幼なじみとバーベキュー その1
道の駅から車を走らせ、お昼前の時間に祖父母宅に到着した。
「あら〜、いらっしゃい」
「よくきたねぇ」
「じいちゃん、ばあちゃん、久しぶり」
「お久しぶりです」
祖父母と挨拶をしつつ、玄関に入っていく。
「その子が言ってた子かい?べっぴんさんだねぇ」
「ありがとうございます。しばらくお世話になります」
「ゆっくりしていくんだよ」
車から荷物を下ろし、香織の顔合わせも終わったので、昼ご飯の準備をすることになった。
「今日のお昼はバーベキューにしようか」
「やったー!お肉お肉!」
「優斗、香織ちゃん、私たちが買い物行ってる間に、準備をしてくれるかい?」
「わかった。机とか椅子、あとは炭おこしくらいだよな?」
「そうだね。頼んだよ」
そう言って、両親とじいちゃん、美咲は車へ向かっていく。
「香織、買い物行かなくて良かったのか?」
「うん。優斗1人じゃ大変だろうし、予定を優斗のお父さんに聞いてたから、こっそりお願いしてたんだ」
「そっか、ありがとな」
香織と2人で話していると、さっきのソフトクリームのことが思い出されて、少し気まずくなる。
「あのさ、さっき、ごめんな」
「ん?もしかして、ソフトクリーム食べてた時の話?」
「あぁ、美咲のわがままに付き合って貰っちゃって、ほんと、嫌じゃなかったか?」
「もう、その時も言ったけど、別に嫌じゃないから、気にしないで。それとも、もしかして、優斗なら嫌だったの?」
「えっと……」
それは、香織と美咲と楽しく過ごすことなのか?それとも、関節キスの、ことか?
「俺も、嫌じゃない」
「なら、もういいでしょ?せっかく楽しいお出かけなんだし、もやもやしてたらもったいないよ」
準備始めよ?と微笑みながら俺に声をかけてくれる香織。俺は香織に促されるままに準備を始めた。
「よし、まずは何からする?」
「1番時間かかることからだな。炭おこしだ」
家の横にある小さめの倉庫の鍵をあけ、中に入る。
「あっ、香織。中は埃っぽいし、服とか汚れたらいけないから、外で待っててくれ」
「別に大丈夫だよ?手伝うよ」
「せっかく似合ってるんだから、汚れたらダメだろ」
だから外で待っててくれ、と倉庫に入りながら言う。
うん、と小さく答える声は俺の耳にも届いたが、香織の照れているような、少し頬を赤らめた表情には気づかなかった。
倉庫の中から、バーベキュー用のグリルと炭を見つけ、倉庫の外に出す。
「お待たせ、香織」
「ううん、大丈夫だよ」
このままグリルや炭を運んでもらったら結局汚れちゃうよな、と考え、香織にお願いをする。
「香織、ばあちゃんに使わない新聞紙貰ってきてくれるか?玄関のとこに持ってきてくれ」
「わかった。行ってくるね」
香織が家の中へばあちゃんを探しに行ったのを確認しつつ、グリルと炭を玄関の当たりに持っていく。
「持ってきたよ〜」
「さんきゅ、そしたら、陽の当たるとこに広げてくれ。その上に一旦炭を置いて乾かすから」
倉庫の中は湿度が高く、炭が少し湿気ってしまっているため、乾かす必要があるのだ。
「俺は炭を必要な分くらい乾かしていくから、グリルを軽く水洗いして綺麗にしてもらっていいか?」
「わかった。洗剤とかはいいの?」
「うーん、結局炭やら油やらで汚れるし、前回綺麗にしてからしまってるから大丈夫だろ。その上から綺麗な網置くわけだし」
「それもそうだね、わかった」
俺は必要な分炭を並べた終わったので、次の準備をし始める。
「優斗、綺麗になったよ」
「おっけ、そしたら、炭の横の方で乾かしといてくれ。ありがとな」
「わかった、その後は?」
「えっと、俺が倉庫から椅子とか机出してくるから、それを拭くための除菌シートとか雑巾をばあちゃんから貰ってきてくれるか?」
「まかせて」
俺は倉庫に入り、1人用の椅子を3つと、長椅子を2つ、真ん中に四角い穴が空いた机を取り出す。
「ふぅ、こんな重かったっけ……?」
筋力が落ちているのかな、と思ったが、前回は父さんと出したんだったかと思い出し、納得しつつ、引き続き運ぶ。
「持ってきたよ……って大丈夫!?重たくない?」
「重い……」
まだバーベキュー予定の場所まで運べていないが、先に拭いて綺麗にしてから、2人で運ぶことにした。
「もう、無理しちゃだめだよ?怪我したら元も子もないんだからね?」
「悪かったよ。次からちゃんと香織に頼むから許してくれ」
「うん、よろしい。気遣ってくれるのも嬉しいけど、私にも手伝わせてね」
「充分助かってるよ」
香織と一緒に椅子と机を綺麗に拭いていく。
黙々と綺麗にしていると、香織が引き続き机を拭きながら、声だけで聞いてきた。
「ねぇ、優斗?さっき言ってたの、ほんと?」
「さっきって?」
「私に、服似合ってるって言ったでしょ?それ、ほんと?」
必死に思い出そうとするが、いつ口を滑らせたのか、分からなかった。だけど、ここで誤魔化すのは、違うなと思ったので、正直に伝えることにした。
俺は照れているのを隠すように香織から顔を逸らしながら、答える。
「あぁ、ホントだよ。よく似合ってると、思う。香織らしくて、いいと思うよ」
「……そっか。ありがとう。すごく嬉しい」
その後も2人で綺麗にした後、玄関の方へ机や椅子を、一緒に運んで行った。
少しの間、顔が熱くて、俺も香織も、お互いを直視出来なかったのは、言うまでもない。




