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なんのつもりなんだ?


「さて、今日は何して過ごすかな〜」


俺の自宅は最寄り駅から歩いて15分ほどのところにある。帰ってからの至福の時間に思いを馳せつつ自宅への道のりを歩く。もう2年目になるため、慣れたものである。


コンビニやスーパー、公園などを通り過ぎ、丁字路を曲がると自宅が見えてくる。2軒の戸建てが並んでおり、手前が幼なじみの家で奥側が俺の自宅である。


自宅に着いたらすぐに家に入れるよう、背負っていた鞄から鍵を出し、再び前を向くと、幼なじみの家の前で香織が座っているのが見えた。


家の前に座って何してんだ……?鍵忘れたのか、珍しいこともあるもんだな。

少なくともこれまでこのような場面に遭遇したことはなかったはずだ。


これがアニメやゲームの世界なら、声をかけて話をして輝かしい青春ストーリーが始まるんだろうが、そうはならない。なんせトラウマの元凶が相手である。


何も見なかったことにして、我が家へと歩みを進めていく。

さてと、鍵を開けて家に入っ


「あれ?もしかして優斗?久しぶりだね。」


ん?名前呼ばれた?誰に……?香織に……?

久しぶりに聞く香織の声に困惑していると、香織が近づいてきた。


「聞こえてる?もしもーし。」

「あぁ、聞こえてるよ、中村さん。なにか用事?」


何故が香織は昔のように話しかけてきたが、なにかの間違いだろう。俺は、中学の頃と同じように、言葉を返す。


「実は鍵忘れちゃって、家に入れないんだよね。スマホも充電切れててさ。」

「そっ、そうだったのか。大変だな」

「うん。まだお母さんも帰ってこないし、ちょっと助けてくれない?」


俺は困惑がやまない。中学の時あれだけ拒絶しておいて、この距離感?更には助けて欲しい……?

何が何だか理解できないが、そのまま聞くことも、無視することも出来ず、俺は答える。


「そ、それじゃあ、モバイルバッテリー、持ってくる、から。」

「んー、優斗のお家に入れてよ。まだ5月だし、夕方は寒いんだよね。どうせ誰も居ないんでしょ?」


は、はい!?

家に入れて?何を言い出してるんだこいつ!


「そ、それは、ダメだろ……」

「なんで?昔は一緒に優斗の家で遊んでたじゃん。ほらほら、開けて?」


誰のせいでその昔の関係が終わったと思ってんだ!

そう頭では思うものの、声に出すことは出来ず、流れのまま家に入られてしまった。


「おっ俺の、部屋でいい?」

「うん。大丈夫。」


リビングで過ごして、香織がいた痕跡を残されても困るので、致し方なく俺の部屋へと向かう。


「全然変わってないんだね〜」

「そっ、そうか。そうかもな。」


困惑しっぱなしで部屋まで来てしまったが、何が起こってるんだ!?俺のトラウマの元凶が俺の部屋にいるんですけど!?


「それで、優斗の家族が帰ってくるまで、時間どれくらいある?」

「あっ、えっと、1番早いのは妹で、部活が終わったら帰ってくるから……」

「じゃああと1時間は大丈夫だね。ここら辺の漫画とか読んでもいい?」

「おう……」


そういうと香織は漫画の並んだ棚を物色し始めた。

おいおい1時間は居座ることが確定したんだが?俺の意思は無しか?


会話が途切れ、ようやく冷静になってきた。今の現状を整理しよう。

家に帰ったと思ったら、鍵を忘れて家の前にいたトラウマの元凶(香織)が、俺の部屋に上がり込んで漫画を読んでいる…。


「ねぇ、優斗?」


うん。なんだこれ。訳が分からない。

なんで花のJKが俺の部屋にいるんだろうか。話し方も昔みたいだし……。中学のアレはなんだったんだ?


「優斗〜?おーい」


改めて見ると、とんでもない美少女に成長してるな。

肌荒れを知らないツルツルお肌に、長いまつ毛の大きな瞳、そして整った目鼻立ち。髪をポニーテールにまとめてるのが似合っている。


あれ?香織ってこんなに可憐な美少女だったか?

記憶の中の香織とのギャップに驚く。


「ねぇー!優斗ってば!」

「うおっ!びっくりした……。どうしたんだ?」

「こっちのセリフだよ。私の方見てぼーっとしちゃってさ。」


気づかぬうちに考え込んでいてしまったらしい。素直に見とれてたなんて言えるわけもないので、慌てて答える。


「いや、ちょっと考え事をな。」

「ふーん。まぁいいや。それより、この漫画借りてもいい?」

「ん?別にいいけど……」


あれ?香織って漫画とか興味ある方だったっけ?

まぁ、話さなくなった間に好きになったのかな。


「じゃあ、LINE交換しようよ。」

「えっ?なんでだ?」


今日限りのことだと思っていた俺は、思わず聞いてしまった。


「だって、漫画を返したり、続き借りたりする時にあった方が便利でしょ?」

「それは、そうだが……」

「何?私とLINE交換するの嫌?」

「…わかった」


香織とLINEを交換してしまった。栄えある家族以外の女子のLINE第一号である。


LINEを交換し、しばらくして、香織のスマホが鳴った。


「あっお母さんからだ。それじゃあ、今日は帰るね。漫画と、あと家に入れてくれてありがとう。」

「お、おう。」

「それじゃ、またね。」


そう言って、香織は家に帰って行った。


部屋に戻り、今までのことについて考える。

一体なんだったんだろうか。結局中学のことは聞きそびれてしまった。

LINEを交換してしまったし、漫画も貸してしまった。つまりは、無くなったと思っていた関係がまた繋がってしまったのである。

香織は何を考えているんだろうか。全く何が起こっているのか分からないが、一つだけ言えることがある。


また俺の生活が、香織によって変えられようとしているのである。

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― 新着の感想 ―
中学3年間と高校1年間丸々放置しといて、いきなりこられても・・・だが。
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