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幼なじみと水族館 その1

水族館に向かうべく、電車に乗る。


「水族館、楽しみだね!」

「そうだね。美咲ちゃんはシロイルカさん以外に何が見たい?」

「ペンギンさんも見たいかな〜。お兄ちゃんは?」

「俺はエイとかいたら見たいな」


水族館の楽しみなことについて話していると、あっという間に乗り換えの駅に着いた。水族館までは割と距離があるので、電車を乗り換えなければならない。


「次の電車まで、ちょっと時間あるな」

「それじゃ私、コンビニ入ってきてもいい?」

「いいぞ、行ってらっしゃい」


美咲がコンビニに入っていくのを見送ってから、香織が話しかけてくる。


「美咲ちゃん、楽しそうだね。こっちまで嬉しくなっちゃう」

「だよな。美咲は不思議な力を持っててもおかしくない」

「えー、何それ」


香織と笑いながら話して時間を過ごす。

美咲も単純だけど、俺も大概だな。


コンビニから出てきた美咲と合流し、水族館最寄りの駅へと向かうため、電車に乗る。

引き続き和やかに話している間に電車は駅に着いた。


「ついたー!」

「まだもうちょい歩くけどな」

「えー?そうなの?」


駅から10分ほど歩き、目的の水族館に到着した。


「今度こそ着いたー!」

「ワクワクしてきたな」

「そうだね。楽しみ」


3人で水族館に入り、入場料を払って、中に進んで行く。


「わぁ〜、綺麗」


中に入ると直ぐに、大きな水槽が見えてきた。


「ほわぁ〜」

「すげぇ」


俺と美咲が見上げるほど大きな水槽の前で魚たちを見ていると、香織が一言。


「2人とも、やっぱり兄妹なんだよね」

「いきなりどうした?」

「水槽を見上げる顔がそっくりで笑っちゃった」


そう言われるとちょっと照れくさい。

香織の手を引いて、美咲は奥へと進んでいく。


「ペンギンさんだ!」

「すごいね、これ」


2人が見ている水槽には、ペンギンたちが空を飛ぶかのように泳いでいる姿があり、時々上から飛び込んでくるのも見えた。


「なるほど、上と繋がってるんだな」

「そういうことだよね」

「おもしろーい!」


その調子で水槽を順番に見て回っていると、お目当てのシロイルカの水槽が見えてきた。


「かわいい」

「可愛いね」

「可愛いな」


3人で順番に感想を言ったが、内容は同じだった。

優雅に泳ぐシロイルカが可愛いんだから仕方ない。

なおもシロイルカを見る2人を尻目に、辺りを見回していると、ある看板を見つけた。


「あっ、2人とも、あれ見て」

「なになに?」

「あと少ししたら、シロイルカのショーがあるぞ。行ってみようぜ」

「もちろんいいよ」


2人の賛同を得られたところで、シロイルカのショーが行われる場所へ向かう。

そこは、ホールのような部屋になっていて、いずれシロイルカがやってくるであろう大きな水槽が正面にあった。


「バブルリングっていうのが見られるんだよね?」

「あぁ、そのはずだ」

「私、初めて見る」


しばらくして、スタッフの方が入ってきて、ショーが始まった。


「本日は、本館のシロイルカのショーにようこそお越し下さいました〜!では、早速、主役のシロイルカくんに登場してもらいましょ〜!」


スタッフの方の元気な挨拶で、大きな水槽の中に、シロイルカが入ってきた。


「やっぱり可愛い!」

「そうだね、可愛いね」

「うーん、デカイな」


その後、バブルリングをつくるシロイルカのパフォーマンスや、つくったバブルリングの中を通るパフォーマンスを見ていった。


「それでは、次のパフォーマンスは、観客の皆さんに協力してもらってもいいですか〜!?」


ホールいっぱいに入ったお客さんが答える。


「ありがとうございます!それでは、シロイルカに合図を送ってくれる人を募集したいと思います!」


その言葉を聞いて、目を輝かせた美咲。


「お兄ちゃん!手!上げて!」

「えぇ!?やるのか!?」


「それでは行きますよ〜、手伝ってくれる人〜?」


バババッとまばらに手が上がる。


「ほら!お兄ちゃん!」

「わかった、わかったよ!」


まぁ、沢山の人が手を挙げてるし、当たることはないだろう。(フラグ)


