幼なじみと修学旅行
つい先日、休み明けテストのために、勉強会をしていた訳だが、休み明けテストと言う名前がついていながら、夏休み明けから1週間の猶予が用意されている。
これは、宿題の回収やら、先生方の負担軽減やらの理由もあるようだが、1番大きいのは、修学旅行が9月の終わりにあることだろう。
修学旅行もあり、テストまでの猶予もあるので、ラッキーだ。
「うっし、この時のための布石だからな」
そんなことを考えていると、修学旅行の行動班のメンバー決めの時間になっており、谷本が隣にやってきていた。
「布石?」
「そうだよ。修学旅行の班のメンバー決めの時に困らないためにクラスに馴染むよう言ってたんだからな」
「なるほど?」
「最近橋崎もクラスに馴染んできてるし、仲いいヤツも増えたろ?班決めで困ることが無くなって良かったな」
確かに、1年の時のままなら、どの班にも入れず、地獄の時間になっていた気はする。
「谷本くんと橋崎くん、こっちこっち!」
青原さんが俺たちを呼んでいたのでその場へ向かう。
「男女の人数的に、どっかは男女混合にならないとだから、私たちがそうしようよ」
「俺はいいけど、彼女は大丈夫?」
俺は青原さんの隣にいる女の子を示しつつ、問いかける。
「だ、大丈夫です。桃ちゃんからいい人たちだって聞いてるので」
そう言葉では言っているものの、不安げな様子なので、谷本に耳打ちする。
「なぁ、ほんとに大丈夫かな」
「うーん、本人がこう言ってるし大丈夫なんじゃないかな。多分、青原と同じ班になりたいんだろうし」
「あぁ、なるほど。確かによく一緒にいるイメージあるわ」
「てか、橋崎お前、名前覚えてるよな?」
「谷本に言われてから覚えるようにしてるから大丈夫だ。和田さんだろ?」
一応去年から同じクラスの女の子だったはずだ。お互いにあんまり目立たないから、関わりはなかったと思うけど。
「今4人だよね?僕もこの班でいいかい?」
「佐々木も来たのか。部活の方のメンツで集まらなくていいのか?」
「まぁね。色々考えてたけど、人数オーバーしちゃったから」
「これで5人だね!決定!」
そうして、俺、谷本、佐々木、青原さん、和田さんという5人班で行動することになった。
修学旅行では、東京周辺が目的地となっており、世界一の電波塔だったり、夢の国だったりに行くことになっている。
5人で選択できる活動や場所の話し合いをしていく。割とスムーズに話が進んで行ったが、唯一、ぶつかったことがあった。
「やっぱ夢の国は陸だろ!」
「いいや海だね。海の方が絶叫系アトラクション多いじゃん!」
「陸だってジェットコースター系のアトラクションあるだろ。夢の国感が強いのもいい」
割と夢の国に詳しい谷本と青原さんが陸と海どちらに行くかで揉めてる。どっちでも楽しいと思うけどな。
「3人はどっちなの!?どこ行きたいとかない?」
青原さんによって俺たちにも飛び火してきた。
「わ、私はくまさんに会いに行きたいかな……」
「よし、陸派確保」
「ぐぬぬ…2人は!?」
「僕はどっちでも…」
「俺もどっちも楽しそうだと思うんだよな。選ぶの難しいわ」
その調子で話し合いは続き、結果的に多数決で陸を選ぶことに決まった。
結局、決まったのは夢の国についてだけで、ホームルームの時間は終わってしまった。
テストまで1週間も猶予をくれた理由がわかった気がした。これ色々決まるまで思ってたより時間かかるやつだ。
その日の帰り道、昨日と同じように香織と待ち合わせ、一緒に帰る。
「今日、修学旅行の話があったんだ〜」
「香織も?俺もだ」
今日あったことを話しつつ、帰っていく。
「香織の学校は修学旅行いつなんだ?」
「9月の終わりの方。東京に行くんだ」
「えっ、そうなのか?同じだ」
こんな偶然あるもんなんだな。
目的地が被ることはあるだろうけど、日にちまで同じなんて、凄い確率だな。
「あーあ、優斗と一緒に修学旅行行けたら良かったのになぁ」
「確かに、香織と一緒も楽しそうだな」
夏休みの旅行も楽しかったし、色んなとこに行ってみたいな。
「じゃあ、いつか、一緒に旅行の計画立てようね」
「そうだな、卒業旅行みたいな感じか」
「うん、その時が楽しみだな〜」
気の早い香織の横顔を見つつ、その旅行は、2人で?という問いかけの言葉を飲み込み、話題を修学旅行に戻す。
「修学旅行で、夢の国に行くんだけど、陸か海かで青原さんと谷本が揉めてさ」
「へぇー、なんか意外だね。どっちになったの?」
「陸になったよ。半日自由行動だし、楽しみ」
「陸?私達も陸にしたんだ。もしかしたら、どっかで会えるかもね」
もしそうなったら、楽しそうだけど、色々谷本たちに言われそうで、複雑だな。
お互い、修学旅行を楽しめたらいいなと思いながら、残りの帰り道を歩いていった。




