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修学旅行 その6

何とか無事にみんなと合流することができた。ほっとしたのもつかの間、谷本がみんなに提案する。

和田さんに、さっき何を言いかけてたのか聞きたい気持ちもあったが、難しそうだな。


「俺、今思い出したんだけどさ、ミニゲームしに行こうぜ!」

「ミニゲーム?」

「あ〜、あのちょっと難しいけど、成功したら景品貰えるやつ?」


へぇ、そんなのあるのか。難しいってどのレベルなんだろうか。


「ちなみに俺は成功したことない!」

「胸を張って言うことか?」


けどまぁ、ゲームとなると、割となんでもこなせる谷本が成功してないってなると、割と難易度高そうだな。面白そうでもある。


「それじゃあ、決まりってことで!いこー!」


未だ疲れた様子の無い青原さんと谷本に続いて目的の場所へ歩いていく。


しばらくして目的の場所に着いた。歩いてるだけでも楽しいんだから、すごいよなぁ。


「これだ。景品が非売品のぬいぐるみなんだよ」

「そりゃ欲しがる訳だ」


何やらミニゲームは一つだけでなく、ボールを転がして、狙ったところに止める形式のやつや、ボーリング形式のやつ、輪投げ形式のやつなど、色々あるようだが、谷本はぬいぐるみ目当てにミニゲームを選んでいるようだ。


お皿が並んでいるところにボールを転がして、狙ったお皿のところで止めるミニゲームにしたらしく、谷本はスタッフさんに声をかけ、挑戦し始める。


「うっし、行くぜ」

「頑張れ」


3球チャンスがあるようで、まずは慎重に1球目のボールを転がす。


「手前だったな」

「ふむ、なるほどなるほど」

「わかったような声出してるけど、多分わかってないよね、あれ」


谷本は周りのツッコミに反応することもなく、2球目を転がす。今度はさっきより勢いよく転がされたボールが、目指すお皿を通り過ぎ、奥の穴へ落ちた。


「今度は強すぎたな」

「完全に理解した」

「やっぱりあれ何もわかってないよね」


青原さんの指摘通り、谷本は何も分かっていなかったようで、ボールは見た事のある軌道を描いて、奥の穴へと落ちていった。


「再放送かな?」

「うっせ!難しいんだよ!」

「今度は私の番〜」

「えっ、難しいんだぞ?」


青原さんは谷本の忠告をスルーして、慣れた様子でスタッフさんに声をかけ、ボールを受け取った。


「実力の程を見せてもらおう……」

「狙って……ほいっと」


谷本が何やら言っているのを尻目に、青原さんはボールを転がした。谷本の時よりも、かるーく転がされたボールは、なんと目的の赤い皿の上で止まった。


「いぇーい!」

「おめでとうございます〜!」

「…………」


谷本が口を開けて唖然としている。なんか流れが綺麗すぎて面白い。


「やったね、ゲット!」


嬉しそうにぬいぐるみを抱える青原さん。それに対してまだ呆然状態の谷本。もはやそれぞれの近くで空気感が違うように感じる。

青原さんは谷本の様子を伺いつつ、ぬいぐるみを差し出す。


「はい、あげるよ」

「えっ!?い、いいのか……?」

「うん。私、前に来た時に取ったことあるから。それに、谷本くんがいなかったら、橋崎くんと関わることもなくて、こんなに楽しくなってなかっただろうし。だから、あげる」


谷本はこれ以上ないほど明るい雰囲気を取り戻し、テンションも戻ってきたが、まだ遠慮があるようだ。


「でも、その時とはちょっとデザインが違うだろ?本当に、いいのか?」

「もう、私の気が変わる前に早く受け取ってよ」


その青原さんの言葉を聞いて、テンションも最高潮に戻り、幸せオーラを出し始めた感じのする谷本。


「あ、ありがとう!青原!感謝を込めて抱きしめてもいいか!?」

「い、良いわけないでしょ!!?何言ってるの!?」


ダメだ、予想外のイベントにテンションが跳ね上がってる。


「谷本、お礼がしたいなら、あそこのショップで買おうな〜」

「おう!待ってろよ!」


俺は谷本を引きずるように、近くにあったショップへ入る。


「うわ、すっげぇオシャレな雰囲気」


目に入ったショップに入ったとはいえ、アクセサリーや飾り物を売ってそうな雰囲気のところに来てしまった。


「大丈夫だよ。あっちの方とか、私たち向けの置いてるから」

「よ、良かった」


青原さんに促されるままに、お店の中に入っていく。


「ほら、ここら辺とかいい感じじゃない?」


青原さんが示す先には、夢の国のキャラクターがところどころにあしらわれた文房具が置いてあった。


「これから私たち受験生だしさ。こういうのあったら頑張れるかな〜って」

「それはそうかもね」

「青原さんはどれがいいんだ?」

「私は、これかな」


青原さんは、好きだと言っていた青色のキャラクターがあしらわれたペンを手に取った。決して派手すぎることも無く、さりげなくキャラクターの要素があるのがオシャレで、とてもいい感じだ。


「俺も買っていこうかな」

「おそろいになっちゃうけど、大丈夫?」


あれだったら私が辞めようか、といった様子でペンを戻そうとする青原さんを止めつつ、話を続ける。


「別に気にしなければいいしさ。なんなら、このメンバーで揃えちゃうとかどうよ」

「いいかも。キャラクターだけ変える感じでね」

「そうそう」


その後、他のみんなも呼んで、それぞれでペンのデザインを選んだ。佐々木は主人公のキャラクターを。谷本はお調子者の鳥さんを。和田さんはくまさんを選んだようだ。

俺は他の人と被らないようにしつつ、仲のいいリス2人のペンをそれぞれ買うことにした。

ちらりと俺の手元を見た青原さんは、他の人に聞こえないような小さな声で、話をする。


「わかっちゃった。それ、片方香織ちゃんにあげるつもりでしょ」

「あー、やっぱバレる?」

「私にはお見通しかな〜。多分、他のみんなは気づいてないと思うよ。ポップコーンバケットもそのキャラだし。そんな顔しなくても、ちゃんと黙っとくから安心して」


青原さんにも見通されてることを考えると、俺そんなにわかりやすいのかなと不安になってくる。

どうせバレてるんだし、と開き直って聞いてみる。


「青原さん、これから先、香織との事で困ったらさ、相談に乗ってくれないかな」


青原さんはきょとんとした後、にっこりといい笑顔で答えてくれる。


「そんなの、事前に伝えなくても大丈夫。困ってたら助けるし、相談にも乗るよ。迷惑だってかけてくれていいよ。だって、友達ってそういうもの、なんでしょ?」

「……これは、1本取られたなぁ」

「えっへん」


昨日の夜、俺が青原さんに言ったようなことを、そのまま返されてしまった。


「ありがとう、頼りにしてる」

「どんどん頼ってよね!私も2人がどうなっていくのか気になるんだから」


そう話す青原さんと共に、お店を出た。

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