修学旅行 その7
「買い物し始めたことだし、お土産買いに行こっか」
ペンを購入したショップから出たところで、青原さんが提案をする。
「まだ晩御飯とか、夜のショーとかあるけど、今?」
「そうだな。それらが終わってからでもいいけど、時間的に急いで選ぶ感じになるし、同じこと考える人も沢山いるからな」
「確かに、そうだね」
俺たちは話し合い、行きたいアトラクションもだいぶ回ることができたので、お土産を買いに行くことになった。
「さーて、何買って帰りますかね」
「色んなとこにショップがあるし、それぞれ売ってるもの違ったりするから、何買っていいかわかんなくなるな」
買うお土産は、母さん、父さん、美咲と香織、日持ちするのがあったら祖父母の分くらいかな?
フラフラとお店の中を歩き、とりあえずキャラクターがあしらわれたマグネットと、キーホルダーを買うことにした。家族用だな。
ふと近くに佐々木が見えたので、話しかけてみる。
「佐々木、何買うんだ?」
「今のとこ、これかな」
佐々木が手に持っていたのは、今日乗ったジェットコースターのミニカーだった。
「えっ、そんなのあるのか」
「こういうの集めるの好きだから、買いすぎには注意しないと」
「偉いな」
「結に怒られるからね」
「あぁ、そういう……」
佐々木の意外な面を知りつつ、続けて買い物だ。
お菓子関連でいいものがないかと探していると、谷本と合流した。
「橋崎、お土産選びは順調か?」
「まぁまぁだな。お菓子のおすすめとかあるか?」
「もちろんあるぜ。これとか、これは安定だぞ」
谷本は、キャラクターの缶に詰められたクッキーや、チョコ菓子を手に取る。
「クッキーとかチョコはあんまり好き嫌い分かれないイメージだし、入れ物も可愛いから、工夫して使えるのもグッドだな」
「確かに。ほんじゃ、1個買って帰るかな」
「毎度あり!」
「回し者かよ」
谷本自身は青原さんに貰ったぬいぐるみで満足なようで、特に何も買わないようだ。それでいいのか。
さてと、家族の分は買ったから、あとは香織に、だけど。正直、香織も今日夢の国に来てるわけで、お土産と言っても、思いつかない。
ペンも買ったし、それだけでもいいかなと考えていると、青原さんが声をかけてきた。
「橋崎くん。お土産選びは順調かな?」
「家族の分は選んだよ」
「じゃああとは香織ちゃんの分ってことね」
「そうなんだけど、香織も夢の国に来てるわけで、考えてたら何がいいのか分からなくなっちゃってさ。何かアイデアないか?」
「そうだなぁ」
青原さんは周りを見ながら考える。
「橋崎くんはさ。これまで香織にプレゼントとかで、何あげた?」
「えーっと、シュシュとか、ぬいぐるみとかだな」
「なるほどね」
青原さんはそう呟いて、歩き始める。俺もついて歩いていくと、ある商品の前で止まった。
「キャンディーセット?」
「そう。入れ物が小さくて可愛いから、使い道広いし、お土産で自分にお菓子を買うことって少なくない?」
俺は自分の手に取った商品を見て答える。
「確かに。家族宛てとかはお菓子買うけど、自分ってなると、もっと違うもの買うかも」
「でしょ?どうかな」
青原さんが少し緊張したような感じで聞いてくる。
俺は笑って答えた。
「これにするよ。一緒に考えてくれてありがとう」
「ほっ、良かった〜。記念すべき初めての相談で失敗したらどうしようかと思ったよ」
「これからも頼りにしてる」
そう話したものの、さっきの質問が引っかかったので、聞いてみることにした。
「それはそうと、俺が香織にあげたプレゼントって関係あったか?」
「んー?それは私が知りたかっただけ」
「……やられた」
多少のショックを受けつつ、各々会計を済ませ、ショップから出てきた。
「さて、まだショーまで時間あるし、大きいものはロッカーに預けて、晩御飯にしよ」
「さんせーい」
出入口付近のロッカーに向かうべく、歩きながら、話題はショーのことになっていく。
「夜のショーってさ、どんなのだっけ?パレード的な?」
「それもあるけど、プロジェクションマッピングも綺麗で好きだよ」
「それって、どこに映るの?」
「ん、あれだ」
もはや当たり前の光景になってきた、谷本と青原さんの夢の国講座を聞いていると、谷本は指で後ろにあったお城を指さした。
「そっち、城しかないけど」
「そう。それだよ」
「へぇ〜、あのお城に映るのか……って、マジ?」
「マジマジ」
すごい技術だな。お城結構凸凹してるけど、綺麗に映るのかな。
そんな会話を楽しみながら、ロッカーに荷物を預け、晩御飯を食べた後は、プロジェクションマッピングを楽しんだ。
心配することなんて何も無く、音と光が綺麗で幻想的だった。
「あ〜、終わっちまった」
「ほんとだよ」
余韻に浸りつつ、時間までにホテルに戻るため、出口へと向かっていく。
「1日楽しかったよね。また来たい」
「同じく」
そんな話をしながら、来た時よりもだいぶ重い足取りで歩いていると、青原さんが提案した。
「じゃあさ、また、みんなで来ようよ」
「いいね。バイトしてお金貯めて」
「あぁ、今度は海の方も行きたいな」
「1泊、いや2泊したいね」
「うん、いいかも」
俺たち5人は顔を見合わせた。
「んじゃ、約束な」
「すぐには難しいだろうけど、いつか」
「うん。絶対みんなで来よう!」
約束を交わして、楽しく充実した夢の国の一日が、終わりを迎えた。




