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幼なじみとお互いの思い

あけましておめでとうございます。

本年もよろしくお願いいたします!


「……うと……起きて優斗」

「う、うーん」


香織の声と、体を揺さぶられる動きで目が覚める。


「ほら、起きて、終わっちゃうよ」

「えっ……あっ!?」


必死に起きていようと思っていたのに、いつの間にか眠っていたららしい。

うわぁ、我ながら、これは……。


「香織、ほんとにごめん。俺……」

「大丈夫だから、最後も一緒に見よ?」

「……そうだな」


その後少しの間、2人で話しながら、プラネタリウムを楽しんだ。

あっという間にプラネタリウムは終わってしまい、部屋が明るくなった。


「えっと、とりあえず、出よっか」

「おう、そうするか」


それにしても、やっちまったな……。自分で誘っておいて、寝ちまうなんて。

香織はプラネタリウムを楽しめたからか、笑顔見えるのが救いかな。

こんなんで、ちゃんと告白できるかな。ちょっと不安になってきた。


「それにしても、綺麗だったね」

「そうだな。本当の星空も綺麗だけど、プラネタリウムも良かったよな」

「うん。また来たいね」


そう話しながら、プラネタリウムの施設から出た。

ここからは、帰るだけだ。帰り道の途中で、公園に寄って、告白しよう。

プラネタリウムの中でいい雰囲気になったら、とも考えてたけど、俺のせいでそんな流れにはならなかったな。


自己嫌悪に陥りつつ、香織にこれからの事を共有しておこうと、歩いていた足を止め、振り返って、口を開く。


「香織、ここからの予定……」

「優斗、ちょっといい?」


俺の言葉を遮るように、香織が話し始めた。


「あ、ごめんね」

「いや、大丈夫。どうした?」

「今日はこの後行くところあるの?」

「いや、あとは帰る感じにしようと思ってたけど、どっか行きたいとこあるか?」

「ううん、そういう訳じゃないんだけど。そっか、なら大丈夫だね」


香織はそう話しながら、俺の手を引いて、近くの公園に向かっていく。見える香織の横顔が赤くなっているような気がする。

香織は公園に入ると、引いていた手を離し、少し行ったところで足を止め、俺の方に振り返った。

そして、一呼吸置いてから、微笑んで話し始める。


「優斗、私ね、優斗のことが好き。大好き」

「えっ……!?」


予想もしていなかった言葉に、頭が真っ白になる。頭が回らず、全然反応できない。


「えへへ、ごめんね?びっくりさせちゃったね」

「あ、あぁ」


数秒経って、ようやく理解出来てきた。

頬、どころか、全身が熱い。幸せな感情と、少しの困惑で、いっぱいになる。


「優斗からの告白を待つつもりだったんだけどね。知ってて欲しかったんだ」

「知ってて欲しい?何をだ?」


赤くなった頬を、ぷくっと膨らませて、香織は答える。


「優斗は全然気づいてくれてないんだもん。私も、優斗のことを、好きだって、こんなに惹かれてるんだよって、伝えたかったし、知って欲しかったの」

「あ、ありがとう。香織」

「それにね、再開したばっかりの時に、優斗が言ってたことも、私、わかったよ」

「俺が言ってたこと……?」


恐らく、文化祭の後の公園での話だと思うけど、どれの事だろうか。


「あの時、小学校の時とは違うって、そう言ってたよね」

「あぁ、そうだな」

「私は、その言葉の意味が、深くはわかってなかったんだ。昔みたいな関係に戻れたらって、ずっと、そう思ってたから。けど、今は違うの」


香織は1度話すのを止めて、深呼吸してから、続けて話す。


「あの時より、優斗の色んなことを知って、優斗のことが、男の子として好きなんだって、気づいた。だから、私も、もう昔みたいな幼なじみに、戻りたいとは思わないよ。もっと、なりたい関係ができちゃったから」

