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幼なじみとキャッチボール

翌朝、起きてから朝ごはんを食べ、香織と出かける準備をしていた。


「運動って言ってたけど何やるつもりなんだろう」


とりあえず、ジャージのような運動しやすい格好に着替え、帽子を持って外に出る。

しばらくして、香織も外に出てきた。香織も動きやすそうな服装なのだが、不思議とオシャレな雰囲気があり、似合っている。

リストバンドやシュシュ、帽子など、小物を取り入れてるからなのかな?と思いつつ、声をかける。


「おはよう、香織。今日は何するご予定で?」

「おはよ、優斗。久しぶりに優斗と体動かすし、これがいいかなって」


そう言葉にする香織の手にはグローブと軟式の野球ボールが握られていた。

小学校時代、まだ仲の良かった俺たちは、良く一緒に遊んでいたが、2人とも体を動かすことが好きだったので、キャッチボールなど、スポーツ関連の遊びをすることが多かった。

クラブチームに入ったりはしなかったが、香織は持ち前の運動神経でそつなくこなすし、それに付き合っていた俺も、その当時にしてはグローブの扱いが上手かったので、人数の足らないクラブの助っ人として試合に出たこともあった。


「優斗はまだグローブ持ってる?なかったらお父さんの借りてきたから渡すけど」

「多分あると思う。取ってくるわ」

「わかった。それじゃあ、私はお父さんにグローブ返してくるね」


急ぎ足で部屋まで戻り、心当たりのある場所を探すと、グローブを見つけた。


「うーん、小さいな。これじゃ難しいな」


ならばと俺も玄関あたりにしまってあったはずの父さんのグローブを探す。


「あったあった。ピッタリぐらいだな」


そのグローブを持って外に出る。

グローブを返してきた香織は既に外で待っており、俺に気づくと声をかけてきた。


「あれ?優斗のグローブってそんな感じだったっけ」

「いやな、一応あの頃のグローブも見つけたんだけど、小さかったんだよ」


あまり成長していないと思っていたけど、一応20cm位は背が伸びたわけだし、そりゃそうかと納得する。


「あ、それもそっか。私、小学校からあんまり身長変わってないんだよね」

「そうか?ちょっと伸びてると思うけどな」

「ありがとね」


本当に変わってなかったら再開した時に困惑しなかったはず……と考えたが、成長してたのは別のとこだったか、と思い、慌てて頭を振って雑念を飛ばす。


「急にどうしたの?」

「い、いや、なんでもないよ。行こうぜ」


そうしていつも歩く方向とは逆へと進んでいく。

普段香織と話しをする公園は小さい子どもがいるし、ボール使用禁止なので、逆方向にある河川敷へと向かっていく。


「この道、中学校への通学路だったよね」

「そうだな」


慣れた道だけど、香織と一緒に歩くのは新鮮な感じがする。


「今度、中学校行ってみる?」

「えぇー、あんまいい思い出ないけど」


思い出といえば、部活くらいなものである。顧問だった先生ももういないし。


「そっか……」

「ん?なんか中学校いってやりたいことでもあるのか?」


話の流れで断ったが、香織の残念そうな反応が気になった。

香織は頭を横に振りつつ答える。


「ううん、これといってやりたいことがあった訳じゃないけど、優斗と一緒に中学校に行ってたらどんな感じだったのかなってちょっと考えちゃって」

「まぁ、一緒に行かなくなったのは香織のせいなんだけどな」

「それはそうなんだけどね……?」


なんだか、中学のあのトラウマの行動は、香織にとっても苦渋の決断だったのが感じられて、嬉しいようなツッコミたいような不思議な気持ちになった。


その調子で話しながら歩いていると、河川敷に着いた。

軽く準備運動をして、キャッチボールをし始める。

思っていたよりも早くて鋭いボールが飛んできて、びっくりしながらもしっかりキャッチする。


「いきなり早い球だな!」

「そう?でもちゃんと取れたじゃん」

「それは、そうだけど」

「私はまだまだ軽く投げてるよ〜」


言葉と一緒にキャッチボールをしながら、徐々に距離を開けていく。

俺も香織に引っ張られて調子が出てきた。久しぶりだったけれど、だんだん思い出してきた。


「ねぇ、優斗。調子出てきたみたいだし、肩も温まったし、あの頃みたいに座ってよ」

「えぇ、そこまでやるか?」


小学校の頃は香織がピッチャー役、俺がキャッチャー役で遊ぶことが多かったし、楽しかったのは覚えてるけど、今は自信ない。


「お願い、ちょっとだけやってみようよ。最初は軽く投げるから!」

「わかったよ」


昔を思い出しながら、香織のお願いを断れた試しがないな、と考える。

キャッチャーのようにしゃがみこんで、体の前でグローブを構える。


「いっくよー!」


香織はそう言いながら軽く振りかぶり、大きく踏み出して腕を振り抜く。


「痛って……」


少し見誤ってポケットのところではなく手のひらあたりで取ってしまった。

香織にボールを投げ返し、再び香織の投げるボールを取る。

なんだかんだで楽しい時間を過ごし、休憩にすることにした。


「色々言ってたけど、ちゃんと動けるじゃん」

「自分でもびっくりだわ」


今や体育でしかまともに運動してないのに、割と動き回れて楽しかった。

水分補給しつつ、ゆったり休んで、そろそろお昼だし帰ろうか、と河川敷を出て、来た道へと戻る。


「あれ?お兄ちゃんに香織お姉ちゃんだ」


部活帰りの美咲と出会った。

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