めて、誕生日おめでとう」
そう言いながら、父さんが手渡してくれる。
そこそこのサイズの袋を開けると、中には箱が入っていた。
「これも開けていいやつだよな?」
「もちろん」
一応の確認をした後、箱を開ける。
「スニーカーだ。しかもこれ、結構良いやつだよな」
「優斗も少しはそういうこと分かるようになってきたのね」
箱の中には有名なブランドのスニーカーが入っていた。俺は詳しくないけれど、谷本や佐々木が話しているのを聞いて、何となく耳馴染みがあった。
「優斗、高校入学の時に買ったスニーカーを履いているよね。物持ちがいいのは素晴らしいけど、他の選択肢があってもいいと思ってね」
「履かせてもらうよ。ありがとう」
今度はこのスニーカーばっかり履いてしましそうだ。
今日は色々の人に、たくさんの幸せと思いを伝えて貰って、充実した誕生日にしてもらった。
今度は、みんなの誕生日に俺が返そうと、そんなことを思った。
明日は香織と、家族とのお出かけだ。
大きな期待と、ちょっとの不安を胸に、夜を過ごした。




