修学旅行 その3
さぁいよいよやってきたぞ。
「夢の国だぁー!」
まだ入場前だというのに、青原さんは入る前のゲートの時点でテンションMAXである。
何故か俺たちの学校の生徒はほとんど海を選んだようで、こちらに来た人数が少なかったため、思っていたよりもスムーズに入場できた。
「さて、最初はどこ行く?」
「そりゃ決まってるだろ」
「そうだよね谷本くん」
「なんか通じあってる……」
谷本と青原さんが目を合わせ、声を合わせて言葉を発する。
「「ショップだよなぁ!(だよねぇ!)」」
「初手買い物?お土産もう買うの?」
谷本はちっちっち、と指を揺らし、答える。
「お土産は知っての通り最後だ。最初にショップに入るのは、服装を整えるためなのだよ」
「あぁ、なるほどつけ耳とかってことか」
「ザッツラーイト!」
谷本と青原さんに続いてショップに入り、各々身につけるものを選び、会計する。
俺は無難につけ耳にすることにした。好きなキャラクターのつけ耳を選ぶ。
早々に会計を済ませ、外で待っていると、続々とショップからメンバーたちが出てきた。
「佐々木と和田さんもつけ耳にしたんだな」
「まあね。僕は夢の国初めてだし」
そういう佐々木は、主役とも言えるキャラクターのつけ耳を手に持っていた。
「わ、私も、無難なのがいいかなって」
「俺もそんな感じだ」
そのような感じで、つけ耳談義をしていると、谷本が出てきた。
「またせたな〜」
「へぇ、そんなのもあるのか」
「なんだか、可愛い」
「そうだろそうだろ?」
谷本はキャラクターを模した被り物をしていた。
確かに似合ってる。ただ、暑そうなのがちょっと心配だな。
谷本に続いて、青原さんもショップからでてきた。
「お待たせ!」
「桃ちゃん、魔法使いだね」
「いいな。よく似合ってるよ」
「えへへ、ありがとう」
魔法使いのような、先のとがった三角帽子を被って登場した青原さん。
活発な印象とよくあってていい感じだ。
谷本がみんなを見回してから話し始める。
「よし、身だしなみは整ったな!それじゃ、行きますか!」
「おー!」
そう言ってみんなでどんどん中へと歩いていく。
「まずはどこに向かってるんだ?」
「最初はな、和田が行きたいって言ってたくまのアトラクションからでどうだ?」
「さんせーい!」
「えっ、いいの?」
「事前に行きたいとこ話してたけど、最初に出たのがそこだったからな。迷ってても時間がもったいないし、どんどん行こうぜ」
お目当てのアトラクションに到着した。外見からこだわり抜かれていて、作品の中の建物のようだ。
どうやら90分待ちらしい。
「結構待つし、他のでも……」
「なに言ってんだ。短い方じゃね?」
「うん。120分とかザラだしね。いこいこ」
「詳しい2人がこう言うんだし、行こうよ」
建物の前にできている行列に並び始めた。詳しい2人曰く、これでもだいぶ人が少ない方らしい。
「やっぱり、アトラクション楽しむなら、季節物のイベントの間の平日だよねぇ」
「間違いないな。ハロウィンとかクリスマスが始まると人がめっちゃ増えるし。長期休みの時とかもやばいんだよな」
「へぇ〜」
夢の国の豆知識の話をしたり、建物の中に入ってからは、この物語の説明を聞いたりして、待ち時間はあっという間だった。
「いよいよだね〜」
「ワクワクしてきたー!」
いよいよ俺たちの番になり、アトラクションに乗り込む。くまの物語の中に入ったようで、めっちゃ楽しかった。
「いやぁ、楽しかったな!」
「間違いない」
満足感に包まれて、アトラクションから出てくると、ポップコーンが売られているのに気がついた。
「なぁ、あれ、買ってきてもいいか?」
「いいけど、買うとこによって、入れ物とか味が違うぞ。ここはくまのエリアだからはちみつ味だと思う」
そう言われて詳しく見に行くと、谷本の言った通り、はちみつ味のポップコーンが売られており、入れ物はくまのテーマの可愛らしいやつだった。
「その入れ物を集めたりするのも醍醐味だけど、なんせ荷物になるんだよ」
「なるほどな。けど、ポップコーン食べながら移動したり、行く先々で色んな味食べたりするの楽しそうだよな」
「楽しいのは間違いないよー!結構量入れてくれるけど、みんなで食べればすぐなくなるから、色んな味試せると思うよ」
ポップコーン代はみんなで出せばいいしね。と青原さんが付け加える。
どうしようかなと悩んでいると、和田さんが提案してくれた。
「そういうことなら、ここのは私が買いたいな。入れ物可愛いし、帰ってからも使えそうだから」
「いいと思うぞ。俺も貯金箱にしてたりする」
「私も家に色んなのが置いてあるよ。中身は様々だけど」
入れ物代は和田さんが出すようなので、ポップコーン代を俺たち4人で割り勘して、和田さんに手渡す。
しばらくして、いい笑顔の和田さんがポップコーンの詰まったくまさんの入れ物を抱えて戻ってきた。
「お待たせしました」
「そんな待ってないよ。大丈夫」
「めっちゃ甘い匂いするなぁ。美味しそう」
次は激しめのアトラクションに行くことに決めて、話したり、ポップコーンを食べたりしながら歩いていった。やばい、めっちゃ楽しい。