「香織……」

「だからね、優斗。私と、付き合ってください」


もちろん、断る理由なんか何一つないし、嬉しい。けど、男としては、このまま香織にリードされるままっていうのは、癪だ。


「もちろん、と言いたいところだけど、俺からも、言わせてくれ」

「うん。私も、聞きたいな」

「香織、誰にでも優しくて、頼りになる君が好きだ。親しい人には、素直な所を見せるところが好きだ。たまにちょっと抜けてるところが、好きだ」

「優斗、相変わらず、褒めてるのか怪しいよ」


口ではそう言ってるものの、照れているのが分かるので、言ってよかったと思う。

俺は続けて、香織への溢れる気持ちを言葉にする。


「きっとこれからも、香織の好きだな、素敵だなって思うところが、増え続けていくと思うんだ。そんな人と、俺は一緒にいたい。香織、俺と、ずっと一緒にいてくれないか?」


俺は、片手を香織の方に差し出しながら、そう言葉にする。


「ふふっ、優斗。告白っていうより、プロポーズみたいだね」

「……しょうがないだろ。こんなに好きな人が出来たのも、告白するのも、初めてなんだよ」

「うん、私も初めて」


香織は微笑んで、俺にすっと近づいて、差し出した手を、両手で包むように掴んだ。


「喜んで。私も、優斗とずっと一緒に居たいです」


香織はそう答えると、俺の手を握っていた両手を広げて、俺に抱きついてくる。

俺は慌てて両手を広げ、香織を受け止め、抱きしめる。


「ああ、やっと伝えられた」

「うん、俺もだ」


俺たちは幸せを共有するように、ぎゅっと抱き合った。しばらくして、名残惜しいけれど、香織の身体を離す。

香織の、今までの笑顔とは違う、幸せな様子が伝わってくる表情を見て、今のこの雰囲気とその魅力的な表情に流されないように、気を引きしめる。


改めて、香織の整っている容姿や、努力を怠っていないのが伝わってくるそのスタイルを見て、今まで、自分の中だけに留めていた気持ちを、決意と約束として、言葉にする。


「俺、香織の隣に立ってても、誰からも疎まれないような、恥ずかしくないような男になれるように、努力してくから、見ててくれ」


香織は俺の言葉を聞いて、不満そうな表情になる。


「じゃあ、そういうところから、だね」

「か、香織?」

「優斗の志が高い所とか、謙虚な所も好きだけど、自己評価が低いところは直して欲しいな」

「えっ、そんなに?」


香織に面と向かってそう言われて、ちょっとショック。お互いに気持ちを伝え合ったから、遠慮が無くなったのもあるんだろうか。


「そうだよ。優斗は、まだまだだって思ってるのかもだけど、今までの優斗を見て、一緒に居て、好きになった人がいるのも忘れないで。優斗が自分を下げるような言葉を話すことは、優斗のことが好きな人を傷つけてるんだよ」

「でもさ、事実……」

「でもじゃない!少なくとも、私は隣にいて、恥ずかしいなんて思わないもん。優斗は、優しくて、かっこいいよ」


めっちゃ褒めてくれるな、香織。自信になるし、嬉しいけど、やっぱり譲れないとこもある。

そう思って、言葉にしようとすると、その前に香織が続けて話し始める。


「色々言っちゃったけど、優斗が、もっとかっこよくて頼りになる男の子になろうとしてるのを否定してるわけじゃないからね。自分を卑下するような言葉は、やめて欲しいってだけ。長々と、ごめんね。いい機会だと思ったから」

「いや、ありがとう。香織が俺の事を、めっちゃよく見てくれてるってことがわかったよ。気をつけるな」

「うん。よろしい」


香織は満足そうに頷いて、微笑む。

その直後、なにか思いついたように、話し始める。


「あっ、付き合うことになったんだし、今の私みたいに、直して欲しい所とかあったら言ってくれていいからね?」

「ん?今は特にないけどな。俺は香織の全部が好きだよ」


そういうと、香織は少しずつ引いてきていた顔の赤みがぼっと音がしそうなほど再び赤くなる。


「も、もう!私ばっかりわがまま言ってるみたいになっちゃったじゃん。私も、優斗のこと、好きなところの方が多いんだからね?」

「分かってる。その上で、俺の意思を尊重して、手助けしてくれてるんだよな。ありがとう」

「な、なんでそんなに察しがいいのに、私の気持ちには気づかないの!?」


香織は少し怒ったように、1人で駅の方へ向かい始めてしまう。

香織のそれが、照れ隠しの起こったフリだっていうことも察せたので、急いで追いついて、思い切って、手を取って、繋ぐ。


「ごめん。香織限定で、もっと汲み取れるように頑張るから。一緒に帰ろう」

「……うん」


香織も手をぎゅっと握り返してくれた。


そうして、2人で帰り道を歩き出した俺たち。その距離は、今日までの距離よりも、小学校の時よりも、近くに感じられた。

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