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幼なじみと水族館 その2


「ヒトデさんにヤドカリさんがいるよ!」

「ほんとだ、近くで見ると、色んな模様があるね」


引き続き、水族館の中を3人で探索していた訳なのだが、ヒトデやヤドカリなどと水の中でふれあうことが出来る場所に出た。


「ふ、不思議な感じだ……」


ものは試しと、ヒトデに優しく触れてみた美咲は、すぐ手を引っ込め、身体を震わせる。

美咲は周りを見ていた香織を手招きして呼び、話す。


「ほら、香織お姉ちゃんも触ってみてよ」

「えーっと、どうしようかな」


さっきの美咲の反応を見て触ろうとは思わないよな。

香織も微妙な表情をしている。恐らく、遠慮したい思いと、美咲の気持ちを大事にしたい思いでせめぎ合ってるんだろう。


「なんでぼーっと見てるの。お兄ちゃんもだよ」

「俺もか……」


飛び火した。


「ほら、2人一緒でいいから!」

「しょうがないな」

「優斗がそういうなら……」


俺と香織はゆっくり優しくヒトデに触れた。

その瞬間、ヒトデは動いて、香織のその綺麗な手の方へと向かっていった。


「ひゃっ!?」

「おぉ?」


触れる力が強かったのか、同時に2箇所に触れられて驚いたのか、理由は分からない。


「あははっ!香織お姉ちゃん、可愛い声出た〜!」

「う〜っ、もう!美咲ちゃん!」

「私のせいじゃないもーん!」


珍しく言い合う姿を見せる2人。

俺としては美咲に同意である。香織のあんな可愛い声なんか初めて聞いた。


「ありがとな〜」


俺は再びヒトデを見て、さっきよりもさらに優しく撫でた。


その後も、水族館の中を楽しんで回っていった。

特に、ペンギンのごはんタイムは良かった。ペンギンは可愛い。素晴らしい。

他にも、シロイルカのお家を見たり、アシカを見たりして行った。


気づけば一通り回りきってしまい、最後のお土産ショップにたどり着いた。


「もう終わりか〜、あっという間だったね」

「そうだな。満足感」

「お土産買って行こ〜!」


3人でショップの中に入る。美咲はあっという間に奥に入っていき、お土産を選び始めた。


「俺たちもなんか買っていこうか」

「優斗、あれ、何かな?」


そう言って香織が指さす先には、ドーム型の機械の中に、三角形のくじが飛び交っていた。

どうやら、シロイルカモチーフのぬいぐるみが当たるみたいだ。ハズレ無しで、大きさが変わるらしい。


「くじみたいだな。ぬいぐるみが当たるんだってさ。え?でっか……」


その機械の近くに行くと、景品のぬいぐるみが置いてあった。前に、香織とゲーセンで取ったのも大きかったが、それは2等ぐらいのサイズであり、1等は1.5倍ほど大きく見える。


