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幼なじみ彼女と2人の時間

書いているうちに、体育祭から離れてしまった……。

間に別の話が入ってしまうこと、お許しください。

初日のお題確認が終わり、帰路を急ぐ。

昨日と同じように、香織と駅で待ち合わせて帰ることになっている。

電車が最寄りの駅に到着し、改札を出る。


「うーんと……まだ香織は来てないか」


駅を見渡すが、香織の姿は見当たらない。

手頃なベンチに腰掛けて、香織を待つことにする。


それから数分。

自宅の方を向いて、香織の姿がないかちょくちょく確認しながら、そろそろ連絡入れてみようかと、スマホを取り出す。


「ごめん優斗、待たせちゃったね」


ちょうどそのタイミングで、背後側から声がかかった。


「全然、今帰ってきたとこだよ。って、今日は今帰りか?」


昨日は私服だったが、今日は制服にカバンも持っている。


「うん。せっかくだから、勉強してたんだ」

「さすが。偉いな」

「えっへん。もっと褒めてもいいよ?」

「可愛くて賢くて、努力家の自慢の彼女だ」

「……ありがと。これからも、そうあれるように頑張るね」


そう話しながら、俺の隣に座る香織。


「無理はしないでくれよ。香織が元気なのが1番だからな。あと、帰らなくていいのか?」

「うん。少しだけ、ダメかな」

「いいや、特に用事もないし、いいぞ」


そう答えると、香織がスっと手をこちらに動かしたので、俺はその手を取って、繋ぐ。


「ねぇ、優斗。もうちょっと、そっちに寄ってもいい?」

「ん、いいよ。もちろん」


香織は「よいしょ」と肩同士がぶつかるくらい近くに座り直し、こてっと頭を俺の肩に乗せるように寄りかかった。

それに応えるように、俺も遠慮がちに、香織の方へ、少しだけ寄りかかる。

何も話すこともなく、静かで、満たされた時間が過ぎていく。


どれくらい、そうしていただろうか。満足したのか、香織が寄りかかっていた体を戻す。


「そろそろ、帰ろっか」

「そうだな。また今度、ゆっくり過ごそう」


名残惜しさを感じるものの、あまり遅くなるのも良くないので、2人で帰り道を歩き始める。


「優斗、今日は楽しいことあった?」

「ちょっと大変なことならあったな」


今日の、競技決めのことや、借り物競争のお題の話をする。


「えー、借り物競争出ることになったんだ」

「そうなんだよ。どうなる事やら」

「私、お題になりそうなもの持って行ってあげようか。さすがに生卵とかは厳しいけど」

「荷物になるし、無理しないでいいからな。それにしても、何があったらそんな発想になるんだろうな」

「ほんとだよ」


そう話しながら、ふと、いつも聞かれてばかりだなと思い、香織に聞き返してみることにした。


「香織は、今日楽しいこととかあったか?」

「うーん、そうだなぁ」


香織は少し考えてから、話し始める。


「音楽の授業が楽しかったかな」

「へぇ、何したんだ?」

「ギターだよ。アコギってやつ」

「アコギかぁ。弾けたらかっこいいんだろうなぁ」


香織がギターを弾いて歌っている姿を想像してみる。

うん、いい。絶対かっこいい。


「今度、弾いてるところ見せてくれよ」

「えぇ!?全然上手く弾けないし、なんか、おかしな感じになってると思うよ?」

「そんなことないと思うけどな。確かに普段の感じとは違うかもだけど、バドミントンの時みたいに、かっこいいと思う。見てみたい」

「そ、そこまで言うなら、いいけど。今度、友達に写真撮って貰ってみる」


やったぜ。楽しみが増えた。


「優斗はさ、ギター弾いてみたいとか思わないの?」

「そりゃ、弾けたら楽しいんだろうなとは思うけど、俺楽譜すら読むの危ういんだよ。やってみたいけど、そんな簡単じゃ無いだろうしなぁ」

「そっか。それじゃ、今やりたいこととか、欲しいものとかは?」


そう聞かれて考えてみるが、うーん、思いつかない。

香織と付き合い始めて、充実してるしなぁ。最近はアニメ見たりゲームしたりする時間も減ってきたし。


「うーん、思いつかないな」

「えー、欲がないなぁ」


そういいながら、微笑んでくれる香織。そんな香織を見ていると、思うことがあった。


「あったよ。今やりたいこととはちょっと違うかもだけど」

「ほんと?なになに」

「なんかさ。今は学校行く時と、帰る時、2人で過ごす時間あるけどさ」

「うん、そうだね」

「この行き帰りの道以外でもさ、香織と過ごせたらいいなって、思った」


付き合い始める少し前から、朝一緒に登校するようになり、帰りも時間が合えば一緒に帰るようになった。付き合い始めてからは、香織は迎えにまで来てくれている。

ただ、わがままを言うなら、このいつもの道以外にも、香織と一緒にいる時間を増やしたいと思う。


「私も、できるならもっと一緒に優斗と過ごしたいな。うーん」


2人で何かいい方法がないか考える。

そのままなんの案も出ずに、自宅に着いてしまった。


「思いつかないもんだね〜」

「まぁ、それだけもう一緒にいる時間が長いってことなのかもしれないけど」

「また考えてみよ。それじゃ、また明日ね!」

「おう。またな」


香織と分かれ、家に入る。

改めて香織と過ごす時間について考えてみたわけだけど。


「あの時、もし、一緒の学校に通ってたらなぁ」


一緒の学校なら、もっと一緒にいられるだろうし、香織に悪い虫が寄ってくるのも防げる。


と、ここまで考えたけれど。


「同じ学校だったら、今香織と付き合って無いかもしれない、か」


多分、俺はたまたま同じ学校に進学できていたとしても、避け続けていただろうし。

過去は全部今に繋がってるんだな、なんてことをしみじみと感じながら、リビングへと入っていった。


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