幼なじみと布団の上で
投稿が遅れてすみませんでしたm(_ _)m
理由としましては、とある村に渦巻く怨念からの脱出を試みていたことが挙げられます。
今後もペースをできる限り変えずに、最後まで行きたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
家での花火も終え、明日も早いため、寝る準備を始め、布団を敷いた。
俺は今、自分の寝る布団の上で座っているのだが。
「香織お姉ちゃん、明日も沢山遊ぼうね!」
「そうだね、明日も楽しくなるといいね」
俺のすぐ隣の布団で談笑する美咲と香織。
「ほんとにこの分け方で良かったのか……?」
遡ること2時間弱……
* * *
「さて、そろそろ寝る準備始めようか」
「えー、まだ遊びたーい」
花火を終え、俺たち家族と香織はトランプで遊んでいた。
大富豪やババ抜き、神経衰弱など、色々とやったが、割とボコボコにされた。
「明日は夏祭りに行くんだろう?早めに寝ておかないと、明日の夜元気に遊べないよ」
「はーい……」
そうは言いつつ、まだ納得しきれてない美咲。
美咲は少し考える素振りをした後、ハッと顔を上げて提案をした。
「ならせめて、香織お姉ちゃんと隣で寝たい!」
「私はいいよ」
「やったー!」
そう言って、意気揚々と寝る準備をする美咲。
単純なヤツめと思いつつ、自分も歯磨きをしていると寝る場所の話になっていった。
「部屋は2つ使えるから、2組に分かれよう」
「じゃあ親と子どもで別れましょうか」
「ぶふぅ!?」
「優斗!?」
予想してなかった分け方をする母さんに驚き、口に含んでいた歯磨き粉を吹き出しかける。
「……そこは、性別で分ければいいんじゃ?」
「当然、それも考えたのよ?けど、優斗と香織ちゃんが近くに寝て、何か問題が起こる確率よりも、香織ちゃんが私と美咲と一緒に寝ることでかかるストレスの方が大きそうじゃない?」
「それ自分で言っちゃうのか……」
「香織ちゃんが1番環境に慣れてないんだから、香織ちゃんが1番安心できるようにするべきじゃないかな」
父さんの一声で香織に視線が集まる。
「た、確かに、安心できた方が嬉しいですけど、それは誰と同じ部屋でも安心はできますから。優斗や美咲ちゃんが納得出来る分け方で大丈夫ですよ?」
「と、いうことは、香織ちゃんは、優斗と一緒の部屋で寝ること自体は嫌じゃないってことね」
「はい、嫌じゃないですし、安心できます」
香織の言葉を聞いて、俺はギョッとしながら香織の方を見ると、香織はきょとんとした表情で首を傾げて、俺が慌てて見てきたことを不思議に思っていそうだ。
「それなら、あとは優斗が納得するだけよ」
「いや、それはなんというか、ダメだろ」
「どうして?優斗は香織ちゃんが嫌がることをしないってことは、私たちも、香織ちゃんも、香織ちゃんのご両親もわかってるのよ?」
「お、おう……」
あらゆる方向からの信頼が厚い!もう逃げ道なくなってないか?
「それに、なんだかんだ言っても、1番安心できるのは1番付き合いが長い人でしょ?」
「それは、そうだろうけども」
「じゃあ優斗と美咲じゃない。まぁもちろん?優斗が香織ちゃんと一緒の部屋は嫌だって言うなら、性別で分かれてもいいわよ?」
「うっ……」
ちらりと香織の方を伺うと、困ったような、心配そうな表情でこちらを見ていた。
もうこうなってしまったら仕方ない。相変わらず香織に甘いことを自覚しつつ、答える。
「……わかったよ、嫌じゃない。いいよ、それで」
「決まりだね。さぁ、明日も朝から出かけるんだろう?早めに寝るようにね」
* * *
そして今に至るわけなのだが。
俺よりも先に素早く寝る準備を済ませた2人が先に布団を選んだことによって、左から美咲、香織、俺という順番で川の字で寝ることになっている。
2人が今日楽しかったことや明日のことについて話しているが聞こえてくるが、なんだかいたたまれないので、あまり反応はせず、2人に背を向けて布団に寝転がる。
そういえば明日は何する予定なんだっけか。夜は夏祭りに行くって聞いたけど、午前中とか昼間は何やるんだろうな。去年は海に行ったり、じいちゃんの草刈り手伝ったりしたけど、香織もいるし、違うことするのかもな。
そんなことを考えていると、気づけば2人の会話は聞こえなくなり、小さな寝息がきこえてくる。
「優斗?もう寝ちゃった……?」
どうやら香織はまだ寝ていないようで、寝てしまった美咲を気遣うような小さな声が聞こえた。
俺は、そのままの体勢で答える。
「まだ起きてるよ、どうかしたか?」
「優斗、同じ部屋で寝ること、まだ気になってるかなって思って」
そりゃ気になってないって言ったら嘘になる。健全な男子高校生にとって、気心しれているとはいえ、異性の魅力的な同級生と一緒の部屋で寝るというのはなんとも心休まらない状況なのは確かである。
返答に困っていると、香織は続けて話し始めた。
「……やっぱり、気にしてるよね。無理言って、ごめん」
俺としては、香織に謝ってもらうことは本意ではないため、慌てて振り向いて、口を開こうとする。
「かお……」
謝らないでと伝えようと、名前を呼びながら振り向くと、布団に寝転がって、こちらを見ている香織と目があった。
普段ではありえない状態で、香織と話しているのだと意識してしまい、言葉に詰まってしまった。
眠気を感じているのか、少しとろんとした目や、少し体を丸めているところなど、あげたらキリがない。
「優斗?」
そんな俺の状態を知らない香織は、俺の言葉の続きを待っている。
「あ、えっとな……俺は、香織と一緒の部屋で寝るのは嫌じゃないよ。こうやって話しながら寝るのは楽しそうだしな。ただ、今の状況を飲み込めてないだけなんだよ。男と一緒の部屋ってところに、香織は不安もあるかもだけど、俺は、みんなからの信頼は裏切らないようにするから、安心してくれ」
「ほんと?良かった、嫌なのかと思っちゃった。それに、心配はしてないよ」
「へ?何も警戒してないのはそれはそれで問題な気がするんだが」
「優斗だからだよ。だって、優斗は私を守ってくれる方でしょ?だから、私は安心して寝れるの」
いつも日中に見る笑顔とは少し違う、いつもよりも柔らかくて、油断しているような笑顔でそう言う香織。
俺は香織の笑顔に見とれて、言葉が出てこなかった。
「それじゃ、寝よっか。おやすみ、優斗」
「あ、あぁ、おやすみ、香織」
そう言って目を閉じる香織。しばらくして、穏やかな寝息が聞こえてくる。
俺の方は、最後の笑顔にやられて、なかなか寝付けなかった。




