幼なじみと夏休みの予定
その日の夜、晩御飯を食べながら、祖父母宅へ香織を連れていくことについて話すことになった。
「ーーという事なんだけど、どうかな?」
美咲が事情を踏まえつつ、父さんに話してくれた。
「そうだね……、香織ちゃんとご両親次第ではあるけれど、私個人としては、賛成だよ。本人ともご両親とも、知らない仲では無いからね。事前に伝えておけば恐らくおばあちゃん達も大丈夫だろう」
後で私から連絡しておくよ、と父さんがつけ加える。
「ってことは、お兄ちゃん、やったね!香織お姉ちゃんと旅行だね!」
「お、おう。楽しくなるといいな?」
嬉しそうな美咲とは違い、俺は、未だ事態を理解しきれていなかった。
まさかOKが出るとは思っていなかったのだ。
「それで、もし一緒におばあちゃん家に行くことになったとして、香織ちゃんのことは、なんて紹介するんだい?」
「へ?」
思ってもいなかった問いかけにフリーズする俺と、穏やかな表情で聞いてくる父さん。
俺はどう紹介するか頭を回転させるが、親(祖父母)に女の子を紹介する……それって……
とそこまで考えたところで父さんたちが話す。
「まぁ、美咲のお姉ちゃんみたいな関係だと紹介すれば、納得してくれるとは思うよ」
「そうね〜、それがいいわね」
なんだか母さんがニヤニヤしている気がするが、無視だ無視。
だいたい、香織のご両親の許可が出るとは思えないんだよな。幼なじみとはいえ、同年代の男がいて、ひとつ屋根の下で数日過ごすことになるんだし。
その後、ご飯を食べ終わり、お風呂にも入り、部屋でくつろいでいると、スマホに電話がかかってきた。
LINE特有の着信音に驚きながらも、電話に出る。
「もしもし、香織、どうかしたか?」
「こんばんは、優斗。早めの方がいいと思って、電話したんだ~」
「昼のことだよな。どうだった?」
「えっとね、OKでちゃった」
「やっぱりそうだよなぁ、しょうがな……え?」
今なんて?
「だから、お父さんたちから、優斗くん家族となら、いいよって」
「マジか」
許可出ちゃったじゃん!
「俺が言うのもなんだけど、よくOKされたな」
「私もダメだろうと思ってたんだけど、この間の先輩との問題の時に、助けてくれたってことが、大きかったみたいだよ。優斗たち家族は例外で、他の人で同じようなことは許さないって言われた」
「な、なるほどな」
俺の存在は香織のご両親公認ってこと?
「それで、優斗のお父さんの方はどうだった?」
「あぁ、昼言ってた通り、香織のご両親が良ければ全然OKって話してたよ」
「それじゃあ、一緒に旅行だね」
「そ、そうだな」
うーん、楽しみなのは間違いないけど、なんか嫌な予感するんだよなぁ。
「予定とか場所とかの確認したいんだけど、明日とか空いてる?」
「俺は空いてるけど、母さん達は夕方にならないと帰ってこないな」
「それじゃあ、せっかくだし、それまで遊びに行かない?ちょっと体動かそうよ」
「いいぞ。約束してたしな」
割と運動神経も体力もある香織の言う「ちょっと」がどれくらいなのか気になるが、楽しそうだし気にしないことにする。
「それじゃあ、また明日ね~」
「おう、また明日」
電話を切り、母さんに香織のご両親から許可が降りたことを伝えに行く。
リビングに向かうと、父さんもまだくつろいでいた。
「父さん、母さん、香織のご両親から許可出たって」
そういうと、2人は俺の方を見て言う。
「本当かい?良かったね。準備もあるし、一応ご両親に挨拶しておいた方がいいね」
「そうね、きちんと見守ることを伝えておかないと。優斗、香織ちゃんに、ご両親がお家におられる時間帯を聞いておいてくれる?」
「わかった。明日、香織が予定とかについて聞きたいって言ってたから、そんときに聞いとく」
「お願いね」
それにしても、と母さんが続けて口を開く。
「最近、毎日のように香織ちゃんと会ってるのね」
言われてみれば確かにそうだなと思いつつ、なんだかんだ、香織とまた家族ぐるみで仲良くやっていけそうで、嬉しく思った。




