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幼なじみ彼女と両親


「あら、お帰りなさい。美咲の早とちりじゃ、ないみたいね」


俺たち2人が玄関に入ると、そこには母さんと、美咲が待ち構えていた。

思っていたよりも、少し神妙な表情の母さんに、俺も香織も、戸惑いを隠せない。

俺たちはどう反応していいものか分からず、短くない沈黙が流れる。なにか反応しなければと思うものの、何も思いつかない。


どうすればと考える俺たち2人を目の前にして、おもむろに母さんは口を開く。


「それで…………」

「……」


横で香織が息を飲む様子が感じられる。

わざわざ一呼吸おいてから、母さんは話し始めた。


「どっちから告白したのよ!?思ってたより早かったわねぇ〜、アオハルってやつよね〜!」

「……(絶句)」

「私としては、どうせお兄ちゃんの事だし、香織お姉ちゃんからなんじゃないかな〜と思ってるんだけどどうかな」

「そこんとこ、どうなのよ!」

「……」


身構えていた意味とは違うが、俺たち2人は固まる。


「とりあえず、上がって上がって」

「香織お姉ちゃん、早く早く」

「う、うん。お邪魔します」


両親に反対されるとか、マイナスなことは起きないのはわかっていたけど……。


「こうなるのは、予想しきれなかったな……」


俺も玄関をあがり、手を洗って荷物を置いてリビングに戻ってきた時には香織は美咲と母さんに挟まれ、質問攻めにあっていた。


「それで?いつごろ自覚したのかしら?」

「えっと、夏休みの、最後、くらい、です」

「そうなんだ〜。もしかしたらって思ってたけど、やっぱりそうだったんだ」

「青春ねぇ〜」


この中に入っていこうとは思えない……。


「ただいま、帰ったよ」

「おかえり、父さん」


た、助かった〜。父さんはブレーキになってくれるはず。生徒会で帰るのが遅めだったから、父さんが帰ってくる時間とそんなに変わらなかったんだな。ラッキーだ。

いや、生徒会で遅くなったから、美咲と出くわしたんだっけ。ダメじゃん。


「おや、なんだか今日も賑やかだね」

「おかえり〜お父さん」

「お、お邪魔してます。優斗のお父さん」

「もう、優斗の、はいらないわよ?ほら、私のことも、お義母さんって呼んで」

「えっ、と、お、お義母さん……?」


そろそろ香織が可哀想だから、何とかしないとなんだけど。俺には母さんを止めれない。


「ふむ、何となく状況は察したよ。母さん、それくらいにしてあげなさい。嬉しいのは分かるけどもね」

「そうねぇ〜。ごめんなさいね」

「い、いえ、大丈夫です」


父さんというブレーキがある時はいいんだけど、香織のことになると、どうもうちの家族は歯止めが聞かなくなるんだよなぁ。


「それから、香織ちゃん」

「は、はい」

「優斗をよろしく頼むね。それから、私たちの家にはいつでも帰ってきてくれていい。もちろん、香織ちゃんが嫌じゃなければ、だけどね」

「……はい、ありがとうございます。お、お義父さん」

「はははっ、無理はしなくていいよ。嬉しいけどね」


父さんのおかげで、何とか香織は解放され、落ち着いた雰囲気になってきた。

相変わらず父さんには頭が上がらない。


「ところで、私たちは2人のことを把握したわけだけども、香織ちゃんのご両親には、ご挨拶したのかい?」

「まだじゃないかしら。聞いた話だと、付き合い始めたのはつい最近みたいだし?」

「そんなことまで聞いたのかい?まったく。とはいえ、私たちが知ってしまった以上、ご挨拶しない訳にもいかないな。香織ちゃん、ご両親のご予定、聞いておいて貰えるかい?」

「わ、分かりました」


トントン拍子で進んでいくなぁ……。口を挟む暇も権利もないな、これ。

別に、香織と別れることとか、俺が香織を嫌いになることとか、そんな可能性は微塵もない訳だが。

もしそんなやつだったらどうするんだろうか、と思ったが。


「そんなやつなら、香織は眼中に無いだろうし、親も親で……いややめとこう」


俺は環境に恵まれていることを再度実感した。


「優斗、優斗はしばらく生徒会で忙しいよね?」

「えっ、そう、だな。うん。体育祭が終わるまでは」


ぼーっと考え事をしていたら、香織に話しかけられた。


「そうだよね。それじゃあ、休みの日の方がいいね」

「あぁ、そうしてくれると助かるけど、もちろん、香織のご両親の予定を優先してくれ。全然平日でも大丈夫だから」


俺たちが話すのを聞いていた父さんが提案してくる。


「そういうことなら、私達も一緒に行っていいかい?せっかくだし、香織ちゃんのご両親との中も良くありたいのでね」

「分かりました。伝えておきます」

「面倒をかけるね」

「いえ、私もその方が嬉しいですから。優斗もそうでしょ?」

「うん、そうだな。少しでも安心出来る要素があった方が助かる」


「そうだと思った」と微笑んで話す香織。

いずれ来るその日に向けて、心の準備をしておくことにしよう。

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