頼りになる友人との作戦会議
「ただいま」
「おかえり〜!」
香織と分かれ、家に入ると、美咲が玄関まで迎えに来てくれた。
「楽しかった?お土産は!?」
「楽しかったよ。ちょっと待ってな」
リビングまで行くと、母さんにも出迎えられキャリーバッグを置いて、開く。
「ほい、お土産」
「やったー!可愛い〜」
家族に買ったキーホルダーやお菓子類を出して、美咲に手渡す。
「楽しかったみたいね」
「あぁ、楽しめたよ」
「あら〜、それは何より!」
母さんはそれを聞いて機嫌よく家事へと戻って行った。俺も荷物を片付け、部屋に戻る。
洗濯物やお土産、自分のものなど仕分けて、それぞれ片付け終わったので、自分の部屋に戻ってきた。
やっぱり家が落ち着くなぁと思いながらも、ずっと落ち着いても居られない状況なので、スマホを開いて、連絡を取る。
『青原さん、相談したいことがあるんだけど』
『おやおや、どうしたのかな?』
さっきのことを軽く説明して、土曜日に会う約束を取り付ける。快く相談に乗ってくれる青原さんに感謝である。
香織との約束をどのように果たすか、考えながら、その日を過ごした。
* * *
翌日、前にテニスをしに来た時に入ったカフェの近くのファミレスで約束しているので、時間より少し早く到着する。
「あっ、橋崎くん!こっちこっち!」
「青原さん、ありがとな」
お店を覗くと青原さんが俺を見つけてくれたので、合流する。
そこには、予想してなかった招かねざる客が座っていた。
「よう、橋崎。昨日ぶりだな」
「谷本、なんでここにいるんだよ」
「理由は知らないけど、青原に呼ばれてな。来てみたら、橋崎からの相談事があるらしいじゃないか」
それを聞いて、バッと音がするほど素早く青原さんの方を見ると、申し訳なさそうに話し始める。
「いや〜、ごめんね?ただ、私もそういうことは経験ないからさ。それに、谷本くんにもいてもらった方が、色々助けて貰えると思ったから」
「せめて事前に教えてくれよ」
「事前に言ってたら止められたかなって」
うん。それはそう。
「そんなわけで呼ばれたから、来たわけなんだが。青原にどんだけ理由を聞いても答えてくれなかったんだよ。それで、青原が橋崎のことを考えて俺を呼んだって分かるんじゃないか?」
「それは、確かに」
青原さんは俺との約束を守りつつ、俺の相談を解決するのに、谷本が力になってくれるように仕掛けてくれたってことか。
「そうだな。まぁ来てもらったわけだし、2人に相談させてもらうよ」
「そう来なきゃな。そんじゃ、聞かせてくれよ」
「私も再確認しときたいから、詳しめでお願い」
「容赦ないな……」
できるだけ詳しく、事細かに昨日の帰りにあったことを話した。
「青春だねぇ〜」
「なるほどな。それで俺が呼ばれたのか。納得」
「納得?説明聞いただけで?」
「ああ。青原は女子側の意見は分かると思うけど、告白経験はないだろうし、男子側の意見が欲しいってとこじゃないか?」
「せいかーい」
そうだったのか。言われてみれば、その通りか。
「なんか、俺のためにありがとな」
「どういたしまして」
「そんじゃ、プラン考えていこうぜ」
そうして、谷本と話し合い始めた。
あれがいいんじゃないか、これがいいんじゃないかと話をしていく。
「実際、告白ってどんな場面でするのがいいんだ……?」
「それは人による気がするけどな。それこそ、相手にもよるだろうし」
「ロマンチック〜とか、いつもの場所とか、色々聞いたことはあるけどね。香織ちゃんがどんなのがいいか、予想立てるならそれは、橋崎くんのお仕事だよ」
「あぁ、考えてみてるんだけど、なんともしっくりこなくて……」
そう話し合っていると、喉が渇くもので、コップを見ると、もう無くなっていたので、補充するべく席を立つ。
「飲み物持ってくるよ。2人もいるか?」
「ありがと。お茶でお願い」
「俺もお茶で」
「了解」
2人の飲み物の希望を聞いて、立ち上がりドリンクバーに向かう。
「それにしても、ほんとに察し悪いよなぁ。あいつ」
「ほんとにね~。話聞いてる限り、昨日の流れのままでも、十分香織ちゃんはうれしかったと思う」
「だよな。橋崎の相談に乗るために集まったわけだけど」
「うん。これは」
「「香織ちゃん(中村さん)のためでもある」」
3つのコップをもってテーブルに帰ると何やら話しているようなので、話しかけつつ座る。
「あれ、何の話だ?」
「なんでもな~い」
「ほら、続き考えるぞ」
なんだか釈然としないが、決めないといけないものが残っているので、話し合いを続けていった。
「2人とも、今日はほんとありがとな」
「いいってことよ」
「成功の知らせ期待してるからね!」
あの後、俺の考えたプランを相談しながら数時間過ごし、夕方になったので、解散することになった。
ファミレスを出て、2人と別れ、帰路につく。
お出かけはうまくいくだろうか。その時に勇気は出るだろうか。うまく言葉にできるだろうか。
心配は尽きないもののうまくいくことを信じて、電車に揺られた。




