幼なじみと友人とお出かけ
「香織、おまたせ」
「うん、行こっか」
今日は谷本や佐々木たちと約束したお出かけの日だ。
結局、佐々木の彼女さんも参加するみたいで、総勢6人でのお出かけである。
なかなかない大人数でのお出かけに楽しみなような、不安なような気分になりながら、香織と一緒に駅へと歩く。
「今日は街の方にある、色んなスポーツで遊べるお店に行くんだよね?」
「あぁ、あとカラオケとかな」
香織の通う学校方面にあるお店で、ボーリングやダーツ、カラオケ、ゲームセンターなど、色々なことができる施設だ。1日遊び放題チケットを買って、遊びまくる予定となっている。
そのため、午前から集合の約束だ。余すことなく遊んでやるという気概を感じた。
集合場所はそのお店の最寄り駅となっているので、香織と一緒に電車に乗って向かう。
「香織、大丈夫だと思うけど、なんか嫌な思いしたらすぐ言ってくれよ」
今日は大人数なので、海の時のようなことは起こらないと思うし、参加する男子も1人は谷本で、もう1人は彼女持ちだから、大丈夫だろうが、保険はかけておきたい。
「もう、心配症だなぁ。大丈夫だよ。何かあったらすぐ優斗に伝えるから。頼りにしてる」
「あぁ、そうしてくれ」
そう微笑む香織。ここまで一緒に歩いていたのに、今更遅れて、俺があげたシュシュをつけていることに気づく。
嬉しい思いと照れくさい気持ちに挟まれ、香織から視線を外す。
「あっ」
「やべっ」
俺が視線を外した先に、谷本と青原さんの姿が見えた。谷本に至っては目が合った。声も聞こえた。
谷本が慌てて視線を外して誤魔化そうとするのが見えたので、行動を起こすことにする。
「はぁ……香織、ちょっと一緒に来てくれるか?」
「うん?わかった」
スタスタと電車の中を歩き、谷本が座っている席に向かう。
「お、おう、おはよう。橋崎くん」
「誤魔化すな、面白がるな、声かけろ」
「おー、五七五だ」
谷本のところへ着くと、青原さんと、佐々木もいることに気づいた。と、いうことは。
佐々木の隣に座る女の子の様子を見る。
「あれ、怯えてる……?」
「あ〜、橋崎、佐々木の彼女怖がらせた〜」
「あ、ごめん。谷本にしか怒ってないから、安心してくれ」
「だ、大丈夫、です。はじめまして……」
「俺は許されない、か」
第一印象最悪だったかもな……と後悔していると、電車が目的の駅に着いた。
「まぁ詳しい自己紹介とかは、降りてからにしよう」
「そうだね」
そう言って電車をおり、駅を少し出たところで止まり、話し始める。
「えっと、紹介するな。幼なじみの中村香織さんだ」
「初めまして、中村香織です。これからよろしくお願いします」
普段、俺が見る笑顔よりも、少し固めな表情で自己紹介する香織。よそ行き用ってやつかな。
「わぁ、谷本くんが言うのも分かるな〜。私は青原桃って言います。よろしくね」
「佐々木奏汰です。よろしく。こちらは僕の彼女の」
「七海結です。皆さん、おふたりとも、よろしくお願いします」
「うん。よろしくお願いします」
そう言って、香織が七海さんと話し始めたので、俺は気になったことを聞いてみる。
「なぁ、4人は友達だったりするのか?」
「うん、そうなの。とは言っても、谷本くんはちょっと前に仲良くなったばっかりで、奏汰と結と私は幼なじみなんだ」
「えっ、そうだったのか」
そりゃ仲良く見えるわけだ。
その後も話しながら、目的のお店へと6人で向かう。
「とりあえずチケット買わなきゃだね。私買ってくるから、お金集めるよ」
「せんきゅー」
青原さんはムードメーカーというか、リーダーというか、まとめ役みたいな感じがして、こういう時いると助かるな。
「買ってきたよ〜。はい、これ付けてね〜」
青原さんは買ってきたバンドのようなものをみんなに配っていく。
「最初何やる?」
「やっぱりボーリングじゃね?」
「いいね。3人もいいかい?」
佐々木は俺と香織、七海さんにも確認を取る。
コクコクと頷く七海さんに合わせて俺たち2人も頷く。
「よーし、それじゃ予約入れるね。ちょっと待ち時間あるけど、どうする?」
「僕と結はゲームセンター行きたいけど、どうかな」
その提案で、ゲームセンターへと向かうことになり、向かっていく。
「おっ、音ゲー発見!橋崎、勝負だ」
谷本の指さす先には、ドラム式洗濯機のような形の音ゲーがあった。俺たちにとってはお馴染みである。
「しょうがない。受けて立とう。みんなは見て回ってていいぞ」
「わかった。中村さん、普段ゲームセンターとかよく来るの?」
「うーん、あんまりかな。たまに優斗と一緒に来るくらい」
香織を気遣ってくれる青原さんに感謝しつつ、谷本に勝つべく、音ゲーに向かっていった。
「しゃぁ!俺の勝ち~」
「最後の曲だけじゃねぇか」
3曲遊んで、2曲は俺が勝ったのに、最後勝ったからと調子に乗る谷本。
「まぁいいや。俺景品見てくるからな」
「おけ、俺はもうちょい音ゲーで遊んでから行くわ」
そう言って谷本と別れ、UFOキャッチャーの方へ行き、景品を眺めながら歩く。
よく行くゲームセンターよりも広いし、色んな景品があるから、見てて面白い。
「ん?あれは……」
俺の歩く通路の先で、七海さんがUFOキャッチャーをやっているのが見えた。どうやら一人でやってるみたいだな。
ちょっと様子を見てみるか、と七海さんに近づく。
「調子はどう?取れそう?」
「ひゃっ、あ、橋崎くん」
「あっ、ごめん、驚かせたな」
驚かせてしまったことに罪悪感を覚えつつ、UFOキャッチャーの様子を見る。
「もしかして、取れなくて困ってる?」
「あっ、はい。欲しいなって思って、やってたんですけど、上手くいかなくて」
その言葉を聞いて、景品の位置やアームの様子を見て提案する。
「1回、やってみてもいいかな?」
「もちろんです、どうぞ」
七海さんの許可を得て、チャリンと100円を入れる。
景品のピンクの悪魔をよく狙って持ち上げる。
残念ながら、少し持ち上げてから、ストンと落としてしまった。
「あぁ、さっきから、こんな感じなんです」
「わかった」
今度はピンクの悪魔の足を狙って持つ。足だけを持って、引きずるように穴へ寄せる。
「ち、近づきました!」
「あとは上手く持ち上がってくれれば取れるかも。はい、七海さんの番」
「わ、分かりました」
七海さん慎重という言葉が似合うほど丁寧に少しずつ調整して、アームを下ろした。
上手いこと持ち上がって、取り出し口に落ちてくる。
「やった!取れました!」
「おめでとう。良かったな」
「ありがとうございます。橋崎くん。最初、怖がってごめんなさい。いい人、ですね」
「誤解が解けたならよかったよ」
嬉しそうな七海さんと話しつつ、他のみんなを探して歩く。
直ぐに青原さんと香織が見つかり、その後に佐々木と谷本とも合流した。
「橋崎、結の持ってるぬいぐるみ、取るの手伝ってくれたんだって?ありがとう」
「いやいや、大したことしてないよ。七海さんが頑張って取ったわけだし」
そう話しながら、ボーリングの待合室に戻った。
次はみんなでボーリング対決である。
各々シューズを借りて、用意されたレーンへと向かっていった。