「私、やってみようかな」

「あれ?イルカのぬいぐるみは持ってるよな?」

「うん。あれは水色なんだよね。だから、このシロイルカさんのぬいぐるみとは被らない」

「た、確かに……?」


香織は財布を出しながら、店員さんに近づき、1回お願いしていた。


「ちなみに何等狙い?」

「2等かな。1等は大きすぎるかも」

「それはそう」


香織は慎重に機械の中に手を入れ、1つ掴んだ。


「あぁ、4等だった」

「うーん、どんまい」

「こちらになります」


店員さんは手のひらに乗るサイズのぬいぐるみを持ってきた。


「まぁ、これはこれで可愛いな」

「うん……そうだね」


そう答えてくれたものの、少し落ち込んでるな。


「よし、俺もやってみるかな。もしおっきいのが出たら、交換しようぜ」


香織の次にくじに挑戦した少女たちがぬいぐるみを受け取った後に、俺も店員さんにお金を渡す。


「無心だ、無欲で引くのだ……」

「お兄ちゃんがすごく安らかな顔してる……」


商品を選び終わり、合流した美咲に引かれながらも、広げた手のひらに入ってきた1つを掴み、取り出す。


「こいっ……あっ!?」

「えっ!?」

「もしかして……」

「1等だ……」


1等と書かれたくじを店員さんに見せると、店員さんは「おめでとうございます!」といって、バカでかいぬいぐるみを持ってきてくれた。

1等が当たっちまった……と困惑していると、驚いた表情の香織と美咲の向こうで、2人の少女とそのご両親がいるのを見つけた。

よく見ると、姉妹であろう2人の少女が、俺の方を見ながら、羨ましそうな目をしているのに気がついた。


「や、やったね!お兄ちゃん!」

「すごいおっきいね……」


2人に祝福されて迎えられる。

1等なんて滅多に当たらないし、香織と約束したし、と悩んだものの、心に決める。


「香織、約束しといて、あれなんだけどさ」

「ん?どうしたの?」

「これ、後ろのあの子達にあげてもいいかな」


俺の言葉を聞いて、香織は振り向き、少女たちの姿を捉える。


「もちろん。私が当たってても、同じこと考えたと思うし。優斗の思うようにしたらいいよ」

「ありがとう。香織」


俺は少女たちの元へ行き、ご両親に声をかける。


「すみません、少しいいですか?」

「はい、どうかされましたか?」


母親に怪訝そうな顔をされたものの、2人の少女は俺の持っているぬいぐるみを見ているし、ここまで来てしまったので、続ける。


「良かったら、お2人が当たったぬいぐるみと、交換してくれませんか?」

「えっ!いいんですか!?」


俺の言葉を聞いて、両親の影に隠れるように立っていた少女が目をキラキラさせて飛び出してきた。


「うん。いいよ。大きいから、落とさないように気をつけてね」

「ありがとう!お兄さん!」


少女はぬいぐるみを抱えて、もう1人の少女と一緒に喜んでいた。そんな姿を見ると、あげてよかったと思える。


「ほんとによろしかったんですか?」

「お気になさらないでください。私もまさか当たるとは思ってませんでしたから」


そう母親と話して、離れようと思っていたら、2人の少女が俺に声をかけてきた。


「お兄さん、これ、交換」

「そうだね。ありがとう」


先程当てたのであろう、香織と同じ4等のぬいぐるみ受け取る。

お礼を言って去っていく家族に挨拶をして美咲と香織の元に戻る。


「ただいま」

「「おかえり」」


2人と合流して、美咲の持っていたお土産に、俺と香織の選んだお土産を追加して、レジへ向かい、会計をする。


「あの、よろしければ、ぬいぐるみ、もう1回引いて行ってください」

「えっ?」


会計を済ませた後に、店員さんからそう言われ、困惑する。


「先程の様子、見ていましたので。いかがですか?」

「お兄ちゃん、せっかくだし、私も引いていい?」


店員さんの意図はよく分からないものの、美咲が引きたいって言うなら、まぁいいか。

お金を出しつつ、店員さんに渡す。


「それじゃあ、もう一回だけ、お願いします」

「はい、確かに受け取りました。どうぞ」

「よーし、いくぞー!」


気合い十分な美咲は、俺たちと同じように機械に手を入れた。


「ちなみに、何等狙いですか?」

「2等!香織お姉ちゃんと交換するのは私!」


そこなのか妹よ。


「これだ!」


美咲は引き抜き、くじを取り出す。


「それでは、くじをお預かりしますね」

「えっ?」


自然な流れで、くじを開く前に美咲から受け取る店員さん。

今まで、開いてから渡してたよな。

ピラリと開いて中を確認した店員さん。


「おめでとうございます!2等ですよ!」

「ほんとですか!?やったー!」

「……」


美咲は2等のぬいぐるみを受け取り、満面の笑みで香織に渡す。


「はい!香織お姉ちゃん!」

「あ、ありがとう。美咲ちゃん」

「やったねー!」


テンションの上がった美咲は香織に抱きつき、幸せを噛み締める様子の2人。

ちらりと店員さんの方を見ると、無言の笑みとのグットサインで返された。


店員さんの気遣いで、幸せな気分になれたし、とてもいいものを見れたので、追加でお土産を購入した。

お互いにいい笑顔で店員さんと別れた。面白い人もいるもんだなぁ。

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