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幼なじみ彼女との朝


「ふわぁ、朝か……」


いつもよりもだいぶ早く目が覚めてしまった。

昨日、香織と想いを伝えあって、付き合うことになって、手を繋いで家まで帰ってきた記憶があるものの、朝起きてみると、夢じゃないかと思ってしまう。

それだけ幸せな出来事だったもんな、と思いつつ、今から二度寝すると、本当に夢の中での出来事になってしまう気がするし、遅刻しても行けないので、体を起こす。


「あら、今日は早いのね?おはよう」

「おはよ、母さん」


リビングに降り、朝ごはんを食べ、準備をする。

顔を洗って、リビングに帰ってくると、美咲が朝ごはんを食べていた。


「おはよう、美咲」

「あ〜、おはよ、お兄ちゃん。早いの珍しいね」


まだ半分寝ているような状態の美咲。

まだ朝出る時間まで余裕があるので、朝の情報番組を見ながら、時間を潰す。


しばらくして、バタバタと洗面台から慌ててリビングに戻ってくる音が聞こえる。


「お兄ちゃん!まさか、香織お姉ちゃんとなんか約束してるの!?」

「なんだ、どうしたんだよ」

「お兄ちゃんが早起きすることなんて、香織お姉ちゃんとなにかある時だけでしょ!?」

「失礼だな!」


突っ込んでみたものの、それはその通りである。

これ以上突っ込まれても、朝から面倒なことになるのが目に見えているので、少し早いが、家を出ることにする。


「行ってくる」

「お兄ちゃん逃げた!」


鞄を持ってドアを開け、外に出て、香織が出てくるのを待つ。

スマホを取りだし、時間を潰していると、視界の端に何かが通ったのが見えた。


「ん?猫かな」


俺たちの住む住宅街には、野良猫が割とたくさんいるので、そう予想して、影が入っていった方を見に行くことにした。


「あっ、やっぱりだ。やっぱ猫、可愛いな」


思った通り、猫が塀の影で丸まっていた。

驚かせないように、少し遠目から眺める。


「いつか飼いたいなぁ。一人暮らし始めたらかな」


我が家は父さんが動物好きすぎるあまり、お別れする時が悲しすぎてそもそも飼うことをしないのである。

夏祭りで取った金魚も、大切に可愛がって10年近く水槽の中で元気そうにしていた。


そう思うと、やっぱりペットを飼うの、楽しい面と、難しい面があるんだよな、と思いながら、猫を眺め続ける。


「だーれだ?」


そんなことを考えて猫を眺めていると、後ろから声がかかり、視界が塞がれた。眼鏡に触れないように手を丸くしてくれていることに配慮を感じる。


「香織だな。おはよ」

「せいかーい。おはよ、優斗。そんなとこで何してたの?」

「猫がいたんだよ。あれ、逃げちゃったか」


香織と話してから、目線を元の場所に戻すと、猫は居なくなっていた。怖がらせちゃったかな。


「猫かぁ〜、可愛いよね」

「そうなんだよ。いつか飼いたいなって思ってさ」


そう話しながら、駅へと歩き始める。


「別に、優斗のご両親も、美咲ちゃんも動物嫌いじゃなかったよね?お願いしてみたら?」

「そうなんだけどな。飼う前から、お別れが来ることを考えちゃって、1歩が出ないんだよ」

「確かに。悲しいのは嫌だもんね」


可愛がれば可愛がるほど、懐いてくれれば懐いてくれるほど、お別れは悲しくなっていくもので、避けられないものなんだよな。


「だから、飼うってなったら、しっかり考えて、後悔しないように決めないとだよな」

「そうだね。責任感というか、途中でお世話辞めちゃうなんてことになるのはダメだし」

「そういう人は、そもそも飼うなよって話だよな」


なんのことにしても、後先考えない行為は避けるべきだと思う。


「ちなみにさ、香織は犬派?猫派?」

「私も猫派だよ。一緒だね」

「やっぱ猫いいよなぁ」


そう話していると、不意に香織が黙りこんだ。

しばらくして、少し顔を赤くしながら、話し始める。


「そ、それじゃあさ。一緒に住み始めたら、飼ってみる?」

「えっ!?……ど、どうだろうな。その時になってみないと、わかんないな」

「確かにね。まだ、付き合ったばっかりだもんね」


香織は微笑んでそう言って手を差し出してきた。


「ねぇ、手、繋いでいこうよ」

「わ、わかった」


香織が差し出した手を取って、繋ぐ。


「こうしてると、ドキドキするね」

「慣れないよな。手汗とか、気持ち悪かったらごめん」

「気にしないでいいよ。私も同じだもん」


夢なんかじゃなかったと、安心しながら、駅まで、そのまま歩いていった。

うん。幸せ感じた。




無事に遅刻することなく、いつもの時間に学校に到着した。鞄を片付けたり、準備をしたりしていると、谷本と、青原さんがやってきて、話し始めた。


「おーい、橋崎よ。ちょっと顔貸せや」

「そうだそうだ〜。ちょっとこーい」

「なにそのヤンキーと小物感溢れる言動は」


ツッコミどころしかない2人に連れられて、中庭にやってきた。お昼はご飯を食べる生徒でいっぱいなことが多い中庭だが、朝は人があまりいないことを今知った。


「さぁ、洗いざらい話してもらいましょうか?」

「香織ちゃんとはどうなったの!?」


そういえば、相談に乗ってもらっていたのに、浮かれていて2人に連絡するのを忘れていた。

昨日あったことを2人に丁寧に説明した。


「なーんだ、良かった。なんにも連絡無かったから、まさか失敗したのかと思っちゃったよ」

「おめでとうな。橋崎」

「ありがとうな。2人とも」


相談に乗ってもらって本当に助かった。2人には頭が上がらない。


「そ、れ、で、橋崎くん。改めて香織ちゃんを紹介してくれるのはいつかな?」

「……はい?」

「中村さんは、俺らが相談に乗ったの知らないんだろ?」

「そうだな」

「それじゃあ、改めて、()()()()()紹介してよ」

「……まじか」


「予定決めようね」と言って、教室に戻っていく青原さん。


「まぁ、青原はだいぶ心配してたからな。それくらいしてやろうぜ」

「まぁ、そうだな」

「もちろん、俺もその場には同席させてもらうぞ」

「マジか……」

「楽しみだな。橋崎がどんな顔で俺たちに紹介するのか、期待しとくわ」


そう言って、谷本も教室に戻って行った。

どんな風に予定を立てて誤魔化せばいいだろうか。頭を悩ませながら、俺も教室に向かっていった。

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