幼なじみとそれぞれの休日 優斗視点
香織と一緒に高校に行ったり、寄り道したりした日から数日経ち、週末となった。
高校の友人である、谷本達との遊ぶ約束の日である。
お昼を食べてから集合との事だったので、お昼すぎに着けるように電車に乗って最寄り駅へ向かう。
駅に着くと、既に青原さんが待っていてくれた。
「おはよう、青原さん」
「おっ、来たね。おはよ!」
青原さんはさん付けしなくてもいいんだよ?付け加えながら挨拶をした。
テニスのものと思われるラケットが入るバッグを持っており、なかなかの大荷物だった。
「ラケット持ってるけど……今日は何する予定で?」
「ここから、さらに二駅行ったところに、スポーツセンターがあるの知ってる?あそこのコートが借りれたから、今日はテニスしようよ」
「言ってくれたら俺もラケットとかボール持って来てたぞ」
「まぁまぁ、割と急に私が誘ったからね。今日は私が準備したかったの!」
「それはありがたい。ただ、俺の気も済まないから、その重そうな荷物は俺が持つな」
青原さんに向けて手を出しながらそう言うと、びっくりしたような表情をした後に「わかった」と渡してくれた。
その後も話していると残りの2人もやってきたので、再び電車に乗って目的地に向かっていった。
想像通り割と重たかったバッグを背負いつつ、不安になってきたので相談してみる。
「なぁ、今日テニスやるって話だろ?この4人の中だと俺圧倒的に実力不足感あるんだが」
青原さんと谷本はテニス部だし、佐々木はバレーでエース級の活躍してるらしいし。俺も中学はテニスやってたけど、ブランクがすごい。
「まぁまぁ、ワイワイやればいいじゃん」
「そうそう、バシバシ走らせてやるよ」
「青原さんと谷本で言ってること違いすぎない?」
ワイワイと話しているうちに、駅に着き、スポーツセンターへと向かっていった。
「おぉ〜、結構いいコートだな」
「だよねぇ。大会とかで使うけど、やっぱり全然違うんだよねぇ〜」
コートに入り、バッグを青原さんに返す。
テキパキと準備を進めて、いざテニスである。
「ちょっとは手加減したらどうですかね!?」
「してるしてる。ほれほれ」
最初は谷本と俺、青原さんと佐々木で打ち合うことにしたのだが。
「最初っから打ち込んで来るなよ!」
「まだまだこんなもんじゃないべよ」
「だぁぁ!変なとこ行った!」
俺、ボッコボコである。感覚取り戻すまもなく谷本に遊ばれてる。
「行くよ〜」
「おう!ばっちこーい」
ポンポンと軽く打ち合ってる佐々木たちが羨ましい。
同じコートにいるのに右側と左側の差がすごい。
その調子で打ち合ってしばらくして、ダブルスで試合することになった。
まずは谷本佐々木ペアと青原さん俺ペアで試合する。
「頑張ろーね!」
「できるだけ足引っ張らないように頑張るよ」
「うし、橋崎走らせて勝つぞ」
「谷本ってこういう時割と容赦ないよね」
さっきまで谷本にボコボコにされた甲斐があって、感覚取り戻して来たので、何とかついて行きつつ、試合が進んで行った。
その後もペアを変えて試合を続けて、気づけばコートの使用時間が終わろうとしていた。
青原さんと佐々木とも仲良くなれた感じがする。たまにあだ名で呼ばれてた気がするし。
もう時間もないのでコート整備をして、次の人達と入れ替わる。
「いやぁ〜楽しかったね〜!」
「だな。橋崎、あんなこと言ってたけど動けてたじゃんかよ」
「限界近いわ……」
「橋崎、水分ちゃんと取ってな」
「佐々木、さんきゅ」
さすがに普段から部活に取り組んでるだけあって、3人はまだ余裕そうだが、俺は疲労困憊である。
「これからどうする?ちょっとどっか寄ってく?」
「そうしようぜ、小腹すいたし、話したいこともあるしな」
「それじゃあ、あそこのカフェでどうかな?」
次の目的地について話す3人について行き、オシャレな雰囲気のカフェに入った。
案内された席に座り、それぞれ好きな飲み物を注文して、話始める。
「それにしても、橋崎は友達になってみると、全然印象が違うね」
「私もそれ思った。全然いい人だし、今まで話してなかったのが疑問なくらいかも」
「えぇ?そうか?」
「こいつ、最近変わってきたからな。去年までは、2人の想像通りに近いと思うぞ」
また谷本がいらないことを言ってるが、今はテーブルを挟んで向こうにいるから止めようにも止められない状態である。
「そして俺の読みでは幼なじみが関係してると思うんだけど、そこんところどうなんですかね?橋崎くん」
「へぇ〜、橋崎くん幼なじみいるんだ」
「うーん?自分じゃあんまわかんないけど。関係あるっちゃ関係あるのかも」
そう言うと谷本は身を乗り出して続けて話す。
「いやいや!去年までのお前なら今日みたいな誘いだって断ってたと思うぞ?きっと、そもそも遊びに誘われるような関係まで進んでないぞ」
「まぁそれはそうかもな」
「ほら、なんかきっかけがあったんだろ?あの子と」
「あの子?谷本は橋崎の幼なじみ知ってるの?」
やばいと思ったものの、まぁこの2人なら大丈夫か、と思い、そのまま聞き手に徹する。
谷本は俺を親指で刺しながら続けて話していく。
「こいつ、この間部活の水やりに来てたんだけど、その幼なじみと一緒だったんだよ」
「えー?今まで知らなかったってことは別の学校ってことだよね?それにあの子ってことは、女子?」
「そうだ。しかもめっちゃ可愛い」
「おい!その情報いるのか!?」
ついツッコミを入れてしまった。
「なんかその子と一緒にいる時の橋崎は学校で見る橋崎とは違う印象だったし、どんな関係なんだよ」
「谷本くんにそんなに言われるって、相当だよね。私もあってみたーい」
「んな事言ったって、ただの幼なじみだって」
「ふーん?なら、その子が他の男と付き合って2人で歩いてるとこ想像してみたらどう思うよ?」
香織が他の男2人で歩いているところ、か。想像してみると、なにか胸がチクリとした気がした。けれど、その答えは先輩とのいざこざがあった時から変わってない。
「それで、香織が幸せなら、何も問題ないよ」
「へぇ〜、香織ちゃんって言う子なんだ。じゃあもし、その香織ちゃんが、嫌な思いしてそうだなっておもったら?」
「何とか香織と話す時間作って、香織が相談してきてくれるなら、何がなんでも割り込んで、助けるかな」
「なるほどね。橋崎が自分でその子を幸せにしてやる!とは思わないの?」
「香織が幸せかどうかは、本人が決めることだろ?俺がどうこうできるとは思ってないよ」
「「「ふーん、そっか」」」
3人は何やら温かい目をしながらそう言った。
「な、なんなんだよ」
「いいや?何も無いよ。ただ、また話聞かせてくれ」
「あと、香織ちゃんさえ良ければ、会ってみたいな」
「わ、わかった?けど。とりあえず聞いてみとくな」
よく分からんが、3人からニヤニヤ見られている気がして、複雑な気持ちになった。




