幼なじみと体育祭 その2
体育祭の準備が始まり、借り物競争のお題確認や会場準備をすること約2週間。何とか順調に準備が進み、当日を迎えることが出来た。
「ふぁぁ……眠た」
文化祭の時と同じく、当日の朝にしか出来ない準備をするため、いつもの時間よりもだいぶ早く出て、電車に揺られている。
欠伸を噛み殺しつつ、学校に到着すると、既に野球部や体育委員の有志による準備が始まっていた。
「やば、遅れたかな」
小走りになりつつ、校舎に入り、生徒会室を目指す。
「すみません。遅れました」
「おはよう、橋崎。大丈夫だぞ」
生徒会室に入ると、会長を含めた数人のメンバーが挨拶してくれた。
「もう準備が始まってたので、慌ててきたんですけど、大丈夫なんです?」
「あぁ、テントやライン引きについては、各部活や体育委員が率先してやってくれているから問題ない。生徒会としての仕事は、別にあってな。手分けしなきゃ行けないから、その話し合い中だったって訳だ」
道理で思っていたよりも余裕そうに見えたわけだ。
俺含め、電車登校組が到着し、メンバーがだいたい揃ったので、説明が始まる。
「それで、生徒会としての仕事というのは?」
「国旗、校章旗掲揚のタイミングの確認と、テントの位置、数の確認、それから生徒会が使うテントの用具の準備と確認だ。事前に配られたプリントは持っているか?」
「はい、大丈夫です」
「そのプリントは生徒会と各部活の部長、先生方しか持ってないらしいから、指示出しのポジションとして活動してきてほしい。それじゃあ、メンバーを振り分けるぞ。まず……」
会長は慣れた様子でメンバーをそれぞれの役割に振り分けていった。俺は生徒会テントの準備となった。
いざ準備を始めると、時間が直ぐに経ってしまうもので、あっという間に時間になってしまった。とはいえ、しっかり確認までできたし、足りないものがあった時はまた対応すればいい。
他の生徒よりも遅れて、朝のホームルームの時間になってしまったので、静かに後ろから教室に入る。
「おはよ、橋崎くん。お疲れ様」
「おはよう。まだまだこれからだけどな」
俺がクラスに入ってきたことに気づいた青原さんと少し話をしつつ、朝のホームルームを過ごし、先生の指示に従って校庭に出る。
「いよいよ始まるね」
「そうだな。無事に終わるといいけど」
「最初は入場行進からだよね。無駄に厳しいやつ」
「先生に聞こえたら怒られるぞ」
一応周りを見てから話をしていたけど、ちょっと怖くなるわ。
「大丈夫大丈夫。確か橋崎くんは列に参加しないんだよね?」
「あぁ、学校に来てくれた保護者の方とかに、挨拶とプログラム渡す仕事があるから、そっちに行かないと」
「いいな〜、って思ったけど、それはそれで大変そうだね。それじゃ、また後でね〜」
青原さんと分かれ、生徒会のテントへと向かう。
「あら、橋崎くん準備万端?」
「はい。大丈夫です」
テントにいた顧問の先生と合流し、話をしながら、準備を整える。
「ごめんなさいね。入場行進に参加出来なくなってしまって」
「大丈夫ですよ。他のメンバーはもっと目立つとこで頑張ってる訳ですし。それに比べたら、こっちの方が気楽です」
俺以外のメンバーは、国旗と校章旗を持って、行進の前を歩く仕事がある。その後は掲揚もしなきゃならない。会長、副会長はそれぞれ1人で行進を引き連れるわけだし、それに比べたら気楽なのは間違いない。
生徒会の腕章やカウンターなどの準備を整えて、校門へ向かう。
既に、先生方が対応していたので、俺も手伝いに入る。
「すみません。遅くなりました」
「大丈夫だよ。よろしくね」
来られた保護者の方々に、プログラムを配布しながら挨拶しつつ、カチカチとカウンターを押して人数を数える。
しばらくして、校庭の方から、体育祭の始まりを告げる放送が聞こえてくる。
気を引き締め直して、プログラムを配っていく。
開会式の長々とした来賓紹介が行われる頃には、波も落ち着いてきて、余裕が出てきた。
「あれ?お兄ちゃんがいる」
「優斗、おはよう」
そんな時、聞き覚えしかない2人の声が聞こえた。
「おはよう、香織。母さんも美咲もようこそ」
そう話しながら、プログラムを手渡す。
「生徒会のお仕事も、競技も頑張ってね。応援してるからね」
「ありがとな。頑張るよ」
一言だけ交わして、校庭へと向かっていく3人の、1番後ろにいた美咲の手を掴んで引き止める。
「わっ、どしたの、お兄ちゃん」
「なんで香織と一緒なんだ?」
「そりゃ、香織お姉ちゃんも応援に行くだろうなって思ったから、昨日のうちに一緒に行こってお願いしてたからだよ」
「聞いてないぞ」
「だって言ってないもーん」
そう言って走って香織と母さんと合流しに行く美咲。
俺は、まぁいいかと、諦めて仕事に戻った。
その後しばらくして、先輩と仕事を交代し、生徒会のテントに戻ってきた。
自分の学年の出番の時にはしっかり出場して頑張り、知り合いが出てきた時にはバッチリ応援した。
お昼休憩を挟んで、応援合戦が始まる。ほどほどにふざけた応援に会場が盛り上がり、熱気に包まれた。
そしていよいよ、次は借り物競争である。




