幼なじみと登校
翌日の朝、いつもよりも早くスッキリとした気分で起き、顔を洗ってリビングへと向かう。
「おはよーお兄ちゃん。珍しく早いじゃん」
「おはよう。今日は生徒会でな」
美咲と話しながら朝ごはんを食べ、部活に行く美咲を見送ってから、自分の準備をする。
制服に着替えて、タオルや水筒、ついでに美咲に借りた折りたたみの日傘と手持ち扇風機などの暑さ対策をカバンにいれる。
俺は準備を済ませて、予定よりも少し早く家を出た。
「あっ、おはよう、優斗」
まだ時間になっていないのに、既に香織は待っていてくれた。
香織も制服を着ており、通学カバンを持っていた。
「おう、おはよう。それじゃ、行くか」
「うん。一緒に行こ」
挨拶を返しつつ、香織と一緒に駅へと歩き出す。
「学校に行くのに付き合わせて悪いな」
「もう、なんで優斗が謝るの?私がお願いしたんだもん。気にしないで」
「……じゃあ、ありがとう」
他愛ない話をしながら駅につき、電車に乗り込む。
ショッピングモールへ行った時と同じように、香織はドアの横で椅子に縋り、俺はその横で手すりを持って立つ。
「わざわざ電車代払って一緒に行って貰って悪いな」
普段定期で電車に乗っているから失念してた。
「だから、気にしないで。私は優斗と楽しく登校できたらそれでいいから」
「うーん、そうは言ってもな……。そうだ、せっかくだし、帰りにどっか寄って帰ろうぜ」
「いいね、じゃあ、どこによるかは優斗に任せるね」
「わかったよ、考えとく」
その後も話しながら電車に揺られ、高校の最寄り駅に着いた。
「そっか、無人駅だったね」
「そうなんだよ。遅延とかトラブルあった時不便なんだよな。」
高校の最寄り駅だけど、学生以外あまり使われないし、若干寂れてるので、しょうがない。
香織の高校は結構街の中にあるので、新鮮に感じてるんだろうな。
「ここからどれくらいだっけ?」
駅を出て、高校へ向かいながら、香織はキョロキョロと周りを見渡しつつ、そう聞いてきた。
「うーんだいたい20分くらいかなぁ。おっ、あっちの方だぞ」
歩いていると川沿いに出て、視界が開けたので、俺は高校のある方角の山の上の方を指差す。
「あの階段、すごく疲れない?」
「おう、間違いないな」
「毎日上がってるんだよね?」
「おう。運動部がトレーニングに使ってることもあるぞ」
「へぇ……」
さすがの香織も我が校名物の階段には驚きの様子だ。
神社の参道並の階段だからな。俺はもう慣れたけど、最初の方は上がるだけで疲れてた。
「ちょっと遠回りだけど、坂道でも上がれるけど、どうする?駅で待っててもいいし」
「ううん、せっかくここまで来たし、学校まで一緒に行くよ」
「わかった、無理はするなよ?」
そう言い、歩きながらカバンを漁り、暑さ対策のグッズを取り出す。
「香織、手持ち扇風機使うか?ちょっとは楽になると思うぞ」
「ありがとう~、ちょっと舐めてたかも」
しみじみといった感じで香織はそう言った。
その後、何とか階段を上がりきって高校の前までやってきた。
「それじゃ、この辺で待っとくね」
香織がそう言って近くの公園に向かおうとするのを、俺は慌てて止める。
「香織、考えたんだけど、夏服ならそんなに制服変わらないし、堂々としてればわかんないから、一緒に行こうぜ。まぁもし見つかっても、制服着てれば誤魔化しは聞くだろうしさ」
「いいの?大丈夫かな」
「大丈夫だと思うぞ。それより、暑い中外で香織に待っててもらう方が大丈夫じゃないよ」
体調面的にも、周りの視線的にも、あまりよろしくないだろう。
「ほら、行こうぜ」
「まぁ、優斗がそういうなら」
一緒に学校の敷地内に入った。とりあえず、と職員室に向かい、生徒会室の鍵を取りに行く。
「失礼します、生徒会の橋崎です。生徒会室の鍵を借りてもいいですか?」
俺の声に気づいた生徒会の顧問の先生が来てくれた。
「橋崎くん、水やりだよね。お疲れ様」
「ありがとうございます。」
そういうと、先生はササッと近づいてきて、小声で話し始めた。
「そろそろかなと思って、生徒会室、こっそりエアコンつけといたから、ちょっと休んでから行きなさい。ただ、あまり長居はしないようにね。ほら、エアコンとか電気代とか、何かとうるさいから。あと、帰る時はまた教えてね」
「先生、分かりました。ありがとうございます」
失礼しました、と職員室を出て、香織に手でOKサインをしつつ、生徒会室に向かう。
ガチャリと鍵を開けて、エアコンをつける。
「ほんとにいいのかな?」
「少し涼んでから、すぐ水やりして帰るし、先生のご好意に甘えてから行こう」
そう言って、2人で生徒会室の中で話しながら少しだけ涼んだ。




