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幼なじみとトレーニング


「ふぁ〜……眠た……」


祖父母から帰ってきた翌日の朝。俺は目を擦りつつ、なれない早起きをしていた。

学校に行く日よりも遅い時間ではあるが、休みの日に早く起きるということにはなんとも言えないだるさがある。


そんなだるい思いをしながらも、何故早起きしたのか。その理由は、旅行の中で足りていないと感じた力を付けるためである。

筋トレから始めていこうと思ったが、ついでに体力もつけておきたいと思い、ランニングもすることにしたのである。


「あら、早いのね。おはよう」

「おはよう、母さん」


朝の準備をしてからリビングに降りると、母さんが朝ごはんの準備をしていた。


「朝ごはん食べる?」

「うん、軽く食べる」


母さんに用意してもらった朝ごはんを食べ、動きやすい格好に着替え、家を出る。


「とりあえず、準備運動からだな。本格的に暑くなる前にやんないと」


屈伸やストレッチなど準備運動をしていると、隣の家のドアが空いた。


「行ってきます。ってあれ?優斗?そんなとこで何してるの?」


図書館に行って勉強する気だったのか、見覚えのあるカバンを肩にかけている。


「ん?ちょっと運動しようと思って。準備中」

「へぇ〜、優斗にしては珍しいね。えらいじゃん」

「うっせ」

「そうだ、もうちょっと準備運動しててよ」


そう言って家に戻っていく香織。まさか、着いてくる気か……?

俺の返答も待たずに行きやがって。

それからしばらく、準備運動や軽いダッシュなどをしていると、着替えてきた香織が出てきた。


「お待たせ〜」


動きやすい格好に着替え、下ろしていた髪を後ろで結んだ姿で出てきた。


「やっぱり着いてくる気だったか」

「別に、暇だったからね。いいでしょ?」

「ランニングしようと思ってたんだけど」


ちょっとペース早めで走ろうと思ってたけど、プラン変更かな。でも緩めすぎるとトレーニングにならないしな……どうしようか。


「あれ?もしかして、部活みたいなトレーニングするつもりなの?」

「あー、まぁな。ちょっと体力とかつけたいなと」


なんでバレたんだと思っていると、俺の心を見透かしたように香織は話す。


「そんな入念に準備運動してたらわかるよ。なんかキツイ運動しようとしてるんだろうなって」

「そりゃそうか」

「それで、私がついてきたら、プラン変更かな〜とか考えてたんじゃないの?」

「なんでそんな察し良いんだよ」


俺の考えてる事はおみとおしってか。

自慢げな表情で香織は答える。


「ふふん、優斗のことだもん。わかるよ。それと、私に合わせてプラン変更する必要はないよ」

「えっ?」

「だって、筋力とかは分からないけど、体力は、私の方があるし。最近までバト部で活動してたんだから、当然でしょ」

「た、確かに」

「ほら、始めよ?あんまりペース遅かったら、私が置いていっちゃうからね!」


話しながら準備運動をしていた香織はそう言って俺の背中を押して走り始める。


「河川敷の方にでて、ランニングコース走って、反対側から帰ってくるコースでいいよね?」

「あぁ、そのつもり」


この辺りに住んでいる人にとってはお馴染みのコースと言えるだろう。

呼吸を意識しながら走っていく。

おおよそ3分の1ほど走ったところで、香織が話しかけてくる。


「うん、いいペースだねぇ。割と走れるじゃん」

「なんで、そん、なに、余裕、そうなん、だよ!」


俺に楽しく話す余裕なんてないのに、香織は微笑みながら話せる位の余裕があることが悔しい。

体力も筋力も鍛えることを改めて誓いながら、走り続ける。


その調子で3分の2辺りまで来た。あと3分の1。何とかペース維持して走れそうだな。


「優斗、いい感じだね。それじゃ、あと少しだし、ちょっとペース上げよっかな」

「!?」

「優斗は無理しなくていいからね!」


香織はそう言って、グッと足に力を込めてペースを上げ始める。

香織には着いてこなくてもいいとは言われたけど、ここで置いていかれる訳には行かないだろ!

それから残りのコースを、必死に香織に離されないようについて行った。


「ぜぇ……ぜぇ……ぜぇ……」

「ふぅ、ふぅ……よく頑張ったね〜」


こんなに、疲れる予定じゃなかったのに。ラストスパートで疾走し始めると思わないだろ。普通。


「久しぶりに走った気がするよ。いい運動になった」

「た、立ち直り、早く、ないか?」

「慣れてますから」


そう言って、香織はささっと家の中に入り、スポーツドリンクを2本持ってくる。


「はい、優斗。ちゃんと飲まないと、熱中症になっちゃうよ」

「さ、さんきゅ」


ごくごくと貰ったスポドリを飲む。キンキンに冷えてる。美味すぎ。

日陰に入り、しばらくそうしていると、香織が口を開いた。


「優斗はさ、なんで体力つけようと思ったの?」


俺はそう香織に聞かれて、なんて答えようか迷った。正直に言うのは恥ずかしいし、かと言って嘘をつくのも嫌だ。

少し考えてから、俺は答える。


「香織や、美咲と旅行の時みたいに遊ぼうと思ったら、体力が足りてないなって思ったんだよ。もっと色んなことしていくなら、体力はあった方がいいだろ」

「それはそうだね。そっか、これからのため、か」


「よし!」と膝に手を当てて勢いよく香織は立ち上がり、俺の方を見る。


「筋トレとかは、男子と女子でちょっと違うかもだからわかんないけど、体力を鍛えることは、私がコーチしてあげよう」

「へ?」

「また、こうやって一緒に走ったり、運動したりしようよ。私も付き合ってあげる」

「いや、香織には香織がやりたいこともあるだろ?悪いよ」


慌てて断りを入れようとする。香織たちのためのトレーニングで、香織に迷惑かけてどうするんだ。

しかし、香織は引き下がることなく、俺を説得し始める。


「ほら、1人でやるより、2人でやった方が長続きするでしょ?あと、優斗は、マネージャーに背中押されて頑張る系のアニメ好きでしょ?私がやってあげるよ」

「確かに、好きだけども」


あれ、いつの間に俺の趣味バレてんだろ。確かに漫画貸したり、おすすめのアニメの話したりしたけど、そんな分かりやすかったかな。

どこまで俺の趣味がバレてるのかヒヤヒヤしながら、にこにこと微笑む香織を見て、「よろしくお願いします」と答えた。


勉強でも、運動でも、香織に先生して貰うことになってしまった。少しでも早く、隣に立てるように、努力を続けていこうと、俺は誓った。

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