修学旅行 その4
「おい、見ろよ!30分待ちだって!ラッキーすぎる!行くぞ行くぞ!」
「ほんとだ!」
さっきが、物語体験系のアトラクションだったので、コースター系の激しいアトラクションを求めて、奥の方までやってきた訳なのだが。
着くなりハイテンションで待機列の橋へと入っていく2人。
「とりあえず、ついて行くか」
「そうだね」
谷本と青原さんに続いて俺達も入っていく。
「そんなに珍しいのか?」
「珍しいも何も、普段は120分待ちがデフォだよ。酷い時は180分とかになるんだから」
「そうそう。今歩いてきた橋をスムーズに動けたことがまず無い」
アトラクションに入る度に2人が豆知識や思い出を話してくれるから待ち時間も楽しく過ごせていいな。
「ところで、なんだけど」
「どうした?」
和田さんが控えめに話出す。
「このアトラクション、どれくらい早いの?注意書きにメガネとか被り物は外してって書いてあるけど……」
和田さんが指差す先には、確かにそのように書いてあった。
「あぁ、大丈夫だよ。あくまでも、アクセサリー的なものを外してねってことだから。橋崎くんとか楓が普段つけてるメガネを外してねってことではないよ」
「見えない方が危ないしな」
「そっか、なら大丈夫、なのかな?」
そんな話をしていると俺たちの番になった。被り物やつけ耳を外して、乗り込む。
カタンカタンと少しずつ上がっていく。
「さぁ、来るぞ〜!」
谷本がそう言った直後。
「やっほーー!!!」
「うわぁぁぁぁ!!」
勢いよく降り始め、トップスピードに乗る。
終始楽しそうに叫ぶ青原さんと谷本を尻目に、余裕はないものの何とか楽しめた。
「いやぁ楽しかった」
「サイコーだね」
アトラクションを降りて、外に出てきた。
俺の左側では、満足気な2人が。そして、俺の右側では……。
「こ、怖かった……」
「ジェットコースターって、こ、こんな感じなのか」
思っていたよりも怖かったのか、震える和田さんと、ジェットコースター自体初見だった佐々木が呆然としている。
「なんだこの温度差……」
「あはは、ちょっと休憩しよっか」
「あっ、それじゃ、俺あれ買ってきていいか?」
俺はさっき来る時に見つけた、好きなキャラクターモチーフのポップコーンの入れ物を指さしながら言う。
「もちろん。行ってらっしゃーい」
青原さんに一言伝えてから、ポップコーンと入れ物を買う。ついでに飲み物も買って戻る。
「あ、おかえり〜」
「おう。佐々木、和田さん、良かったらこれ飲んで」
買ってきたペットボトルの飲み物を2人に手渡して、自分はポップコーンを食べる。
「そこのは何味なんだ?」
「食べてみ」
「……あー」
谷本のやつ、食べたらわかると思って提案したら、パカッと口を開けて少し上を向いて固まった。
しょうがないなと思いつつ、ただでは悔しさがあるので、1粒のつもりだったが、5粒くらい手のひら全体で掴んで谷本の口の中に詰め込む。
「ふがっ……ふぐふぐ……キャ、キャラメルだな」
谷本は恨めしそうにしつつも、美味しかったからかそこまで言ってこなかった。
「キャラメルか〜、いいね!私も食べる」
「ん、ほい」
「えっ……?」
あっやば。谷本との話の流れのままに、手を伸ばしてきていた青原さんにも、俺がつまんで差し出してしまった。
青原さんの顔の前で止まっているものの、まだ間に合うので、慌てて誤魔化そうとする。
「ご、ごめんごめん!その、話の流れで……」
「……あーん」
「へっ!?」
なんで青原さんは乗り気なんだ!?谷本や佐々木からの目線が痛いし、なんか和田さんからは睨まれてないですか!?
俺が困惑して、そのまま固まっていると、青原さんが吹き出して笑い始めた。
「ぷっ、あははは!ごめん、からかい過ぎた。でも、先に仕掛けてきたのは橋崎くんだからね?」
「わ、悪かったよ。ちゃんと気をつける」
「うむ、よろしい」
そう言って青原さんは俺の指からポップコーンを奪い、ぱくりと食べた。
「さてさて、2人も復活したし、次行きますか!」
「青原さん的に次のおすすめは?」
さっきまでは谷本中心の案内だったので、青原さんに振ってみる。
「うーん、そうだなぁ……。ここまで、乗り物系が多かったから、別のに行ってみよっか」
「と、いいますと?」
「例えば、3Dメガネかけて、匂いとか風を感じる、みたいな」
「いいね、楽しそう」
そうと決まれば早いもので、ランプの魔人さんのアトラクションへと向かった。相変わらず並んでいたものの、慣れてきて、何も思わなくなってきた。
このアトラクションを楽しんだ後も、小さなジェットコースターに乗ったり、先生を見つけて、みんなで写真を取ったりして楽しんでいった。
「さすがに腹減ったなぁ。俺だけ?」
「ううん、私も」
「同じく」
色んなポップコーンを食べながら動いていたとはいえ、お昼も過ぎて、さすがにお腹が空いた。
「そしたら、食べれるもの探すか、レストランに入るかだけど」
「2人のおすすめは?」
「俺は雰囲気が好きだから、軽く食べれるようなのを買って、ベンチで食べるのが好きだな」
「それもいいけど、私はレストランもオススメだよ。モチーフがあるお店は入らないとわかんない楽しさあるしね〜」
ふむ、久しぶりに意見が割れた。かと思ったのだが、付け加えるように青原さんが話し始める。
「とは言っても、その分食べる時間が長くなるし、待ち時間もアトラクションぐらいあったりもするから、今日は谷本くんに賛成かな」
「それじゃ、ご飯を見逃さないようにしつつ、次のアトラクションに向けて歩いていきますか」
そう言って歩き始め、あれが食べたいこれが食べたいと、テレビやスマホ等で、事前に仕入れていた情報をお互いに出しながら歩いていった。