俺が手を上げようとすると、隣に座ってる美咲が、香織の手と俺の手を掴んで一緒に持ち上げた。


「おや?あそこの人たちのアピールが凄いな〜!それでは、そこの水色のワンピースを着たお姉さんたち!手伝ってくれますか?」


当たってしまった。幸い、目印として指名されたのは香織だし、必要なのは2人のようだ。


「ほら、せっかくだから行ってらっしゃい」

「いこ!香織お姉ちゃん!」

「え、えぇ〜!?」


美咲が香織の手を引いて、スタッフさんの元へ向かっていった。


「仲良しなお2人ですね〜。ご姉妹ですか?」

「えへへ、そうだと嬉しいんですけど、お隣のお姉ちゃんなんです」

「そうなんですね。今日はお2人で?」


そう聞かれた美咲はビシッと俺の方を指さした。


「いえ、お兄ちゃんも一緒です!」

「おやおや、ご兄妹の仲もいいようですね〜。不思議な組み合わせですが、お兄ちゃんとお隣のお姉ちゃんはもしかして、カップルさんですか?」


それを聞いて、そこまで美咲の横で困惑した様子だった香織が慌てて話し始める。


「ま、まだ違います!まだ、お、幼なじみ、です」

「あら〜、青春ですね〜。甘酸っぱい空気が流れたところで、シロイルカさんとも仲良しになってもらおうと思います〜」


スタッフさんが楽しそうにそう話したあと、美咲と香織はシロイルカへの合図を教えてもらい、シロイルカと仲良しになっていた。


その間、さっきの香織の言葉が気になって、シロイルカのパフォーマンスを見ていたはずなのに、まともに覚えていなかった。


「香織、まだって……言ったよな」




しばらくして、シロイルカとパフォーマンスを出来て、ご満悦の美咲と、何とか持ち直した香織と共に、ホールを出た。


「いや〜楽しかったし、面白かったね〜!」

「そ、そうだな。やっぱ可愛かったし、バブルリングも良かったな」

「ほんと、よかったね」


そのままの流れで、水族館の中を歩いて行くと、水槽の中を歩いているような通路に出た。


頭の上を様々な魚たちが泳いでいく。


「すっげぇ……」


周囲の魚たちを楽しみながら歩いていくと、直ぐに通路を抜けてしまった。


「今の通路、凄かったな」

「ほんとだね〜。綺麗だった」


俺が感想を言葉にすると、美咲からは返答を貰えたものの、香織はぼーっとした様子で黙っていた。


「香織?」

「あっ、ごめん。どうしたの?」

「さっきの通路、凄かったね〜って話してたんだよ」

「そうだね、綺麗だったな」


どこか香織らしくないその言動に、体調でも悪いのかと、心配になった。

美咲が次の水槽に向かっていったタイミングで、香織に聞いてみる。


「香織、大丈夫か?」

「えっ?どうして?」

「なんか心ここに在らずって感じしてるぞ。体調とか、崩してないか?」


そう聞くと、香織は首を横に振って答える。


「ううん、そんなんじゃないの。ただ、すごくキラキラしてて、見とれてただけ」

「なるほどな。確かに、さっきの通路凄かったもんな。まぁ、体調とか、なんかあったらすぐ言ってくれ。遠慮することないからな」


香織は微笑んで「わかってるよ。いこ?」と言って、美咲に合流して行った。

何ともないなら良かったと安堵しつつ、俺も2人の元へ向かっていった。

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